学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅴ(施工) 問2
問題・正答・学習用解説
問題
工事現場の管理等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
選択肢1の保存期間は、1年間ではなく5年間です。建設発生土とは、建物の基礎や地下室を造るために地面を掘ったときに出る土です。土は別の工事の盛土などに利用できますが、行き先が不明だと、不適切な堆積や処分を工事後に確かめられなくなります。そこで、搬出前の再生資源利用促進計画と、実際にどこへ運んだかなどを示す実施状況の記録を残す制度があります。
令和5年施行の制度強化により、本問の出題時点では計画等の保存期間は工事完成後5年間となっています。また、土砂の搬出に関する計画作成の対象は500m³以上へ拡大されています。本問の1,000m³以上は500m³以上にも含まれるため、対象になるという点で外れるわけではありません。誤りは、対象量と一緒に書かれている「1年間」の部分です。
例えば、1,200m³の土を運び出した工事が完成して2年後に、搬出先について問い合わせを受けた場面を考えます。1年で記録を処分していれば、計画と実績を照合できません。完成したら責任や追跡の必要が直ちになくなるわけではない、という制度の目的と結び付けて5年間を覚えましょう。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:再生資源利用促進計画は、工事から出る資源をどこへ運び、どう有効利用するかを整理する計画です。名前が似た再生資源利用計画は、再生資材等を工事へ受け入れて使う側の計画なので、搬出と搬入の方向を区別します。本肢は搬出する土砂について述べています。出題時点の保存期間は5年間であり、1年間とする点が誤りです。1,000m³以上の工事は、現在の500m³以上という対象範囲にも含まれます。閾値の変更だけを見て、対象外だと判断しないことが大切です。
選択肢2
選択肢2:山留めは、地面を掘った周囲の土が崩れ込まないよう支える仕組みです。切ばりは向かい合う山留め壁の間を突っ張る棒状の部材、腹起しは壁に沿って設け、壁が受ける力を切ばりへ伝える横材です。突っ張り棒をしっかり掛けるには、受け側の部材も適切でなければならないと考えると関係が分かります。これらの取付けを誤ると土の崩壊につながるため、土止め支保工作業主任者が作業方法を決め、現場で直接指揮するという記述は適当です。
選択肢3
選択肢3:一つの工事現場では、鉄骨、電気、設備など複数の会社が同時に作業します。各社が自分の作業だけ安全にしても、上階の作業で落とした物が下階の別会社の人に当たる、といった会社をまたぐ危険が生じます。元方安全衛生管理者は、そのような現場全体の災害防止措置のうち、技術的な事項を管理する役割です。作業場所や方法の調整、安全設備の検討など、会社間の関係を含めて考える必要があるので、本肢の役割の説明は適当です。
選択肢4
選択肢4:pHは、水が酸性かアルカリ性かを示す値で、7付近が中性、7より小さい側が酸性、大きい側がアルカリ性です。工事排水にセメント等が混じると、水の性質が周囲の水環境に影響することがあります。本肢の排水量の条件で、海域に排出する水の一般排水基準はpH5.0以上9.0以下なので適当です。海域以外では一般基準の範囲が異なり、5.8以上8.6以下です。数字だけでなく、海に流すのか川等に流すのかという行き先と組にして整理します。
周辺知識
現場管理を理解するには、「人の事故」「掘った地盤の崩壊」「現場外への環境影響」を分け、それぞれ何を管理するのかを考えると整理しやすくなります。土砂の記録は物の行き先を追えるようにする管理、山留めの作業主任者は危険な作業を適切な方法で行うための管理、元方安全衛生管理者は複数の会社が関係する危険の管理、排水基準は水環境への影響を抑える管理です。
ここで重要なのは、「計画」と「実施記録」の違いです。学校行事で事前に作った予定表と、終了後に残した活動記録が別物なのと同様に、工事でも予定どおりに運べなかった土砂があるかもしれません。計画だけでなく実績も保存して、違いを後から説明できるようにします。
法令の数字を読むときは、量・行き先・時期を一緒に確認します。500m³以上には1,000m³も含まれ、工事の着手日と完成日は保存期間を数え始める基準が違います。排水でも海域とそれ以外を混ぜてはいけません。数字の暗記に加え、「何を、どの条件で、いつから管理するのか」を一文で言えるようにすると理解が安定します。