学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問4
問題・正答・学習用解説
問題
建築物の外壁に設ける開口部の伝熱に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は(4)です。真空にすれば熱の移動が全てなくなる、という点が誤りです。熱は、物質の中を順に伝わる「伝導」、空気などの移動で運ばれる「対流」、赤外線などで離れた物体間を移る「放射」という複数の仕組みで伝わります。
複層ガラスの間を真空にすると、気体の粒子を介した伝導と、空気が循環する対流は大きく抑えられます。しかし放射は物質がなくても伝わります。太陽の熱が宇宙空間を越えて地球に届くことがその例です。したがって、室内側のガラスから室外側のガラスへ放射で熱が移る経路は残ります。実際の真空ガラスでは、周辺の接合部分や間隔を保持する部材などにも伝導の経路があります。
熱貫流率は、室内外の温度差1Kにつき、窓1平方メートルを通る熱の速さです。小さいほど断熱性が高いのですが、真空だけでその値が0になるわけではありません。真空断熱に、放射を減らす低放射膜などを組み合わせる理由も、残る熱の経路から理解できます。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。日射熱取得率は、窓に当たった日射のうち、最終的に室内へ入る熱の割合です。外付けブラインドは、光が窓ガラスを通る前に反射したり吸収したりするので、その熱を屋外へ逃がしやすくなります。内付けでは、すでにガラスを通り抜けた光を室内のブラインドが吸収し、暖まったブラインドから対流や放射で室内へ熱を放出します。同じ羽根の形・材料でも、熱を受け止める場所が室内か室外かで違います。夏の日よけを窓の外に置く効果と結び付きます。
選択肢2
(2)適当です。透明なガラスは、目に見える光を多く通します。その光が床や家具に吸収されると、それらが暖まって熱を放射します。室温程度の物体が出す赤外線は、日射に多く含まれる可視光より波長が長く、通常のガラスはそれを通しにくく吸収しやすい性質があります。このため、窓を通って入ったエネルギーが、そのまま同じように外へ抜けるわけではありません。晴れた冬の日に窓ぎわが暖まることを、入射する光と暖まった物体から出る熱の波長の違いで説明しています。
選択肢3
(3)適当です。熱線吸収板ガラスは、ガラスに成分を加えて日射を吸収し、室内へ直接透過する日射を減らすものです。一方、熱貫流率は室内外の温度差によって熱がどれくらい通るかという断熱の指標です。同じ厚さの単板なら、光の吸収特性を変えても、ガラスの厚さや中空層の有無は変わらず、断熱性は大きくは変わりません。「夏の日射を減らせるガラスだから、冬の暖房熱も同じ程度に逃げにくい」とは限らない点が本肢の中心です。
選択肢4
(4)不適当です。真空がなくすのは主に中空層の気体を介した熱移動であり、ガラス面同士の放射は残ります。熱貫流率0という値は、温度差があっても全く熱が移らない理想的な完全断熱を意味しますが、真空にするだけではそこまで到達しません。魔法瓶も、真空層に加えて内面の反射性を高めて放射を抑えています。複層ガラスについても、空気層・真空層による対流や伝導への対策と、Low-E膜などによる放射への対策を分けて理解します。
周辺知識
窓の性能には、温度差で逃げる熱を抑える「断熱」と、太陽から入る熱を調整する「日射遮蔽」があります。断熱性能を表す熱貫流率 の単位は で、窓面積を 、内外温度差を とすると熱の移動量は です。例えば 、面積2平方メートル、温度差20Kなら です。温度差の1Kは、差としては1℃と同じ大きさです。
日射熱取得率は、入射した日射に対する室内取得熱の割合なので単位を持ちません。小さいほど夏の日射熱を入りにくくしますが、冬の日射による暖房効果も減り得ます。窓を選ぶときには地域・方位・季節も関係します。また、Low-Eは低放射を意味し、主にガラス面から出る放射を減らす考え方です。色の濃いガラス、複層ガラス、Low-Eガラスは、それぞれ何の熱の経路に働くかを確かめて選びます。見た目の暗さだけで断熱性能を判断することはできません。