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学科Ⅴ(施工)

一級建築士 令和7年度 学科Ⅴ(施工) 問12

問題・正答・学習用解説

問題

プレキャスト鉄筋コンクリート工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    計画供用期間の級が「標準」の建築物において、プレキャスト部材の屋内側の設計かぶり厚さは、特記がなかったので、柱・梁・耐力壁では35mm、床スラブ・屋根スラブでは25mmとした。
  2. (2)
    柱脚目地部に施される目地部等グラウトの圧縮強度は、特記がなかったので、供試体の養生を現場水中養生として、材齢28日の圧縮強度をプレキャスト部材コンクリートの品質基準強度以上とした。
  3. (3)
    プレキャスト柱部材の幅については、特記がなかったので、許容差を±5mmとして管理した。
  4. (4)
    現場におけるプレキャスト部材の仮置きについては、品質、安定性及び安全性を考慮して、床部材では10枚、梁部材及び柱部材では2段まで積み重ねて置く計画とした。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

選択肢4のうち、床部材を10枚積み重ねる計画が不適当です。プレキャスト床部材の仮置きは、一般に6枚程度までを目安として、部材の形状、支持位置、地盤や受材の耐力などを確認して計画します。梁・柱部材を2段までとする部分ではなく、床10枚という過大な積重ねに着目します。
プレキャストは、部材を工場などで先に製作し、現場へ運んで組み立てる方法です。部材は完成した建物の中では所定の位置で支えられますが、仮置きでは台木など限られた位置で支えられます。設計した使用時と、保管中の力の受け方は同じとは限りません。
例えば同じ重さの床板を積むと、最下段の部材と受材は上に載る全枚数の重さを受けます。台木の位置が上下でずれると、上段からの荷重が下段を途中で曲げる原因にもなります。さらに高く積むほど転倒や荷崩れへの配慮が必要です。「コンクリートは圧縮に強いから10枚でもよい」とは判断できません。枚数の上限だけでなく、平らで安定した場所、設計に合う支持位置、取り出す順序まで決めて初めて適切な仮置き計画になります。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:適当です。設計かぶり厚さは、鉄筋表面とコンクリート表面の間に計画する厚さで、鉄筋を腐食や火から守るなどの役割があります。計画供用期間の級が標準で屋内側という本肢の条件では、柱・梁・耐力壁35mm、床・屋根スラブ25mmという値が適当です。工場で製作する部材は、現場打ちと製作精度の管理条件が異なるため、現場打ちの数字をそのまま当てはめません。また、屋外側や異なる供用期間の条件へ、ここでの数値を無条件に広げないことも必要です。

選択肢2

選択肢2:適当です。グラウトは、部材間の狭い隙間へ充填し、空洞をなくして力を伝える材料です。柱脚の目地が弱ければ、柱自体が十分に強くてもその下で荷重を支え切れません。そのため特記がない場合、現場水中養生の供試体で材齢28日の圧縮強度を確認し、部材コンクリートの品質基準強度以上とします。供試体は試験用につくる小さな試料、養生は温度や水分を保ちながら強度を育てる管理です。部材と接合部分の強さをつなげて確認する扱いです。

選択肢3

選択肢3:適当です。柱幅の許容差±5mmは、設計した幅から実際の幅がどこまでずれてよいかを示します。例えば指定幅600mmなら595〜605mmがこの条件の範囲です。部材寸法のずれが大きいと、現場で隣の梁や壁、目地の位置が合わなくなり、無理な組立てが生じます。工場で寸法を管理することは、現場の施工精度にもつながります。ただし、柱幅の許容差と、建てた柱の位置や傾きの許容差は別の項目です。一つの寸法が合えば全て合格という意味ではありません。

選択肢4

選択肢4:不適当です。床部材を10枚積むと下段や受材に大きな荷重が集中し、部材の曲げひび割れ、地盤の沈下、荷崩れなどの危険を増やします。一般的な床部材の仮置きは6枚程度までを目安に、個別の条件から決めます。梁・柱2段という数値と一緒に書かれていても、文章全体を一括で適当と判断しません。支持する台木を適切な位置へ置き、上下の支持位置をそろえることも重要です。枚数だけ守れば、どこへどのように積んでもよいという基準ではありません。

周辺知識

プレキャスト工法は、現場で型枠を組んで全てを打ち込む方法に比べ、製作環境を管理しやすく、現場の作業を減らせる利点があります。その一方で、運搬、吊上げ、仮置き、接合という段階が加わります。完成時の性能に加えて、この途中の段階でも破損させない計画が必要です。
板状の部材を机の両端で支える場合と、中央の一点で支える場合では曲がり方が変わります。同じことが床部材にも起きます。コンクリートは引張りに弱いため、支え方によって設計で想定しない側に引張りが生じると、運搬や保管の途中でひび割れることがあります。吊り位置や受材位置には構造上の理由があります。
組立て後は、部材間で力が途切れず伝わることが大切です。目地のグラウト、鉄筋の継手、部材の据付け位置などを管理します。工場の部材だけが高品質でも、接合部が充填不足なら建物全体として期待した働きになりません。本問は、製作寸法、材料の強さ、保管の安全を、工場から完成まで続く一つの品質管理として捉えると理解しやすくなります。