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学科Ⅴ(施工)

一級建築士 令和7年度 学科Ⅴ(施工) 問14

問題・正答・学習用解説

問題

鉄骨工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    I形鋼のフランジ部分における高力ボルト接合において、ボルト頭部又はナットと接合部材の面とが120\displaystyle \frac{1}{20}以上傾斜していたので、勾配座金を使用した。
  2. (2)
    ねじの呼び径M22のトルシア形高力ボルトにおいて、ボルトの長さについては、締付け長さに30mmを加えたものを標準長さとし、標準長さに最も近い寸法のボルトを使用した。
  3. (3)
    鉄骨鉄筋コンクリート造における鉄骨の工作図の作成において、鉄筋の主筋の貫通孔径については、同一の部位に種々の径があったので、混同を避けるため、設計担当者と打合せをして、最大径の鉄筋の貫通孔径に統一した。
  4. (4)
    受入検査における溶接部の外観検査は、特記がなかったので、溶接部の全てについて、表面欠陥及び精度に対する目視検査を行い、基準を逸脱していると思われる箇所に対してのみ、適正な器具により測定した。

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

選択肢2が不適当です。ねじの呼び径M22のトルシア形高力ボルトでは、締付け長さに加える値は35mmです。30mmは同じトルシア形のM20に対応する値であり、本肢は径の区分を取り違えています。
締付け長さは、重ねて締め合わせる鋼板などの厚さの合計です。ボルトには、その板を貫通する部分だけでなく、座金、ナット、締付け後に必要となるねじの部分などを納める長さが必要です。そこで種類と径ごとに所定の長さを加え、用意されている基準寸法から近い長さを選びます。
例えば締付け長さが50mmなら、M22のトルシア形は50+35=85 mm\displaystyle 50+35=85\,\mathrm{mm}を標準長さとします。本肢の加算では80mmとなり、標準を5mm短く算定してしまいます。M22という記号の22はねじの呼び径で、ボルト全体の長さ22mmという意味ではありません。また、同じM22でもJIS形高力ボルトでは加える長さが40mmとなるため、径だけで表を選ぶのも不十分です。「ボルトの種類→径→締付け長さ→加算値」の順に確認すれば、似た数字の混同を避けられます。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:適当です。フランジはI形断面の上下に広がった部分です。ナットやボルト頭部が当たる面が傾いていると、一部だけが強く当たり、ボルトへ偏った力が作用します。傾斜が120\displaystyle \frac{1}{20}以上のとき勾配座金を使うのは、くさび形の座金で傾きを補い、座面を適切に整えるためです。120\displaystyle \frac{1}{20}は横へ20進むと高さが1変わる傾きです。座金を単に枚数多く重ねる方法とは異なります。均等に締付け力を伝えるには、材料の強さに加えて接触する面の形が重要です。

選択肢2

選択肢2:不適当です。M22のトルシア形に加算する長さは35mmで、30mmではありません。トルシア形は、所定の締付けで先端のピンテールが破断する仕組みを使うボルトです。JIS形などとは構成が異なるため、加算値も種類別に定められます。ボルトが短いと、ナットへ必要なねじ部分を十分に掛けられないなどの問題につながります。長ければ何でもよいわけでもなく、正しい標準長さを求めて基準寸法から選ぶという、順序立てた選定が必要です。

選択肢3

選択肢3:適当です。同じ場所に異なる孔径が多数あると、製作図の読違いや鉄筋の取違いを招きやすくなります。設計担当者と打ち合わせ、最大径の鉄筋に必要な孔径へ統一する本肢の扱いは適当です。重要なのは、孔を大きくすると鉄骨の断面が減るため、設計上の確認を経ている点です。現場の便利さだけで自由に拡大することはできません。工作図は実際の切断や孔あけに使う図面なので、設計条件を守りながら、製作時に混同しにくい表示と寸法を整えます。

選択肢4

選択肢4:適当です。全ての溶接部を目視し、表面の割れ、形状、溶接の大きさなどに基準外の疑いがある場所を適切な器具で測る手順です。最初の目視を全数について行うため、疑わしい場所を選び出す根拠があります。「器具で全箇所を測らない」ことと「一部しか検査しない」ことは同じではありません。ただし、外観検査では内部の欠陥を全て見つけることはできず、必要な超音波探傷などは別に行います。それぞれの検査で分かる範囲を区別することが大切です。

周辺知識

高力ボルト摩擦接合では、強く締めたボルトが鋼板を押し付け、その接触面の摩擦で力を伝えます。単にボルトが孔に入っているだけでは、想定した働きになりません。適切な軸力を導入するため、種類、長さ、座面の状態、締付け手順などを管理します。
締付け長さの計算では、実際に挟む板の厚さを合計します。例えば20mm、15mm、15mmの三枚なら50mmです。そこへ該当する加算値を足します。呼び径、全長、締付け長さはそれぞれ別の寸法で、図や表を見るときにはどの区間を測っているかを確認します。
製作や受入れの管理では、作業を分かりやすくする工夫と、構造性能を守る確認を一緒に行います。孔径の統一は取り違いを減らせますが設計確認が必要です。全数目視と疑わしい部分の計測は効率よく表面を調べられますが、内部まで保証する検査ではありません。「何を確かめる作業か」「その作業だけでは何が分からないか」を押さえると、異なる検査や管理値の役割を整理できます。