学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅰ(計画) 問13
問題・正答・学習用解説
問題
住宅地・集合住宅の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は(3)です。居住予定者が組合を結成し、事業計画、設計、工事発注、管理・運営へ主体的に関わる方式は「コーポラティブハウス」です。「コレクティブハウス」は、個々の独立した住戸に加え、共用の食堂や台所等を設け、生活の一部を共同化する住まい方を指します。
コーポラティブは、主に住宅をどう企画し取得するかという事業の進め方に着目します。完成した住戸を購入するだけでなく、住む人たちが最初から要望を出し合い、専門家の協力を受けて住宅をつくるイメージです。コレクティブは、住み始めてからどのように個人生活と共同生活を組み合わせるかに着目します。例えば普段は自分の住戸で生活し、希望する日に共用食堂で食事や交流を行う形が考えられます。
二つは似た音の用語ですが、分類する軸が違います。そのため、コーポラティブ方式でつくった住宅にコレクティブな暮らしを取り入れることも理論上可能です。互いに完全に反対の住宅形式というわけではなく、本肢の説明がどちらの用語の定義に対応するかを判断することが大切です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。防災集団移転促進事業は、災害が起きた地域や災害危険区域等のうち、居住に適当でない区域から住居をまとまって移転するための事業です。危険な場所の建物を強くするだけでは安全を十分に確保できない場合、住む場所自体を見直します。集団的な移転は、近隣関係を保ちながら生活を再建することにも関わります。ただし移転先の交通、仕事、医療や買物の利用なども必要で、安全な土地に住宅だけを並べれば完了するものではありません。
選択肢2
(2)適当です。ボンエルフ方式は、生活道路で歩行者と車が共存できるよう、車の速度を抑える考え方です。シケインは進行方向を曲げる配置の工夫で、一直線に加速しやすい道路と違い、運転者に減速を促します。道路を車専用の通過空間としてだけ扱わず、住民の生活の場として考えます。歩道を完全に分離することが本質ではありませんが、歩行者の安全が自動的に得られるわけでもないため、見通しや車の通行量、維持管理等を併せて検討します。
選択肢3
(3)不適当です。組合をつくった居住予定者が事業の計画や発注等を進める説明はコーポラティブハウスです。コレクティブハウスの基本は、独立した住戸と共用の生活空間を組み合わせ、食事や家事等の一部を共同化する住まい方にあります。「共同でつくる」と「生活の一部を共同で行う」を区別すると覚えやすくなります。コレクティブだから個室だけで暮らしを全て共用する、あるいは全員が組合で建設しなければならない、という意味ではありません。
選択肢4
(4)適当です。デュアルは二つという意味で、デュアルリビングは異なる役割の居間を二つ設ける考え方です。来客を迎えるフォーマルリビングと、家族が日常的にくつろぐファミリーリビングを分ければ、来客中も家族の生活を続けやすくなります。同じ用途の部屋を何となく二つ並べるという説明ではありません。必要面積が増えたり家族の交流が分散したりする面もあるので、接客の頻度や生活の仕方に応じて適否を考える計画です。
周辺知識
住宅計画の用語は、事業、住み方、室の構成、道路の使い方など、異なる大きさの話を含みます。コーポラティブは住宅事業の進め方、コレクティブは暮らしの共同化、デュアルリビングは一つの住宅内の機能分担、ボンエルフは住宅地の道路計画です。同じ「住宅」に関する語でも、どの範囲を扱うかを先に確認すると混乱を減らせます。
個人と共同の関係も段階的に考えられます。自分だけの寝室、家族の居間、住民が共用する食堂、街の生活道路では、利用者や管理の仕方が違います。共同空間が広いほど必ず良いのではなく、誰が掃除や費用を担い、参加したくないときにどう選べるかも大切です。
防災のための移転でも、建築の安全と生活の継続を両方考えます。遠くの高台へ移れば浸水の危険は減るかもしれませんが、買物や通院が難しくなる可能性があります。住宅を建てる位置、近隣との関係、共用の場、移動のしやすさを結び付けて計画することが、住み続けられる環境をつくるために必要です。