学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問7
問題・正答・学習用解説
問題
昼光・照明に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は(1)です。CIE標準曇天空は、曇り空から届く光を計算するために定めた天空の明るさのモデルです。天頂、つまり真上の空ほど明るく、地平線に近いほど暗いという高さ方向の違いはありますが、東西南北の方位による違いはありません。周囲の遮蔽物などが同条件なら、南向きと西向きの同じ鉛直面が受ける天空光の照度は同じです。
「南向き」という言葉から、太陽の光が多い、あるいは夕方なら西日が強い、と考えると、晴天の直射日光のイメージを持ち込んでしまいます。しかし、この設問の天空モデルには、特定の方位から差す直射日光を加えていません。壁の向きを南から西へ回しても、その壁から見える空の明るさの分布は同じになるので、照らされ方も変わらないわけです。
一方、高さ方向には明るさの違いがあるため、「空全体が同じ明るさの一様天空」とも区別します。本肢の誤りは、曇天空に存在しない方位差を設けている点です。実際の建物では隣接建物や窓の形による差もありますが、まず問題が指定した天空条件で比較します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)不適当です。標準曇天空では、同じ高さの空なら方位が変わっても輝度は同じです。南向きの壁と西向きの壁は、同じ高さの空を同じ割合で見るため、遮蔽物などの条件をそろえると鉛直面照度に差は生じません。南向きの方が低いとする理由はありません。方位差がないことと、空の全ての位置が同じ明るさであることは別です。標準曇天空には天頂が明るいという上下方向の分布があり、日射の方位差を持つ晴天とも、一様天空とも異なります。
選択肢2
(2)適当です。昼光率は、室内のある点の天空光による照度 を、屋外の遮られない水平面の全天空照度 で割った百分率で、 です。天空の明るさの分布が同じ形のまま全体で2倍になると、室内の照度も屋外の照度も2倍になり、比は変わりません。例えば屋外1万lx、室内200lxなら2%で、両方が半分になっても2%です。昼光率はその時の明るさの絶対値ではなく、窓や室の形による光の取り込みやすさを比較する指標です。
選択肢3
(3)適当です。サーカディアンリズムは、睡眠と覚醒などが約1日周期で変化する体内のリズムです。光はその時刻を調整する手掛かりになります。色温度の高い光は青白く見え、一般に夜に強く浴びると眠りに向かうリズムを妨げやすくなります。寝る直前の部屋を明るい青白い照明で照らしすぎないという配慮につながります。ただし影響は色温度だけではなく、光の強さ、浴びる時間、光の波長分布にもよります。「暖色ならどれだけ明るくてもよい」という意味ではありません。
選択肢4
(4)適当です。輝度は、ある方向から見た面がどれくらい明るく見えるかに関係する物理量です。照明器具の発光面だけでなく、光を反射する白い紙や壁、向こう側の光を透過する窓やすりガラスにも定義できます。例えば同じ照度の机の上に白い紙と黒い紙を置くと、白い紙は多くの光を反射して輝度が高くなります。「光源ではないから輝度を持たない」ではありません。面に届く光の量である照度と、その面から目へ向かう光に関わる輝度を区別します。
周辺知識
照明の量は、光の移動する順序で理解できます。光源が出す光の量が光束、ある向きへ出す強さが光度、机などの面に届く光の量が照度、面をある方向から見たときの明るさに関係する量が輝度です。照度の単位はlx、輝度の単位は です。机の照度を高くしても、黒い文字と紙との輝度の差が小さければ読みにくく、光源の輝度が高すぎればまぶしく感じることもあります。
昼光率は天空光を使う室内の明るさを、屋外との比で評価します。窓の大きさ、ガラスの透過率、窓からの距離、壁や天井の反射率などが関係します。室の奥を明るくするには、単に外を明るくするだけでなく、光が奥へ届く経路を整える必要があります。
天空モデルでは「一様か」「高さ方向に分布があるか」「方位方向に分布があるか」を分けて確認します。標準曇天空は高さ方向に分布がある一方、方位方向には対称です。図を思い浮かべるときは、天頂の明るい部分を中心にした傘を、南北どちらへ回しても同じに見える状態と考えると、南向きと西向きの比較を理解できます。