学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅴ(施工) 問13
問題・正答・学習用解説
問題
鉄骨工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
選択肢4が不適当です。一般の板厚が異なる突合せ継手で段違いが10mmを超える場合は、T継手に準じた高さの余盛りを設けます。本肢の段違いは12mmなので、溶接表面を薄い板から厚い板へ滑らかにつなぐだけでは、該当する形状の条件を満たしません。
突合せ継手は、板の端と端を向かい合わせてつなぐ継手です。完全溶込み溶接は、板の厚さ全体にわたって接合するものです。余盛りとは、継手の表面に必要な形で盛り上げる溶接金属をいいます。厚さの違う板では、段差の大きさに応じて、力を伝える部分の形を適切に整える必要があります。
通常の扱いでは、段違いが薄い側の板厚の4分の1以下、かつ10mm以下であれば、滑らかに移行する形とします。一方、いずれかの限度を超えればT継手に準じた余盛りの条件になります。今回は薄い板の厚さが示されていなくても、12mmが10mmを超えることだけで判定できます。なお、多数回の繰返し荷重による疲労を考える部位の傾斜加工は別の条件です。全ての大きな段差を一律に削る、と置き換えず、該当する施工条件を確認します。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:適当です。鉄骨鉄筋コンクリート造では、内部の鉄骨と周囲の鉄筋が施工時に干渉する場合があります。本肢は柱脚の立上げ鉄筋を850〜900℃に管理し、30度以下の範囲で曲げる所定の処置です。温度が低過ぎれば大きな力で無理に曲げることになり、加熱し過ぎれば鋼材の性質を損なう恐れがあります。数値を管理した特定の取扱いであり、一般の鉄筋加工で自由に加熱してよいという意味ではありません。障害になった鉄筋を切断してよいという判断とも区別します。
選択肢2
選択肢2:適当です。ブレースは斜めに入れる構造材で、ハンチは端部などの断面を大きくした部分です。塑性変形能力は、力を受けて元へ戻らない変形が生じても、急に破断せず変形を続けられる能力です。この働きを期待する場所を常温で鋭く曲げると、加工時に外側へ大きなひずみを与えます。内側曲げ半径を板厚の8倍とするのは、局所に無理な変形を集中させないためです。例えば板厚12mmなら半径96mmとなります。半径を大きくするほど曲がり方が緩やかになります。
選択肢3
選択肢3:適当です。鉄筋貫通孔は、鉄骨の部材を横切って鉄筋を通すために設ける孔です。D25の異形鉄筋について、特記がない場合の孔径の最大値38mmは適当です。鉄筋の節や施工のずれがあるため鉄筋の呼び名と同じ25mmの孔では通しにくい一方、過大な孔は鉄骨の有効な断面を減らします。通しやすさと鉄骨の性能を両立するために上限を設けています。現場で入らないからといって、設計確認なしに孔を拡大するための自由な余裕ではありません。
選択肢4
選択肢4:不適当です。段違い12mmは10mmを超えているので、通常の継手ではT継手に準じた高さの余盛りを設ける条件です。滑らかに移行させるだけの扱いは、段違いが薄い側の板厚の4分の1以下で、かつ10mm以下のときです。「かつ」は両方を満たすという意味なので、一方だけ小さくても足りません。今回、薄い側の板厚が分からなくても12mmという値で条件外と判断できます。完全溶込みという内部の接合状態と、表面の余盛り形状の管理は両方必要です。
周辺知識
鉄骨は、工場や現場で部材を加工し、溶接やボルトでつなぎます。接合部は、隣り合う部材の間で力を受け渡す場所です。溶接したという事実だけでなく、十分に溶け込んでいるか、表面の形が適切か、欠陥がないかを確認します。段差や急な形状変化があると、その周辺に力が集中しやすくなるためです。
溶接の余盛りは、多ければ多いほどよいものでもありません。急な盛上がりや不適切な端部形状は、力の集中を招きます。必要な高さと形を確保することが要点です。また、同じ接合でも、普段の荷重に加え、多数回繰り返す荷重で疲労が問題になる部位には別の形状の配慮があります。異なる条件の規定を混ぜないようにします。
加工に共通する考え方は、完成後に期待する性能を加工途中で損なわないことです。鉄筋の加熱は温度と角度、鋼板の曲げは半径、孔あけは径、溶接は溶込みと形状を管理します。それぞれの数値を、熱による材質変化、過大なひずみ、断面の欠損、応力集中という防ぎたい現象と結び付けると、単なる暗記から理由のある判断へ進めます。