学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問5
問題・正答・学習用解説
問題
火災時の煙制御に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は(4)です。自然排煙は「煙の出口さえ大きければよい」という仕組みではありません。室内の煙が外へ出るには、その体積を補う空気が別の場所から入らなければ、継続した流れができないためです。したがって排煙口の位置・面積に加え、給気の経路も排煙の効率に影響します。
火災で暖められた煙は周囲の空気より密度が小さくなり、上へ集まります。高い位置の排煙口からこの煙を外へ逃がし、比較的低い位置から新しい空気を入れると、煙を上から押し出す流れを作りやすくなります。ところが給気口が小さすぎる、流路の扉が閉じているなどの場合、煙の出口があっても必要な量の空気が流れません。閉め切った部屋で換気扇を強く回しても、給気不足で効率が落ちるのと共通する考え方です。
本問は排煙装置の名称だけでなく、圧力差と空気の収支を問うています。「よらず」「だけで決まる」といった限定があったら、排気と給気の両方、守る部屋と煙のある部屋の両方を確認します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。吸引型ではファンで煙を室外へ引き出します。火災室の空気を吸い出すと、その室の圧力が隣の室より低くなり、扉の隙間などでは周囲から火災室へ空気が入りやすくなります。これにより、煙が火災室から廊下へ押し出される流れを抑える効果も期待できます。ただし、煙を外へ出す力を確保するだけでなく、空気を補う経路も必要です。煙を取り除くことと、室間の圧力差によって煙の広がる向きを制御することの二つの働きがあります。
選択肢2
(2)適当です。加圧防排煙では、避難に使う階段や付室などへ機械で空気を送り、煙がある側より圧力を高めます。すると隙間や開いた扉を通る空気は、守りたい空間から煙のある側へ流れ、煙の侵入に逆らいます。火災室を吸って低圧にする方法と、避難空間へ送って高圧にする方法は、同じ圧力差を別の側から作る考え方です。なお過大な圧力は扉を開ける力にも影響するため、単に強いファンを付ければよいわけではなく、避難動作と両立する設計が必要です。
選択肢3
(3)適当です。第二種排煙は機械で給気を行い、入れた空気で煙を押し出す方式です。階段付室や廊下のように、自室で出火するおそれは小さくても、別の室の煙が入り得る場所を守る考え方に適します。例えば安全な側へ給気し、空気を煙のある側へ流すことで侵入を妨げます。機械換気でも「第二種」は給気を機械で行う分類なので、名称とファンの役割を対応させると整理できます。煙を吸い出す吸引型とは、圧力を高めるか低めるかが違います。
選択肢4
(4)不適当です。自然排煙は、熱い煙の浮力と内外の圧力差を利用するため、入口と出口が一組になって働きます。給気が不足すると、煙が出た後の空間を補えず、期待した流量を維持できません。また入口の位置や通り道によっては、煙の層を乱したり、煙のない部分の空気ばかりが排煙口へ抜けたりする可能性もあります。「その効率は給気の経路によらず」を「給気の位置・面積・流路にも影響される」と直す必要があります。排煙口だけを見る判断を避けます。
周辺知識
煙制御の目的は、炎だけでなく、煙・有毒ガス・高温から避難者と消防活動を守ることです。煙は目を刺激して見通しを悪くし、呼吸も困難にするため、避難経路へ広がるのを抑えることが重要になります。設計では、煙を外へ排出すること、区画で広がりを抑えること、圧力差で安全側へ入れないことを組み合わせます。
空気は基本的に圧力の高い側から低い側へ流れます。したがって、煙のある室を低圧にするか、守りたい室を高圧にすれば、安全側から煙側へ向かう流れを作れます。ただし扉が開けば空気の流路と必要な風量が大きく変わるため、通常時の閉じた状態だけでなく、避難時の扉の開閉も考慮します。
自然排煙では機械の吸引力を使わず、煙の浮力を主に利用します。高い出口と低い入口が適切につながっていることが大切です。「排気」と「給気」を、片方だけ存在する別々の機能として覚えるのではなく、同じ空気の流れの両端として描いてみると、自然排煙・機械排煙・加圧防排煙を一つの原理で理解できます。