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学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和6年度 学科Ⅳ(構造) 問8

問題・正答・学習用解説

問題

建築基準法における荷重及び外力に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    構造部材に生じる応力度等を計算するに当たり、多雪区域ではない一般の地域においては、暴風時又は地震時の荷重を、積雪荷重と組み合わせなくてもよい。
  2. (2)
    風圧力における平均風速の高さ方向の分布を表す係数Er\displaystyle E_rは、建築物の高さが同じ場合、一般に、「都市計画区域外の極めて平坦で障害物がない区域」より「都市計画区域内の都市化が極めて著しい区域」のほうが小さい。
  3. (3)
    地震地域係数Zは、その地方における過去の地震の記録等に基づき、1.0〜0.7の範囲内において地方ごとに定められている。
  4. (4)
    建築物の地上部分において、ある階に作用する地震層せん断力は、その階の固定荷重と積載荷重との和に、その階の地震層せん断力係数Ci\displaystyle C_iを乗じて算出する。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

選択肢4では、層せん断力に掛ける重量を「その階だけ」としている点が誤りです。ある階の層せん断力は、その階を水平に切ったと考えたとき、柱や壁が切り口で伝える水平力の合計です。上の階で発生した地震力も、下の階を通って基礎へ流れるため、その階が支える上方の部分全体の重量を使います。
各階の重量をwj\displaystyle w_j、最上階をn\displaystyle nとすれば、i\displaystyle i階より上を含む重量はWi=∑j=inwj\displaystyle W_i=\sum_{j=i}^{n}w_jで、層せん断力はQi=CiWi\displaystyle Q_i=C_iW_iです。∑\displaystyle \sumは「指定された範囲を全部足す」という記号です。Ci\displaystyle C_iは、その高さで重量の何割に相当する水平力を見込むかを表す無次元の係数です。
たとえば3層の各重量を1000 kN\displaystyle 1000\,\mathrm{kN}とし、説明のため各層でCi=0.2\displaystyle C_i=0.2と仮定すると、最上層は200 kN\displaystyle 200\,\mathrm{kN}、中間層は400 kN\displaystyle 400\,\mathrm{kN}、最下層は600 kN\displaystyle 600\,\mathrm{kN}です。実際のCi\displaystyle C_iは高さでも変わりますが、重量を上から累積する考え方は同じです。各床に直接作用する水平力と、その上の力を集めて伝える層せん断力を分けて理解する必要があります。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適切です。建物の自重などの固定荷重、人や家具などの積載荷重に、雪・風・地震をどう組み合わせるかは地域と荷重状態で定められます。多雪区域でない一般地域では、暴風時や地震時の所定の荷重組合せに積雪荷重を必ず加える扱いではありません。雪を考えなくてよい建物という意味ではなく、積雪時は別の組合せで検討します。すべての最大荷重が常に同時に起きるとする計算でもありません。

選択肢2

(2)適切です。Er\displaystyle E_rは、地面の状態と高さによって平均風速がどう変わるかを反映する係数です。障害物の少ない平坦な土地では風が遮られにくい一方、密集市街地では建物などの影響で地表近くの平均風速が抑えられます。そのため同じ建物高さなら、一般に都市化が著しい区域のEr\displaystyle E_rの方が小さくなります。これは平均風速の高さ分布の話であり、建物間で局所的に強まる風が一切ないという意味ではありません。

選択肢3

(3)適切です。地震地域係数Z\displaystyle Zは、地域の過去の地震記録や地震活動などを反映して、設計用地震力を調整する係数で、1.0〜0.7の範囲で定められます。Ci=ZRtAiC0\displaystyle C_i=ZR_tA_iC_0の構成要素の一つです。Z=0.7\displaystyle Z=0.7の地域でも地震が起こらないわけではなく、法令上の設計値を算出するための地域差です。敷地ごとの地盤の揺れやすさや、建物自体の周期の影響まで、この係数一つで表すものではありません。

選択肢4

(4)「その階の固定荷重と積載荷重との和」を、「その階が支える部分全体の固定荷重と積載荷重との和」へ直します。たとえば1階の柱は、1階分の地震力だけでなく2階・3階から伝わる地震力も受けます。多雪区域なら規定に従う積雪荷重も重量に加えます。層せん断力を、ある階だけに生じる慣性力と取り違えると、下層の柱や壁へ作用する力を過小評価することになり、危険側の計算です。

周辺知識

建物の地震力を考える際は、床を重り、柱や壁を重りどうしをつなぐばねとみなすと、力の伝わり方を整理できます。地面が急に動くと、各床は元の位置にとどまろうとする慣性によって水平力を受けます。その力を支える柱や壁は、さらに下の柱や壁へ力を受け渡し、最後に基礎と地盤が全体を支えます。
各床に直接作用する水平力をFi\displaystyle F_iとすれば、層せん断力は上から足したQi=Fi+Fi+1+⋯+Fn\displaystyle Q_i=F_i+F_{i+1}+\cdots+F_nです。逆にFi=Qi−Qi+1\displaystyle F_i=Q_i-Q_{i+1}と差を取れば、床ごとの力へ戻せます。「層」と「階」の呼び方だけで判断せず、どの高さで切り、切り取った上側に何が含まれるかを図で考えましょう。
地震層せん断力係数Ci\displaystyle C_iには、地域の係数Z\displaystyle Z、建物の周期と地盤の影響を表すRt\displaystyle R_t、高さ方向の分布を表すAi\displaystyle A_i、標準せん断力係数C0\displaystyle C_0を掛け合わせます。重量Wi\displaystyle W_iはkN\displaystyle \mathrm{kN}、係数は単位なしなので、Qi\displaystyle Q_iもkN\displaystyle \mathrm{kN}です。質量kg\displaystyle \mathrm{kg}と重量kN\displaystyle \mathrm{kN}を混ぜず、すでに重量として与えられた値へ重力加速度をもう一度掛けないことも基本的な確認です。