学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅳ(構造) 問7
問題・正答・学習用解説
問題
地震時における建築物の振動に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
選択肢4は、減衰が大きいほど振幅も大きいとしている点が逆です。振幅は、揺れの中心からどれだけ大きく動くかを表す量です。減衰は、摩擦やダンパーなどにより揺れのエネルギーが熱などへ変わって失われる働きであり、大きいほど揺れを抑えます。
建物には、自由に揺らしたときに揺れやすい固有周期があります。周期は1往復にかかる時間で、単位は秒です。外から押す周期がこれに近いと、前の揺れを助けるタイミングで力が繰り返し入り、振幅が増えます。これが共振です。ブランコを動きに合わせて押すと大きく揺れることに似ています。しかし、揺れるたびに十分なエネルギーを失えば、蓄積する量が減るため、共振付近でも振幅は小さくなります。
単純なばねと質量のモデルを、固有振動数と同じ振動数の一定の周期力で長く加振すると、静的な変位に対する振幅の倍率はです。が減衰定数で、2%なら25倍、5%なら10倍となります。これは理想化した比較例で地震応答そのものの倍率ではありませんが、減衰を増やすと共振時の増幅が抑えられる方向を確かめられます。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適切です。長い周期の構造では、急激な速度変化である加速度は小さくなり、ゆっくり大きく動く変位は大きくなる傾向があります。これは「力が小さければ移動量も小さい」という関係ではありません。柔らかいばねは小さな力でも大きく動くと考えると理解できます。ただし実際の応答スペクトルには山や谷があり、全周期域で単調に変化するという断定ではなく、問題文の「一般に」という比較です。
選択肢2
(2)適切です。振動モードは、建物が揺れるときの形の種類です。1次モードは、多層建物の各階が全体として同じ側へ動く基本的な形で、通常は最も低い固有振動数に対応します。2次では途中で動く向きが分かれるなど、より細かい変形を伴い、振動数が高くなります。周期と振動数はの関係なので、振動数の低い1次の方が、1往復にかかる時間は長くなります。
選択肢3
(3)適切です。単純化したモデルの固有周期はです。は質量、は1単位横へ動かすのに必要な力を表す水平剛性です。同じ質量なら、が大きいほど元へ戻そうとする力が強く、1往復が速くなるため周期は短くなります。たとえば剛性を4倍にすると、平方根を取るので周期は2分の1です。強度と剛性は別の量であり、壊れにくさだけから周期を決めることはできません。
選択肢4
(4)減衰定数が大きいほど、共振付近の振幅は一般に小さくなる、と訂正します。地震や周期力から入るエネルギーと、減衰によって失われるエネルギーを比べると、失う量が大きければ揺れは蓄積しにくくなります。減衰定数は大きさを無次元で表し、5%は0.05です。減衰を増やすことは建物を重くすることや硬くすることとは異なり、揺れながらエネルギーを取り除く性質を変えることです。
周辺知識
地震の加速度の記録を見ただけでは、建物がどれだけ揺れるかは分かりません。同じ地面の動きでも、短く硬い建物と、高く柔らかい建物では応答が違うためです。さまざまな固有周期を持つ仮想的な建物へ同じ地震動を与え、それぞれの最大応答を並べたグラフが応答スペクトルです。横軸が周期、縦軸が最大加速度・最大速度・最大変位などで、減衰定数をそろえて比較します。
加速度は慣性力につながり、柱や壁へ作用する力を考えるときに重要です。変位は、隣の建物との衝突、設備配管の追従、階と階のずれなどを考えるときに重要です。免震で周期を長くして力を抑えても、免震層には大きな移動を許す空間が必要になるのはこのためです。
実際の多層建物は複数のモードで揺れ、地震の周期成分も時間とともに変わります。そのため、共振を一つの周期だけで全て説明することはできません。それでも「質量は動きにくさ」「剛性は元へ戻す働き」「減衰はエネルギーを失う働き」という三つを分ければ、周期と振幅についての基本的な因果関係を読み解けます。