学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅴ(施工) 問16
問題・正答・学習用解説
問題
防水工事及び屋根工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
選択肢3のうち、平場と立上り部の取合いの重ね幅を120mmとした点が不適当です。接着工法による加硫ゴム系シートでは、平場部100mmに対し、平場と立上り部の取合い部は150mm以上を確保します。本肢は必要な重ね幅に30mm足りません。
平場は屋上の広い床面、立上りは壁やパラペットの側面へ防水層を上げる部分です。シートをただ突き合わせると、その継ぎ目から水が入りやすいため、一定の幅を重ねて接着します。加硫ゴムは、ゴムの分子間を結び付けて弾性などを整えた材料で、伸び縮みする性質を持ちます。ただし、材料が伸びても接合部分の不足を補えるわけではありません。
床から壁へ向きが変わる所では、施工時の押付け方も部位の動き方も平場の継ぎ目とは異なります。そのため、平場より大きな重ね幅を必要とします。「平場100mmより20mm増やしたので十分」という比較ではなく、その材料・工法・接合位置に対応する150mmを満たすかで判断します。防水の数値は、別のシート材や固定工法へ無条件に共通する数字として覚えないことが大切です。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:適当です。防水層を守る保護コンクリートも、日中の熱で伸び、冷えると縮み、乾燥によっても収縮します。大きな一枚のままだと、動きが拘束されて不規則なひび割れを生じやすくなります。立上りの仕上り面から約600mm、中間は縦横約3,000mmの位置に伸縮目地を割り付けるのは、その動きを区切って受けるためです。目地は施工の失敗でできた隙間ではなく、計画して設ける部分です。保護層の伸縮を考えることも、下にある防水層を長く守ることにつながります。
選択肢2
選択肢2:適当です。屋上緑化では、植物の根が継ぎ目などへ伸び、防水層を傷める恐れがあります。耐根層は根の貫通を防ぐための層で、その耐根層自体も施工時の道具や上部の荷重から保護する必要があります。本肢では保護コンクリートと絶縁シートの下に耐根層を設け、上の保護コンクリートを耐根層保護層として扱っています。耐根層と保護層は役割が違います。「コンクリートがあるから根への対策は全く不要」と言っているのではなく、層を組み合わせて守る構成です。
選択肢3
選択肢3:不適当です。平場の100mmは適当ですが、平場と立上りの取合いは150mm以上が必要で、120mmでは不足です。シート同士を重ねる接着面が小さいと、部位の動きなどによって継ぎ目が開く余地が生じます。とくに向きが変わる場所は、平場と同じ施工条件とは扱いません。本肢には二つの数値があり、前半が正しくても後半まで適当とは限りません。加硫ゴム系、接着工法、取合い部という三つの条件をそろえて、該当する重ね幅を確認します。
選択肢4
選択肢4:適当です。折板は薄い金属板を折り曲げ、断面に高さを持たせて剛性を高めた屋根材です。タイトフレームはその折板を受ける支持金物で、下の受け梁へ確実に固定する必要があります。屋根には風で持ち上げられる力が繰り返し作用するため、本肢のように隅肉溶接で接合し、緩みを防ぐ取扱いは適当です。隅肉溶接は、部材が交わる隅に溶接金属を盛ってつなぐ方法です。屋根材の強さだけでなく、屋根から梁まで続く接合の経路を確認する理由があります。
周辺知識
屋根の性能は、水を止める層だけで決まりません。防水層、保護層、断熱層、緑化があれば耐根層など、それぞれに役割があります。保護コンクリートは防水層を傷から守りますが、そのコンクリートの伸縮を放置すれば別の不具合を起こします。役割を持つ各層が、互いの動きを妨げ過ぎない構成が必要です。
水が入りやすい場所は、広い平面の中央より、継ぎ目、立上り、排水口、設備の貫通部などです。連続している防水層がどこで切り替わるかをたどると、施工上の重点が分かります。シートの重ね幅は、この連続性を確保するための寸法です。十分な幅があっても、接着面が汚れていたり押付けが不十分だったりすれば性能は確保できません。
金属屋根では、雨を流す形に加えて風による浮上りを考えます。上から押す重さだけでなく、下地から引き離す方向の力もあるためです。水の流れ、材料の伸縮、風の力という三つの視点から、継ぎ目と接合部を確認すると、防水と屋根工事の数値の意味を整理できます。