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学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和7年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問1

問題・正答・学習用解説

問題

環境工学における用語に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    音響インテンシティレベル(音の強さのレベル)は、音のもつ単位体積当たりの力学的エネルギー量を、基準の力学的エネルギー量で除し、デシベル表示したものである。
  2. (2)
    プルキンエ現象は、暗所視に移行する過程において、視感度が最大となる波長が短い波長へずれる現象である。
  3. (3)
    平均放射温度(MRT)は、グローブ温度、空気温度及び気流速度を用いて求める。
  4. (4)
    空気齢は、流入口から室内に入った所定量の空気が、室内のある地点に到達するまでに経過する平均時間である。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

正解は(1)です。「音の強さ」と「音響エネルギー密度」という、測っている対象の違う二つの量を入れ替えています。
音は、空気が小刻みに押し縮められたり元に戻ったりする振動が、周囲へ伝わる現象です。その際にはエネルギーも運ばれます。音の強さは、音の進む方向に直角な「面」を、1秒間にどれだけのエネルギーが通り抜けるかを、面積1平方メートル当たりで表します。したがって単位は W/m2\displaystyle \mathrm{W/m^2} です。Wは1秒当たりのエネルギーを示す単位なので、時間の意味も含まれています。
一方、「空間1立方メートルの中に、ある瞬間どれだけの音のエネルギーがあるか」が音響エネルギー密度で、単位は J/m3\displaystyle \mathrm{J/m^3} です。道路で例えれば、ある断面を1秒間に通過する車の量と、ある区間の中に存在する車の量の違いに近いものです。本肢は後者を説明しているため不適当です。音響インテンシティレベルは、前者の音の強さを基準の音の強さと比べ、対数を用いてデシベル表示します。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)不適当です。「単位体積当たりの力学的エネルギー量」は、空間の中に蓄えられた量を示す音響エネルギー密度です。音響インテンシティは、単位面積を単位時間に通過するエネルギーを意味します。レベルの式は LI=10log⁡10(II0)\displaystyle L_I=10\log_{10}\left(\frac{I}{I_0}\right) で、I\displaystyle I は測定する音の強さ、I0\displaystyle I_0 は基準値です。両方を同じ単位で割るので、比には単位がありません。「デシベルで表示する」という末尾だけでは正誤を決められず、まず何を基準値で割るのかを確かめます。

選択肢2

(2)適当です。網膜には、明るい場所で色を見る働きが大きい錐体と、暗い場所で弱い光を感じる働きが大きい桿体があります。夕暮れなどに錐体中心から桿体中心の見え方へ移ると、最も感じやすい光が、明所の黄緑寄りから、より波長の短い青緑寄りへずれます。これがプルキンエ現象です。日中に目立つ赤い花が薄暗い場所では沈んで見え、青緑が相対的に明るく見えることと結び付けると理解できます。物体が出す光の波長そのものが変わる現象ではありません。

選択肢3

(3)適当です。放射とは、物に触れなくても赤外線などによって熱が伝わることです。冬の冷たい窓のそばで、室温が同じでも寒く感じるのは、身体から窓への放射による熱の移動が増えるためです。黒い球で測るグローブ温度は、周囲との放射に加え、空気との熱交換の影響も受けます。そのためグローブ温度だけを周囲の放射温度とみなせません。空気温度と、空気による球の冷却・加熱に影響する風速も使って補正し、周囲の面から受ける放射の効果を一つの温度にまとめたMRTを求めます。

選択肢4

(4)適当です。空気齢は、室内の空気の「入室してからの平均経過時間」です。給気口から入った空気は、室内を一直線に進むだけでなく、混ざり合ったり、家具の陰で回り込んだりします。そのため同じ地点にも、すぐ届いた空気と長く室内を巡った空気が混在し、平均時間で表します。例えば給気口の近くは空気齢が小さく、換気の届きにくい隅では大きくなり得ます。建物の築年数や空気の汚染濃度そのものを表す数値ではなく、換気の届き方を調べる手掛かりです。

周辺知識

環境工学の用語は、「何を測る量なのか」「何で割るのか」「単位は何か」を順に言い直すと、似た言葉を区別できます。音では、音源が1秒間に出すエネルギーが音響パワーで単位はW、それがある場所の面積1平方メートルを通過する量が音響インテンシティで単位は W/m2\displaystyle \mathrm{W/m^2}、空間内に存在する量が音響エネルギー密度で単位は J/m3\displaystyle \mathrm{J/m^3} です。音圧は空気の圧力の振動分で、単位はPaです。
デシベルは、非常に広い範囲の大小を扱いやすくする表示です。音の強さが基準の10倍なら 10log⁡1010=10 dB\displaystyle 10\log_{10}10=10\,\mathrm{dB}、100倍なら 10log⁡10100=20 dB\displaystyle 10\log_{10}100=20\,\mathrm{dB} となります。10dB増えるごとに、音の強さの比は10倍になるわけです。ただし、これは物理的なエネルギーの比であり、耳で感じる「うるささ」が必ず10倍になる意味ではありません。同様に、MRTは熱の感じ方を説明する物理量、空気齢は空気の流れを説明する時間であり、一つの指標だけで快適さの全てを表せるわけではありません。