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学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和6年度 学科Ⅳ(構造) 問6

問題・正答・学習用解説

問題

図のような支持条件及び断面で同一材質からなる柱A、B及びCにおいて、中心圧縮の弾性座屈荷重の理論値PA\displaystyle P_A、PB\displaystyle P_B及びPC\displaystyle P_Cの大小関係として、正しいものは、次のうちどれか。ただし、固定支持部分の水平移動は拘束されているものとする。
柱ABC
支持条件両端ピン柱Aの支持条件両端固定柱Bの支持条件一端自由・他端固定柱Cの支持条件
断面柱Aの断面柱Bの断面柱Cの断面

選択肢

  1. (1)
    PA<PB<PC\displaystyle P_A<P_B<P_C
  2. (2)
    PA<PB=PC\displaystyle P_A<P_B=P_C
  3. (3)
    PA=PB<PC\displaystyle P_A=P_B<P_C
  4. (4)
    PC<PB<PA\displaystyle P_C<P_B<P_A

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

大小関係はPA<PB=PC\displaystyle P_A<P_B=P_Cです。座屈とは、細長い柱を圧縮したとき、材料が押しつぶれるより先に横へ曲がって耐えられなくなる現象です。弾性座屈荷重はPcr=π2EILk2\displaystyle P_{\mathrm{cr}}=\frac{\pi^2EI}{L_k^2}で求めます。E\displaystyle Eは材料の変形しにくさ、I\displaystyle Iは断面の曲げへの抵抗、Lk\displaystyle L_kは支点条件を反映した座屈長さです。
一辺s\displaystyle sの正方形のI\displaystyle Iはs412\displaystyle \frac{s^4}{12}です。A・B・Cの一辺はa2,a,2a\displaystyle \frac{a}{2},a,2aなので、IA=a4192\displaystyle I_A=\frac{a^4}{192}、IB=a412\displaystyle I_B=\frac{a^4}{12}、IC=16a412\displaystyle I_C=\frac{16a^4}{12}。実際の柱の長さはいずれもl\displaystyle lですが、座屈長さは両端ピンのAがl\displaystyle l、横移動を拘束した両端固定のBがl2\displaystyle \frac{l}{2}、片持柱Cが2l\displaystyle 2lです。
共通の量をK=π2Ea412l2\displaystyle K=\frac{\pi^2Ea^4}{12l^2}と置くと、PA=K16\displaystyle P_A=\frac{K}{16}、
PB=K(12)2=4K\begin{aligned}P_B&=\frac{K}{(\frac{1}{2})^2}\\[4pt]&=4K\end{aligned}
、PC=16K22=4K\displaystyle P_C=\frac{16K}{2^2}=4Kです。CはBより断面二次モーメントが16倍大きい一方、座屈長さが4倍で、その2乗の16倍だけ不利になるため、両者は等しくなります。BとCはいずれもAの64倍です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)Aが最も小さい点は合っていますが、CがBより大きいという判断が誤りです。断面だけを見るとCのI\displaystyle IはBの16倍ですが、Bは上下の回転と横移動を拘束され、Cは先端が自由な片持柱です。このため座屈長さはCがBの4倍となり、分母は16倍になります。断面を大きくした効果と支点条件が不利になる効果がちょうど相殺します。見た目の太さだけで座屈耐力を決めることはできません。

選択肢2

(2)ILk2\displaystyle \frac{I}{L_k^2}を三つの柱について比較すると、Aが116\displaystyle \frac{1}{16}、BとCがそれぞれ4の共通係数を持つため、この関係が正解です。すべて同じ材料なのでE\displaystyle Eを、同じ基準寸法なのでa4l2\displaystyle \frac{a^4}{l^2}を共通因子として消せます。数値のE\displaystyle Eやa,l\displaystyle a,lが示されていなくても比は求められます。BとCは偶然に同じ高さだから等しいのではなく、断面の4乗と座屈長さの2乗の効果が釣り合っています。

選択肢3

(3)AとBが等しいという点が合いません。Aは一辺がBの半分なのでI\displaystyle Iが16分の1、さらにAの座屈長さはBの2倍なので座屈荷重が4分の1になります。二つを合わせると、次のとおりです。
PAPB=116×4=164\begin{aligned}\frac{P_A}{P_B}&=\frac{1}{16\times4}\\[4pt]&=\frac{1}{64}\end{aligned}
支点条件の違いを断面の大きさの違いと混ぜずに、一つずつ倍率として計算すると整理できます。Aの両端ピンは横移動を止めても回転を許すため、固定端ほど曲がりを拘束しません。

選択肢4

(4)片持柱Cの支点条件が最も不利な点だけに注目すると選びやすい順番です。しかし本問では、断面も同時に変わっています。Cの一辺はAの4倍なのでI\displaystyle Iは44=256\displaystyle 4^4=256倍、座屈長さはAの2倍なので分母が4倍となり、PCPA=64\displaystyle \frac{P_C}{P_A}=64です。したがってCはAより小さくありません。支持条件の良し悪しだけ、または断面の大小だけで並べず、必ずILk2\displaystyle \frac{I}{L_k^2}の形で比較します。

周辺知識

細い定規を机に立てて上から押すと、材料が粉々になる前に横へ湾曲します。これが座屈の直観的な例です。Eulerの式は、まっすぐな柱に中心から圧縮力が加わり、材料が弾性範囲にあり、小さな横曲がりが不安定になる理想的な荷重を扱います。現実の柱には初めからの曲がりや荷重の偏りがあるため、この理論値をそのまま設計上の許容荷重にはしません。
座屈長さLk\displaystyle L_kは、異なる支点の柱を、両端ピンの柱と同じ座屈形に換算した長さです。両端固定で横移動がなければ、曲がりの向きが変わる点どうしの中央区間が実長の半分になり、Lk=l2\displaystyle L_k=\frac{l}{2}と考えられます。片持柱は、自由端側へ形を折り返すと長さ2l\displaystyle 2lの両端ピンの形につながるため、Lk=2l\displaystyle L_k=2lになります。
断面の比較には面積ではなくI\displaystyle Iを使います。正方形を相似に2倍へ拡大すると面積は4倍ですが、軸からの距離も2倍となり、その2乗の効果を掛けてI\displaystyle Iは16倍です。式の単位もEILk2\displaystyle \frac{EI}{L_k^2}が、
N/mm2×mm4/mm2=N\mathrm{N/mm^2}\times\mathrm{mm^4/mm^2}=\mathrm{N}
となり、最後に力として求まっていることを確認できます。