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学科Ⅴ(施工)

一級建築士 令和7年度 学科Ⅴ(施工) 問1

問題・正答・学習用解説

問題

施工計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    瞬間風速が30m/sを超える風が吹いた後に、屋外に設置されているクレーンを用いて作業を行うときは、あらかじめクレーンの各部分の異常の有無について点検を行わなければならない。
  2. (2)
    建築物の新築工事において、積載荷重1tの本設エレベーターを工事用として使用する場合、あらかじめエレベーター設置届を労働基準監督署長あてに提出し、エレベーター据付工事完了後に監理者の検査に合格すれば、使用することができる。
  3. (3)
    総合施工計画書のうち、設計図書に指定されていない仮設物等については、監理者の承認の対象とはならない。
  4. (4)
    公共建築工事において、工事の施工上の必要から材料、施工方法等を考案し、これに関する特許の出願等を行う場合は、あらかじめ発注者と協議しなければならない。

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

選択肢2は、エレベーターを使用できるかどうかの判断を、工事監理者の検査だけで済ませている点が誤りです。工事監理者は、出来上がる建物が設計図や仕様書に合っているかを確認する人です。一方、エレベーターは人や荷物を高い所へ運ぶ機械であり、扉の閉まり方、停止装置、荷重を支える部分などに不具合があると重大な事故になります。そのため、工事の出来栄えの確認とは別に、労働安全衛生法令による安全上の手続が必要です。
本問の積載荷重1tの設備では、設置の計画を届け出るだけでなく、据付け後の落成検査に合格し、検査証の交付を受けなければなりません。落成とは機械の設置工事が完成したことです。設置届は「これからこの計画で設けます」と知らせる手続、落成検査は「出来上がった設備が使用できる安全性を備えたか」を確認する手続なので、両者は代わりになりません。
建物完成後に使い続ける本設の設備を、先に工事用として使う場合でも、安全確認を省けるわけではありません。「本設か仮設か」と「どの法令上の検査が必要か」を分けて読むと、誤っている箇所を特定できます。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:瞬間風速は、長い時間の平均ではなく、短時間に吹いた強い風の程度です。クレーンには長い腕やワイヤロープがあり、強風で大きな力を受けると、接合部の緩みや変形が残る可能性があります。風がやんで見た目が落ち着いても、機械の安全が自動的に回復するわけではありません。本問の30m/s\displaystyle \mathrm{m}/\mathrm{s}を超える風の後は、作業を再開する前に各部分の異常を点検するので適当です。「風が吹いている間の作業制限」と「強風後の再開前点検」は別の安全措置です。

選択肢2

選択肢2:本設エレベーターとは、建物完成後も通常の設備として残るエレベーターです。工事中には資材運搬などに使う場合がありますが、本設であることを理由に工事中の法令上の検査が不要にはなりません。監理者の検査は設計図書への適合を確かめるもので、労働安全衛生法令による落成検査・検査証の代わりにはできません。1tという設備の条件を確認し、設置前の届出、設置後の検査、使用の開始という順序で整理すれば、この肢の手続が不足していると分かります。

選択肢3

選択肢3:仮設物は、足場や作業用の通路など、工事を行うために一時的に設けるものです。設計図書で材料や方法まで指定された仮設と、施工者が作業方法に合わせて自分で計画する仮設では、契約上の扱いが異なります。本問は後者なので、監理者の承認の対象とはしないという記述が適当です。ただし、承認の対象でないことは、勝手に危険な仮設を設けてよいという意味ではありません。施工者には安全を確保し、必要な法令や施工条件を満たす責任が残ります。

選択肢4

選択肢4:特許は、発明を一定期間独占して実施できる権利です。工事に必要な新しい材料や施工方法を生み出した場合、誰が費用を負担し、誰が成果を利用できるかという問題が生じます。発注者のお金や工事の条件に関係して生まれた考案を、施工者の判断だけで出願すると、後で使用権などをめぐる食い違いが起こり得ます。そのため公共建築工事では、出願等の前に発注者と協議します。「協議」は当事者同士で条件を話し合うことで、特許庁による審査そのものとは別です。

周辺知識

建築工事は、一つの会社がすべてを自由に決める仕事ではありません。発注者は工事を注文し費用を負担する側、受注者・施工者は契約した建物を造る側、工事監理者は工事と設計図書との一致を確認する側です。労働基準監督署などの行政機関は、法令に基づいて労働者の安全を確保する立場にあります。同じ工事に関わっていても、確かめる対象と根拠が異なります。
例えば、エレベーターの内装の色が設計図と一致するかと、扉が開いたまま動かない仕組みが安全に働くかは、同じ確認ではありません。前者が適切でも、後者を満たしたことにはならないのです。書類を読むときも、「提出」は相手へ書類を渡すこと、「確認」は内容を確かめること、「承認」は内容を認めることとして区別します。
施工計画では、何を造るかだけでなく、誰が、いつ、何を確認してから次の工程へ進むかを決めます。「機械の設置→検査→使用」「強風→点検→作業再開」「考案→協議→出願」のように順序を追えば、責任者や前後関係を入れ替えた記述にも気付きやすくなります。