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学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和6年度 学科Ⅳ(構造) 問4

問題・正答・学習用解説

問題

図のような筋かいを有する骨組に水平荷重180kNが作用したとき、筋かいBCの引張力Tは100kNであった。このとき、柱ABの柱頭A点における曲げモーメントの絶対値として、正しいものは、次のうちどれか。ただし、B点はピン支持、D点は固定支持とし、梁ACは剛体とする。また、柱ABと柱CDは等質等断面で伸縮はないものとし、全ての部材の自重は無視する。問4の図1

選択肢

  1. (1)
    60kN・m
  2. (2)
    120kN・m
  3. (3)
    180kN・m
  4. (4)
    240kN・m

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

A点の曲げモーメントの絶対値は60 kN m\displaystyle 60\ \mathrm{kN\,m}です。最初に、斜めの筋かいが受け持つ力と、柱が曲がって受け持つ力を分けます。筋かいは横4 m\displaystyle 4\,\mathrm{m}、縦3 m\displaystyle 3\,\mathrm{m}なので長さ5 m\displaystyle 5\,\mathrm{m}の直角三角形です。引張力100 kN\displaystyle 100\,\mathrm{kN}の水平成分は100×45=80 kN\displaystyle 100\times\frac{4}{5}=80\ \mathrm{kN}。外力180 kN\displaystyle 180\,\mathrm{kN}から引くと、2本の柱が曲げで受け持つ水平力は100 kN\displaystyle 100\,\mathrm{kN}です。
梁ACは曲がらない剛体で、柱は伸縮しないため、梁は水平を保ったまま横へ移動し、柱頭の回転は0です。2本の柱の材質、断面、高さは同じですが、左の柱脚は回転できるピン、右は回転できない固定です。この条件での横移動に対する硬さは、左が3EIh3\displaystyle \frac{3EI}{h^3}、右が12EIh3\displaystyle \frac{12EI}{h^3}で、比は1:4\displaystyle 1:4となります。
同じ横移動をする柱には硬さの比で力が分かれるので、左柱の水平力は1001+4=20 kN\displaystyle \frac{100}{1+4}=20\ \mathrm{kN}です。左柱脚Bのモーメントは0であり、高さh=3 m\displaystyle h=3\ \mathrm{m}を使うと、Aのモーメントは20×3=60 kN m\displaystyle 20\times3=60\ \mathrm{kN\,m}です。180 kN\displaystyle 180\,\mathrm{kN}や筋かいの100 kN\displaystyle 100\,\mathrm{kN}を、そのまま柱1本へ掛けないことが大切です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)筋かいの水平成分80 kN\displaystyle 80\,\mathrm{kN}を除いた100 kN\displaystyle 100\,\mathrm{kN}のうち、ピン脚の左柱が5分の1の20 kN\displaystyle 20\,\mathrm{kN}を受けるので、この値が正解です。右柱は残り80 kN\displaystyle 80\,\mathrm{kN}を受け、水平力の合計は20+80+80=180\displaystyle 20+80+80=180 kN\displaystyle \mathrm{kN}と確認できます。左柱は下端でモーメント0、上端で60 kN⋅m\displaystyle 60\,\mathrm{kN\cdot m}となる直線状のモーメント分布です。同じ断面の柱でも、支点の回転条件によって負担する水平力が異なることを反映した答えになっています。

選択肢2

(2)120 kN⋅m\displaystyle 120\,\mathrm{kN\cdot m}とするには、左柱へ1203=40\displaystyle \frac{120}{3}=40 kN\displaystyle \mathrm{kN}の水平力が作用する必要があります。残り60 kN\displaystyle 60\,\mathrm{kN}を右柱が負担すると、力の比は2:3\displaystyle 2:3になり、硬さの比1:4\displaystyle 1:4と合いません。左右の柱頭は剛体の梁でつながっているので、別々の量だけ横へ動くことはできません。左右の断面が同じという条件だけで均等に近く分けず、左のピン支点が回転を許すことで横へ動きやすくなる影響を含めます。

選択肢3

(3)180 kN⋅m\displaystyle 180\,\mathrm{kN\cdot m}は左柱の水平力を60 kN\displaystyle 60\,\mathrm{kN}とした値です。この場合、2本の柱で受ける100 kN\displaystyle 100\,\mathrm{kN}の残りは40 kN\displaystyle 40\,\mathrm{kN}となり、回転を拘束された右柱より、動きやすい左柱が多く負担してしまいます。本問の同じ高さ・同じEI\displaystyle EIの条件では反対です。また、外力の数値180とモーメントの数値180が同じでも、kN\displaystyle \mathrm{kN}とkN⋅m\displaystyle \mathrm{kN\cdot m}は異なる物理量です。まず力を分配し、その後に柱の高さを掛ける順序で考えます。

選択肢4

(4)240 kN⋅m\displaystyle 240\,\mathrm{kN\cdot m}は80×3\displaystyle 80\times3で得られる値ですが、80 kN\displaystyle 80\,\mathrm{kN}は筋かいの水平成分であり、左柱の水平力ではありません。筋かいは斜材の軸方向に力を伝え、柱の曲げと別の経路で外力に抵抗します。柱2本に残る100 kN\displaystyle 100\,\mathrm{kN}のうち、右柱へ80 kN\displaystyle 80\,\mathrm{kN}、左柱へ20 kN\displaystyle 20\,\mathrm{kN}が配分されます。たまたま右柱の水平力も80 kN\displaystyle 80\,\mathrm{kN}となりますが、それを左柱のモーメントの計算へ流用してはいけません。

周辺知識

筋かいは、柱と梁が囲む四角形に対角線を入れて、横へひしゃげにくくする部材です。棒を曲げるよりも、棒の長さを引き伸ばす・縮める抵抗を利用する方が、効率よく水平力を受けられます。図の引張力T\displaystyle Tは斜め方向の力なので、水平抵抗を求める際には、水平成分Tcos⁡θ\displaystyle T\cos\thetaへ分けます。3:4:5\displaystyle 3:4:5の三角形なら水平が4T5\displaystyle \frac{4T}{5}、鉛直が3T5\displaystyle \frac{3T}{5}です。
柱の横方向の硬さは、同じ材料と断面でも端部条件で変わります。両端の回転を止めて横へずらすと、柱は途中で曲がりの向きが変わる形になり、せん断力は12EIδh3\displaystyle \frac{12EI\delta}{h^3}となります。一端の回転を自由にすると曲げの拘束が減り、3EIδh3\displaystyle \frac{3EI\delta}{h^3}になります。δ\displaystyle \deltaは柱頭の横移動量です。同じδ\displaystyle \deltaを代入すると、その比が1:4\displaystyle 1:4になります。
ここで使うのは微小な変形を前提にした曲げの関係です。本問で梁の剛体、柱の伸縮なしという条件があるから、梁が傾かず、柱頭の回転が0と判断できます。梁も曲がる場合や柱の軸方向の伸縮で梁が傾く場合は、同じ分配を無条件では使えません。力のつり合いと、部材どうしがつながる変形条件をセットで確認しましょう。