学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅰ(計画) 問14
問題・正答・学習用解説
問題
商業建築物等の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は(4)です。上下二段のかごを持ち、隣接する奇数階と偶数階へ同時に乗客を運ぶ方式は「ダブルデッキ方式」です。「コンベンショナルゾーニング方式」は、建物の階を低層用、高層用などのまとまりに分け、それぞれを担当するエレベーター群を設ける考え方です。
高層ビルで全てのかごが全階に止まると、一往復に時間がかかり、混雑時には待ち時間が長くなります。ゾーニングでは担当する階を限定し、停止回数や走行の無駄を減らします。例えば低層階へ行く人と高層階へ行く人を別のエレベーター群へ案内するイメージです。
一方、ダブルデッキは一つの昇降路の中で二段のかごを使い、同時に二層へ乗降させることで輸送能力を高め、必要な昇降路の面積を抑える方法です。下のかごが奇数階、上のかごが偶数階という運用などが考えられます。設備の構造を二段にする話と、どの階を担当するかを分ける話は異なります。本肢の機能説明はダブルデッキに対応しており、方式名の部分を訂正します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。流動係数は、単位幅の場所を単位時間に何人が通過できるかを表す値です。平らな出入口と、足を上げ下げする階段では同じ幅でも人の流れやすさが異なります。階段側の処理能力に合わせて入口からの流入を調整すれば、入口を階段より狭くする計画が成立します。ただし必要な法定幅を下回ってよいわけではなく、人数、出口数、階段での合流等も含めて検討します。「狭い入口は必ず不適切」という寸法だけの判断を避けます。
選択肢2
(2)適当です。日本の道路は左側通行なので、左折入庫・左折出庫は反対車線を横切る動きを減らせます。入口と出口を10m離すと、出る車と入る車の動きが同じ場所に集中しにくくなります。大規模店舗では来客の車が集中するため、敷地内だけでなく前面道路の渋滞や歩行者の横断も考える必要があります。10mという離隔や左折の運用だけで全ての安全が保証されるものではなく、出入口の見通し、歩道の連続性、待機長等も合わせて確認します。
選択肢3
(3)適当です。サイトラインは観客の目と舞台上の対象点を結ぶ見通しの線です。車椅子使用者も舞台先端などを見られるよう、前の観客や手すりが視線を遮らないかを確認します。また席を一つの階や端に集中させず、複数の位置に分散すれば、鑑賞の距離や料金、同行者との過ごし方などを選びやすくなります。単に車椅子が置ける床面積を確保するだけでは、同等に観劇できるとは限りません。経路と視界、選択肢を併せて計画します。
選択肢4
(4)不適当です。上下二段のかごで隣り合う二つの階に同時に乗降させるのはダブルデッキ方式です。コンベンショナルゾーニングは、低層・高層等の階群ごとに担当するエレベーターを分ける方式で、かごを二段にすることを意味しません。いずれも高層建物の輸送効率を改善しますが、使う仕組みが違います。ダブルデッキでは二段の乗場や階高との関係も考える必要があり、一つの通常かごを階別に運転するだけで同じ働きが得られるわけではありません。
周辺知識
人の移動を計画するときは、通路の面積だけでなく、時間当たりに何人を運べるかを考えます。単純化すると、流動係数を、有効幅をとした通過人数はに比例します。例えばの単位が人/(m・秒)なら、幅mを掛けた結果は人/秒です。同じ人数の流れを受けるなら、流れにくい場所ほど広い幅が必要になります。
ただし実際の避難では、階段への合流、戸の開閉、人数密度、利用者の身体状況なども関わり、単純な掛け算だけで安全を保証できません。駐車場も車が一台通れる幅だけでなく、集中したときの入出庫と道路への影響を考えます。エレベーターなら、一回の定員に加えて往復時間と停止回数が輸送能力に影響します。
劇場では、移動して席へ到達できた後に、実際に舞台を見られることまでが利用です。車椅子席を置く位置が限定されると、鑑賞体験の選択肢も限られます。人の流れ、待ち時間、視線という異なる条件をつなげて、建築の空間と設備を一体に計画することが大切です。