学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅰ(計画) 問18
問題・正答・学習用解説
問題
設計・監理業務等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は(4)です。工事監理とは、工事を設計図書と照合し、図書のとおりに行われているか確認する業務です。この立場になっただけで、設計内容を自分の判断で変更する権限まで当然に得られるわけではありません。四会連合協定の約款でも、設計変更については委託者の権限や個別の契約を踏まえる必要があり、設問は原則と例外を逆にしています。
例えば、図面では木の床であるのに、現場で別の材料が使われていれば、監理者は設計図書との不一致を確認し、是正を求めるなどの対応をします。しかし「こちらの材料の方がよい」と考え、建築主の意向や契約を無視して図面を変更することとは別です。材料変更は金額、性能、工期、意匠などへ影響するため、決定する権限と設計上の責任を明確にします。設計の問題に気づいた場合も、建築主や設計者との協議、必要な手続を通して扱います。「正しくつくられているかを確認する役割」と「何をつくるかを変更する決定」を分けて理解しましょう。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。基本設計は、建物の配置、部屋の構成、構造や設備の方針などをまとめる段階です。実施設計では、そこから材料の仕様、寸法、取合いなどを具体化し、施工者が施工方法や数量を読み取れる図面・仕様書をつくります。例えば「防水する」という方針だけでなく、使用材料や施工範囲などを明確にする必要があります。設問で指定された平成31年告示の標準業務にも、このように施工と見積りに必要な図書を作成する業務が含まれます。
選択肢2
(2)適当です。契約書の「監理業務」は、法律上の工事監理だけに限定されず、それと関連して契約で引き受ける業務を含みます。例えば、工程表の検討や工事費支払いの審査などは、設計図書どおりかを確認する行為そのものとは区別して考えます。依頼した側が当然に含まれると思い、受けた側が含まれないと思うと争いになるため、業務委託書等で範囲を明確にします。「監理」という同じ言葉でも、法律の定義と契約全体の範囲は区別が必要です。
選択肢3
(3)適当です。建築士法が建築士による工事監理を求める対象では、工事の照合・確認だけでなく、その確認結果や監理の結果を報告することも専門業務の重要な部分です。確認した事実が建築主へ伝わらなければ、不適合への対応や完成時の判断ができません。したがって、これらは独占業務としての工事監理に位置付けられます。建物の構造や規模によって資格の必要範囲が定められるので、世の中の全ての工事の報告を無条件に独占するという意味ではありません。
選択肢4
(4)不適当です。監理者の権限は契約で確認すべきものであり、設計変更の権限が原則として自動的に含まれるわけではありません。図面どおりに施工されているかの確認と、図面自体を変更する判断は異なります。設計変更には委託者の意思、変更後の設計責任、費用や工期の調整が関係します。監理者が問題点を指摘することは必要でも、特別な定めがないのに自分だけで仕様変更を決められる、と読み替えてはいけません。
周辺知識
建築の仕事では「設計」「工事監理」「施工管理」を分けると役割が整理できます。設計は、建てるものの内容を図面や仕様書にまとめる仕事です。工事監理は、実際の工事をその設計図書と照らして確認する仕事です。施工管理は、施工者が現場の工程、品質、安全などを管理し、工事を進める仕事です。名称が似ていても、担当者の立場と責任が異なります。
学校の文化祭で展示物をつくる例なら、完成形と材料を決める図面、図面どおりかを確かめる確認、実際の作業の段取り、という違いです。ただし建築では、人命や財産に関わるため、それぞれに法令と契約による責任があります。同じ人が複数の業務を受ける場合も、どの立場で判断したかを曖昧にしないことが大切です。
報酬基準の標準業務は、業務内容を整理し、報酬算定の目安とするためのものです。本問は平成31年告示第98号を指定しているので、その指定された基準を前提に読みます。契約の業務範囲、法律が要求する業務、追加で依頼する業務を混同せず、成果物と判断権限を確認します。