資格ナビ一級建築士の演習へ

学科Ⅴ(施工)

一級建築士 令和7年度 学科Ⅴ(施工) 問17

問題・正答・学習用解説

問題

タイル工事及び左官工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    外部側に柱形がある場合のタイル張りの外壁に設ける垂直方向の伸縮調整目地の位置は、特記がなかったので、柱形の入隅部及び中間3~4m間隔とした。
  2. (2)
    タイル張りの下地モルタルの伸縮調整目地は、タイル張り面の伸縮調整目地及びコンクリート躯体のひび割れ誘発目地と一致するように設けた。
  3. (3)
    セメントモルタルによるタイル後張り工法における密着張りにおいて、張付けモルタルの1回の塗付け面積の限度については、2m²/人以内とした。
  4. (4)
    コンクリート壁面へのモルタル塗りにおいて、下塗りの調合については容積比でセメント1に対し砂2.5とし、中塗り及び上塗りの調合については容積比でセメント1に対し砂1とした。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

選択肢4が不適当です。中塗り・上塗りをセメント1:砂1にすると、下塗りの1:2.5よりセメントの割合が著しく多い調合になります。一般的なコンクリート壁のモルタル塗りでは、下塗りを1:2.5、中塗り・上塗りを1:3とするなど、上の層を過度な富調合にしません。
富調合とは、骨材である砂に対してセメントの割合が多い調合です。セメントと水からできる部分は、乾燥などに伴って縮みます。砂はその収縮を抑える骨組の役割も持つため、セメントが多ければ仕上げに常によいというわけではありません。
本肢を容積で比べると、下塗りはセメント1杯に砂2.5杯、上層は同じセメント1杯に砂1杯です。上層で砂を大きく減らしており、収縮しやすい層を上から付けることになります。上層が下層より大きく縮もうとすると、接着面に無理な力が生じ、ひび割れや剥離につながります。下塗りは下地との付着、中塗りは平らな面と必要厚さ、上塗りは仕上げ面という役割を持ちますが、三層が一体で安定する調合と養生を考えることが重要です。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:適当です。外壁の柱形は柱の形が外側へ出ている部分で、その付根のくぼんだ角が入隅です。形が変わる場所では、温度変化や乾燥に伴う動きが集中しやすくなります。柱形の入隅と中間3〜4m間隔に垂直の伸縮調整目地を設けるのは、その動きを計画した位置で受けるためです。タイルを一面に連続して張り詰めると、動きの逃げ場がなくなり、割れや浮きが生じやすくなります。目地の位置を外観だけで決めず、躯体の形や動きと合わせて割り付けます。

選択肢2

選択肢2:適当です。タイル、下地モルタル、コンクリート躯体は重なって付着しているため、一つの層が動くと他の層にも力が伝わります。躯体のひび割れ誘発目地は、収縮によるひび割れを計画した位置へ集中させるものです。その位置に下地とタイルの伸縮調整目地をそろえれば、動きを同じ場所で受けやすくなります。表面のタイルだけ目地をずらすと、下の目地をまたぐタイルが割れる原因になります。仕上げと下地を別々の絵柄として扱わず、重なった層として納めます。

選択肢3

選択肢3:適当です。密着張りでは、下地へ張付けモルタルを塗り、タイルを押し付け、振動を与えるなどして密着させます。広い面へ先に塗り過ぎると、最後のタイルを張る前にモルタル表面が乾き、十分に接着しにくくなります。1回の塗付けを2m2/人\displaystyle \mathrm{m}^{2}/\text{人}以内とするのは、作業できる時間に対して面積を制限するためです。人数の数値は面積の単位の一部なので、「壁全体が2m²まで」という意味ではありません。気温や風で乾き方も変わるため、表面の状態を見ながら進めます。

選択肢4

選択肢4:不適当です。1:1は1:2.5より砂が少なく、セメントの割合が多い富調合です。上層を極端な富調合にすると収縮差が増え、下地との間に剥がそうとする力やひび割れが生じやすくなります。コンクリート壁の一般的な調合では、下塗り1:2.5に対し中塗り・上塗り1:3などとします。比の数字が小さいと薄い調合に見えるかもしれませんが、固定しているのはセメント1であり、砂を減らすほどセメントが濃くなる関係です。体積比である点も確認します。

周辺知識

モルタルは、主にセメント、砂、水を練り混ぜた材料です。コンクリートとの大きな違いは、通常のモルタルには粗骨材の砂利や砕石を含まないことです。塗り付けて面を整えやすい反面、乾燥収縮などによるひび割れへの配慮が必要になります。
壁仕上げの不具合を考えるときは、「何が動こうとしているか」「何に拘束されているか」を整理します。モルタルが縮もうとしても下地へ強く付着して自由に縮めなければ、引張りの力が生じます。その力が材料や接着面の耐えられる範囲を超えると、ひび割れや剥離になります。各層の調合差、厚さ、乾燥の進み方を管理する理由です。
目地は、この動きを受けるための仕組みです。タイル面だけでなく下地や躯体の目地をそろえること、形の変わる入隅を利用することが重要になります。また接着では、塗ったモルタルが適切な状態のうちに張る必要があります。材料を正しく選ぶこと、時間内に施工すること、動く場所を設けることが組み合わさって、長持ちする仕上げにつながります。