資格ナビ一級建築士の演習へ

学科Ⅰ(計画)

一級建築士 令和6年度 学科Ⅰ(計画) 問15

問題・正答・学習用解説

問題

社会福祉に関する用語の説明として、最も不適当なものは、次のうちどれか。

選択肢

  1. (1)
    インクルーシブ教育は、障害の有無にかかわらず学べる仕組みのことであり、カームダウンのためのデンやアルコーブを教室まわりに設けるなど、それぞれの状況に応じて環境を整える「合理的配慮」が必要となる。
  2. (2)
    ジェントリフィケーションは、障害者が社会の中でごく普通に生活ができるように社会を整えることであり、在宅生活支援や地域に溶け込む小規模な就労支援の場などの整備が進められている。
  3. (3)
    レスパイトケアは、在宅で介護をする者が一時的に介護から離れて休息等をとれるようにする支援のことであり、医療型短期入所(ショートステイ)は、一時預かりだけでなく、介護をする者・される者が家族以外の人々と交流できる場としても期待されている。
  4. (4)
    地域包括ケアシステムは、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができるような仕組みのことであり、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるよう、地域の特性に応じた対応が重要である。

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

正解は(2)です。障害のある人も、ない人と同じように地域の中で普通の生活を営める社会を目指す考え方は「ノーマライゼーション」です。「ジェントリフィケーション」は、都市の再投資や再開発などに伴って地域の性格や住民層が変わり、地価・家賃の上昇などが生じる現象を指します。
例えば、比較的安い家賃で暮らせた地域に高所得者向けの住宅や店舗が増えると、地域の印象や利便性が変わる一方、従来の住民や小規模な店が費用を負担できず離れることがあります。ジェントリフィケーションは、そのような都市の変化を分析するための概念で、障害福祉サービスの整備を直接表す言葉ではありません。
ノーマライゼーションの「普通」は、障害のある本人を周囲と同じ能力に変えるという意味ではありません。社会や環境の障壁を減らし、本人が住む場所、働き方、暮らし方を選び、地域へ参加できるようにする考え方です。在宅生活や小規模な就労の場を支えるという本肢の具体例は、この理念に対応しています。社会を整える方向は適切ですが、用語名を訂正する必要があります。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。インクルーシブ教育は、障害の有無などにかかわらず共に学べる仕組みを目指します。同じ部屋に全員を置くだけでなく、それぞれが学びに参加できる配慮が必要です。カームダウンは刺激を減らして落ち着くことで、デンやアルコーブのような小さな囲われた場所が役立つ場合があります。ただし本人を罰として隔離する場所ではありません。音や光への感じ方、本人の希望などに合わせて利用できる環境を整えることが合理的配慮の考え方です。

選択肢2

(2)不適当です。記述はノーマライゼーションの説明です。障害の有無にかかわらず地域で暮らし、働き、社会参加できるようにするため、環境や支援を整えます。ジェントリフィケーションは、地域の高級化や不動産価格の上昇、住民構成の変化等を扱う都市の概念です。再開発が進んで見た目が整うことと、誰もが生活しやすい社会になることは同じではありません。両者の目的と対象を分けると、用語の取り違えに気付けます。

選択肢3

(3)適当です。レスパイトは休息を意味し、介護する人が一時的に介護から離れて休めるようにする支援です。短期入所等を利用すると、家族が休養や用事の時間を確保し、介護を続ける負担を和らげられます。医療的な対応が必要な人の短期入所では、その対応が可能な設備や職員体制も重要です。また本人と家族が家庭外の人に関わる機会にもなります。介護を放棄することではなく、本人と介護者の生活を長く支えるための仕組みです。

選択肢4

(4)適当です。地域包括ケアシステムは、住まいを基盤に医療、介護、予防、生活支援をつなぎ、住み慣れた地域で暮らし続けることを支えます。診療所や介護施設を別々に建てるだけでは、通院や買物、日々の見守りの問題は残ります。地域の人口、交通、既存の施設や担い手に応じて連携する必要があります。一つの巨大施設へ全ての人を集める制度という意味ではなく、本人の生活に必要な支援が切れ目なく届く関係をつくる考え方です。

周辺知識

社会福祉と建築を結び付ける際は、「本人が何をしたいか」と「何がそれを妨げているか」を考えます。階段で教室へ行けない、騒音で授業に集中しにくい、介護のため家族が休めない、といった困難は種類が違います。段差解消、小さな落ち着ける場所、短期入所というように、必要な環境と支援も異なります。
合理的配慮は、全員へ全く同じ対応をすることではなく、個々の状況に応じて参加を妨げる障壁を減らすための調整です。建築で一つの標準形を作るだけでなく、静かな場所を選べる、情報を複数の方法で得られるといった選択の余地が役立ちます。利用者本人の意向を無視して、専門家だけで必要な配慮を決めることも避けます。
地域の再開発は、施設や街並みを改善する一方、費用の上昇で従来の住民が暮らしにくくなる場合があります。見た目の更新だけで地域の質を評価せず、誰が使え、誰が住み続けられるかまで見ることが大切です。福祉の理念と都市の変化を区別しながら、生活の継続という接点で考えると理解が深まります。