学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅳ(構造) 問9
問題・正答・学習用解説
問題
木造軸組工法による建築物の柱又は横架材に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
選択肢3の母屋の継手は、小屋束の間の中央付近を避け、小屋束付近の適切な位置へ設けるのが基本です。母屋は、屋根の下に横向きに通し、垂木から屋根荷重を受ける部材です。小屋束は、その母屋を下から支える短い柱です。継手は、1本の木材では足りない長さを得るため、材を長さ方向につなぐ部分をいいます。
木の継手には、相手の材を組み合わせるための切欠きなどがあり、継いでいない部分と同じように曲げに抵抗できるとは限りません。束と束の間は下からの支えがなく、屋根荷重でたわみます。単純に両端で支えた梁へ一様な荷重が載る例なら、中央の曲げモーメントはとなり最大です。その中央に継手の弱い部分を置くのは不利です。
支持点に近づければ曲げを小さくでき、接合部から荷重を支えへ短い経路で伝えられます。ただし、支点付近ではせん断力やめり込みなども検討が必要です。「加工しやすい中央を選ぶ」のではなく、荷重の流れと継手が伝えられる力に合わせて、支持部付近の位置と納まりを決めます。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適切です。心持ち材は、丸太の中心である髄を含む木材です。乾燥すると木材は縮みますが、年輪に沿う方向と年輪を横切る方向で縮み方が異なるため、内部に力が生じて割れやすくなります。背割りは、あらかじめ一つの面に切込みを設け、割れや変形をその位置へ誘導する加工です。木材を強くするために大きく削る処理ではなく、乾燥に伴う割れを扱う方法なので、加工後の断面性能への配慮も必要です。
選択肢2
(2)適切です。梁の横座屈は、梁が通常の荷重方向へたわむだけでなく、横へ逃げてねじれる不安定現象です。梁せいは縦方向の高さ、梁幅は横方向の厚みです。横へ曲がる抵抗には、長方形断面ならのように幅の3乗が効きます。せいだけを高くした細い梁より、幅を増した方が横へ倒れにくくなります。通常の鉛直曲げに有利な寸法と、横座屈に有利な寸法を区別します。
選択肢3
(3)小屋束間の中央付近へ設けるという指定が不適切です。中央は、屋根の重さによる曲げが大きくなりやすい区間であり、断面が欠けたり力の伝達に制限があったりする継手を置くには不利です。支えである小屋束付近を基本に、継手形式と必要な支持長さを踏まえて位置を選びます。母屋を支えるのが垂木だと逆に覚えないよう、屋根材→垂木→母屋→小屋束という荷重の伝わる順序を確認しましょう。
選択肢4
(4)適切です。通常の床荷重で下へたわむ床梁の中央では、上端は押し縮められる圧縮側です。この位置の上端の切欠きについては、切り取った部分を除く正味断面で有効断面を評価できます。木材が残っていない部分まで元の断面として数えるわけではありません。一方、下端の引張側へ切欠きを設けると、角から割れが進む危険が大きく、同じ単純な扱いはできません。切欠きの上下と、その場所の応力を対応させます。
周辺知識
木造の部材を学ぶときは、名前を単独で覚えるより、屋根や床の重さがどこを通るかを追うと理解しやすくなります。屋根材の重さは小さな間隔の垂木へ集まり、垂木から母屋へ、母屋から小屋束へ、小屋梁や柱を通って基礎へ伝わります。各部材の接合部は、次の部材へ力を受け渡す場所です。
木材は繊維方向へ引く力には比較的強い一方、繊維を引き裂く力には弱いという方向性があります。継手や穴、切欠きの角では応力が集中し、繊維に沿う割裂が起こることがあります。このため、同じ面積を削った場合でも、曲げの引張側なのか圧縮側なのか、支点に近いのか中央なのかで影響が変わります。
梁の寸法を大きくする場合も、目的を明確にします。幅、せいの長方形なら、鉛直曲げに対するはせいの3乗に比例し、横方向への曲げに対するは幅の3乗に比例します。床や小梁で横移動・ねじれを拘束することも横座屈の防止に重要です。木造の安全性は材の強さだけでなく、方向、断面の欠損、支え、接合の組合せで決まります。