資格ナビ一級建築士の演習へ

学科Ⅰ(計画)

一級建築士 令和6年度 学科Ⅰ(計画) 問12

問題・正答・学習用解説

問題

住宅の作品名(設計者)とその特徴に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    まつかわぼっくす(宮脇檀)は、鉄筋コンクリート造の内側に木構造をおさめた混構造で、中庭のあるコートハウス形式の住宅である。
  2. (2)
    住吉の長屋(安藤忠雄)は、ファサードに玄関以外の開口部がなく、中央部に中庭を設けた住宅である。
  3. (3)
    中野本町の家(伊東豊雄)は、鉄筋コンクリートの柱の上に鉄骨フレームを架け、上部をアルミやテントで覆った住宅である。
  4. (4)
    私たちの家(林昌二・林雅子)は、庭と居間とが面する関係を保ちつつ、コンクリートブロック造の住宅を増改築することで、夫婦2 人の住まいとした住宅である。

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

正解は(3)です。コンクリートの柱に鉄骨のフレームを架け、軽い金属やテント等で上部を覆う特徴は、伊東豊雄の「シルバーハット」に対応します。「中野本町の家」は同じ設計者による別の住宅で、鉄筋コンクリート造のU字形の構成と、白く内向的な空間が特徴です。
U字形とは、中庭の周囲を曲がるように室内空間が連続する平面です。外部の街に対して開口を絞り、内側の庭や上方からの光を受けることで、住まいの内部に独自の落ち着いた環境をつくります。一方、シルバーハットは、柱とフレームに比較的軽い屋根を載せる構成で、細かな骨組みや空を感じさせる開放的な表現を持ちます。
同じ建築家が設計したから同じ材料や空間になるわけではありません。作品名を設計者名と対で覚えるだけでは、このような取り違えを見抜けない場合があります。外側に閉じて内側へ開くのか、軽い屋根の下に空間をつくるのか、構造と光の入り方を合わせて理解するのが本問の要点です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。まつかわぼっくすは、外側の鉄筋コンクリートと内側の木組みを組み合わせた混構造の住宅で、中庭を持つコートハウス形式です。混構造は異なる構造を組み合わせること、コートハウスは庭を建物や壁で囲み、内部の生活と結び付ける住宅を指します。街路への開き方を抑えながら、庭側から光や風を得られます。単にコンクリートの箱の中へ木製家具を置くという意味ではなく、建物の構造と空間の組合せとして理解します。

選択肢2

(2)適当です。住吉の長屋は、街路側のファサードを玄関以外は閉じ、細長い建物の中央に屋根のない中庭を設けた住宅です。ファサードは外から見える正面等の立面を指します。中央の庭により、密集した市街地でも内部へ光や空気を取り込みます。また庭を介する移動では、雨や気温など外部の自然を身近に感じます。街へ閉じた壁と、内部の庭への開放を対にして捉えると、「開口が少ないから採光がない」という誤解を防げます。

選択肢3

(3)不適当です。本肢のコンクリート柱、鉄骨フレーム、アルミやテントという説明は、シルバーハットの特徴です。中野本町の家は、U字形の鉄筋コンクリート造の空間が中庭を囲む、白く内向的な住宅として知られます。二つとも伊東豊雄の作品ですが、構造の表現や外部との関係は異なります。設計者だけ合っていても建築物の特徴が別作品なら誤りです。作品名と、平面の形、材料、光の取り入れ方の三つをセットにして対応させます。

選択肢4

(4)適当です。林昌二・林雅子の「私たちの家」は、既存のコンクリートブロック造の住宅に増改築を重ね、暮らしや周辺環境の変化に対応した住宅です。庭と居間が向き合う関係を保つことは、床面積を増やすだけでは失われかねない、日常の眺めや居心地を継承する計画です。住宅は完成時の一枚の平面図で固定されるとは限りません。夫婦の住まいとして大切な空間の関係を保ちながら変える、という時間の中での設計に着目します。

周辺知識

コートハウスは、周囲を建物や壁で囲んだ庭を、住まいの中心的な外部空間として使う住宅です。密集地では隣家との距離が小さく、窓を道路側へ大きく開けると視線や騒音が気になることがあります。そこで内部に庭を設ければ、プライバシーを保ちながら光、空、風との関係を得られます。ただし庭の幅や周囲の高さによって日射や通風は変わるため、庭があれば必ず快適とは限りません。
本問では、中庭を持つ住宅でも構造や生活の構成が違います。まつかわぼっくすはコンクリートと木の混構造、住吉の長屋は中央の外部空間を介する構成、中野本町の家はU字形の内向的な空間です。同じ「中庭」という言葉だけでは区別できません。
また「私たちの家」は、生活の変化に合わせて建物を変える視点を示します。面積、部屋数、材料だけでなく、どこに座って何を見るか、庭とどのようにつながるかといった体験が設計を支えます。住宅作品を学ぶ際は、居住者の動線と、内外の境界のつくり方を簡単に描くつもりで読んでみましょう。