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学科Ⅰ(計画)

一級建築士 令和6年度 学科Ⅰ(計画) 問16

問題・正答・学習用解説

問題

総合病院の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    病棟において、患者用のトイレは、利用時の安全性と利便性の確保のため、便器側方へのアプローチについて左右勝手が異なるタイプのものを分散して配置した。
  2. (2)
    緩和ケア病棟において、病室は全て個室とし、共用部に患者や患者家族が利用できる調理室や食事室を設置するなど、患者とその家族とのQOLを高める計画とした。
  3. (3)
    病室階において、火災時に避難階段等の縦動線を利用せずに一定の時間の安全性が確保できるように、各階に防火防煙区画された、2 つ以上の安全区画を設ける計画とした。
  4. (4)
    部門構成において、病院運営の効率及び患者の動線を考慮して、外来部門は診療部門と病棟部門との間に配置した。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

正解は(4)です。病院は、通院する人が受診する「外来部門」、入院して生活する「病棟部門」、検査や画像診断などを行う「診療部門」の関係を考えて配置します。外来患者も入院患者も検査を受けるため、両方が共通に使う診療部門を、外来部門と病棟部門の間に置くのが基本です。(4)は中央に置く部門を外来部門としており、この関係が逆になっています。
例えば、玄関に近い外来診察室で診察を受けた人と、上階の病室からベッドで運ばれてきた人が、同じ画像診断装置を使う場面を考えます。診療部門が両者の間にあれば、それぞれの移動距離を抑えやすくなります。逆に病棟から検査へ行くために外来待合を通過する配置では、混雑、プライバシー、感染対策の面でも不利です。病院計画では、単に部屋を近づけるだけでなく、歩行・車椅子・ベッドなど移動方法の違いも踏まえ、交錯する動線を減らします。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。脳卒中後の片麻痺などにより、便器へ移るときに動かしやすい側や、手すりを握りやすい手が人によって異なります。便器側方の空間を全て同じ側にすると、一部の患者は身体を無理にひねることになります。左右勝手の異なるトイレを分散配置すれば、自分に合うものを近くで選べます。便器だけ左右を反転するのでなく、扉、手すり、呼出しボタン、介助者の立つ場所まで一体で確認することが必要です。

選択肢2

(2)適当です。緩和ケアは、痛みなどのつらさを和らげ、患者と家族がその人らしく過ごすことを支えます。QOLは生活の質という意味で、治療の数値だけでなく、落ち着きや家族との時間も含みます。個室は会話や休息のプライバシーを守り、共用の調理室や食事室は家族と食卓を囲む選択肢を生みます。全室個室を孤立につなげないよう、体調に応じて他者と過ごせる場所も用意する計画です。

選択肢3

(3)適当です。自力で階段を下りられない患者を一度に屋外まで運ぶには、時間と人手が必要です。そこで同じ階を火と煙の広がりを抑える区画に分け、出火した区画から別の安全な区画へ横方向に移す「水平避難」を計画します。ベッドや車椅子でも移動しやすく、初期の安全確保に役立ちます。ただし、安全区画にいれば永久に安全という意味ではなく、受入れ面積、区画の性能、職員の誘導、必要時の階段避難まで検討します。

選択肢4

(4)不適当です。外来と病棟の両者が利用する診療部門を、その間に配置するのが基本です。外来は来院する多数の人を受け入れ、病棟は患者の療養生活を支えるため、利用者や環境の要求が異なります。共通に使う検査等を中間に置けば、診療機器を共有しながら、それぞれの部門の独立性を保ちやすくなります。設問のように外来を間に置くと、病棟から診療部門へ向かう移動が外来の混雑と重なりやすくなります。

周辺知識

病院の平面図を読むときは、人と物を別々に追うと構成が理解できます。人には、外来患者、入院患者、面会者、職員がいます。物には、清潔な器材、使用後の器材、薬、食事、廃棄物があります。全てを一本の最短通路へ集めると、混雑や衛生上の問題が生じます。したがって、近接させる部門と、経路を分ける流れを同時に考えます。
病棟は、治療の場であると同時に、睡眠、食事、排泄など毎日の生活を送る場です。左右勝手の違うトイレは自分でできる動作を支え、個室と共用空間の組合せは一人で過ごす時間と交流する時間を選べるようにします。これは患者を管理しやすくするだけでなく、尊厳や自立を支える計画です。
避難も同じく患者の身体条件から考えます。「出口が近い」だけでは、ベッドが曲がれない、扉を通れない、隣の区画に収容できない場合があります。平常時の使いやすさと火災時の搬送の両方を、実際の動作と必要な空間に置き換えて確認します。