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学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和7年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問2

問題・正答・学習用解説

問題

室内の温熱環境に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    予測平均温冷感申告(PMV)は、空気温度、放射温度、相対湿度、気流速度、着衣量、代謝量を用いて求める。
  2. (2)
    予測平均温冷感申告(PMV)の値が0 のとき、予測不満足者率(PPD)は、0 %になる。
  3. (3)
    空調におけるドラフトによる不快感には、平均風速だけでなく、空気温度も影響する。
  4. (4)
    着席安静時における日本人の平均的な体格の成人男性の代謝量は、一人当たり約100 Wである。

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

正解は(2)です。PMVが0でも、PPDは0%にはならず、この予測モデルでの最小値は約5%です。「集団の平均が中立」と「全員が満足」を同じものと考えた点が誤りです。
PMVは、同じ環境にいる多くの人が暑さ・寒さを答えたときの、平均的な回答を予測する値です。おおむね-3の「寒い」から+3の「暑い」までで表し、0は「暑くも寒くもない」に当たります。しかし人によって服装、体格、体調、暑さの好みが違います。平均が0でも、少し暑いと感じる人と少し寒いと感じる人がいるため、不満を感じる人の割合は消えません。
PPDは、このような温冷感に不満を感じる人の割合を予測したものです。PMVとPPDの標準的な関係式にPMV=0\displaystyle \mathrm{PMV}=0を入れると、指数関数の部分は1となり、100−95=5 %\displaystyle 100-95=5\,\% が残ります。この5%は、どの教室でも実測した不満が必ず5%になるという断定ではなく、モデル上の予測値です。本問では、「0なら0%」という分かりやすそうな対応に飛びつかず、平均値と人数の割合が違う指標であることを確認します。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。人は身体で熱を作り、その熱を空気や周囲の面へ逃がしながら体温を保ちます。空気温度は身体と空気との熱のやり取り、放射温度は窓・壁などとの放射、湿度は汗の蒸発、気流速度は身体の周囲の空気の入れ替わりに関係します。さらに、服は熱を逃がしにくくし、活動量が増えると身体で作る熱も増えます。PMVは、環境側の四要素と人側の着衣量・代謝量の計六要素を用います。教室の室温だけを同じにしても、体育直後と授業中で暑さが違うことがよい例です。

選択肢2

(2)不適当です。PMVは平均的な温冷感、PPDは温熱環境に不満を感じる人の割合を予測する指標です。テストの平均点が50点でも全員が50点とは限らないように、平均の温冷感が0でも個人の回答はそろいません。PMVが0のときPPDは約5%で最小となり、暑い側・寒い側のどちらへ離れてもPPDは大きくなります。「中立だから全員満足」ではなく、「このモデルでは中立付近で不満を感じる人が最も少なくなる」と読み替えるのが正確です。

選択肢3

(3)適当です。ドラフトは、身体の一部に当たって不快な冷えを起こす気流です。例えば授業中、エアコンの風が首や足首に当たり続けると、部屋全体は適温でも寒く感じることがあります。風は皮膚の近くの暖まった空気を取り去り、身体から空気へ熱を逃がします。同じ速さの風でも空気が低温なら熱が奪われやすいため、風速だけでは不快感を判断できません。風速の変動である乱れの強さや、風の当たる部位も関係します。暑いときに自分で浴びる扇風機の風を、すべて不快なドラフトと呼ぶわけではありません。

選択肢4

(4)適当です。代謝量は、食物などから身体が作り出すエネルギーの速さです。座って静かにしていても、心臓・呼吸・体温維持などのためにエネルギーを使い、その多くは熱として周囲へ出ます。着席安静の目安である1metは、体表面積1平方メートル当たり約 58 W/m2\displaystyle 58\,\mathrm{W/m^2} です。体表面積を約 1.7 m2\displaystyle 1.7\,\mathrm{m^2} とすると、58×1.7≃99 W\displaystyle 58\times1.7\simeq99\,\mathrm{W} で、成人一人約100Wという本肢と対応します。これは一人当たりの値であり、1平方メートル当たり100Wという意味ではありません。

周辺知識

温熱環境は、身体が作る熱と外へ逃がす熱の釣り合いから考えると分かりやすくなります。運動中は熱の生産が増え、厚着をすると熱を逃がしにくくなります。風が当たると熱が逃げやすくなり、汗が蒸発すると身体から熱が奪われます。冬の窓ぎわでは、室温計の表示が暖かくても、冷たい窓への放射で身体が熱を失います。空調は空気の温度だけを調整すればよい、というものではありません。
PMVとPPDの関係を、計算する順序に分けて示します。まず、指数関数に入れる値を x\displaystyle x と置きます。x\displaystyle x は次の二つの項を足した値です。
x=−0.03353PMV4−0.2179PMV2\begin{aligned}x&=-0.03353\mathrm{PMV}^4\\&\quad-0.2179\mathrm{PMV}^2\end{aligned}
この x\displaystyle x を用いると、PPDは次のように求められます。
PPD=100−95exp⁡(x)\begin{aligned}\mathrm{PPD}&=100\\&\quad-95\exp(x)\end{aligned}
expは指数関数で、括弧内が0のとき1です。PMV=0\displaystyle \mathrm{PMV}=0を代入するとPPD=5%\displaystyle \mathrm{PPD}=5\%となり、PMVの正負が逆でも、二乗・四乗の値は同じなのでPPDは同じになります。したがって、このモデルでは同じ程度に暑い場合と寒い場合の不満率が対称になります。
実際の設計では、PMVが良好でも、冷風が首に当たる、床だけ冷たい、といった局所的な不快感を別に確認します。また100Wの発熱をする人が30人集まれば、単純計算では約3kWの人体発熱になります。人数や活動内容の違いが冷房の必要量に関係することも、代謝量から理解できます。