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学科Ⅰ(計画)

一級建築士 令和6年度 学科Ⅰ(計画) 問6

問題・正答・学習用解説

問題

建築物の長期利用に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    一戸建て住宅において、敷設したさや管の内部に樹脂製の配管を通すさや管ヘッダー工法を用い、ヘッダーを設置した洗面室の床下から集中的に点検や更新が行える計画とした。
  2. (2)
    事務所ビルにおいて、大規模災害時の事業継続や早期復旧を目的としたBCP(事業継続計画)の策定に当たり、サテライトオフィスを設置して事業拠点を分散する計画とした。
  3. (3)
    高層集合住宅において、各階で更新ができるように、排水管の接合方法が工夫された特殊継手排水システムを採用したので、排水管及びパイプシャフトは専有部から点検する計画とした。
  4. (4)
    建築物の耐震改修に当たり、確認済証が交付されていたが検査済証の交付を受けていなかったので、建築当時の建築基準法等への適合状況を調査するため、確認済証に添付された図書等を用いて図上調査・現地調査を実施した。

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

正解は(3)です。共用の排水管を長く使い、点検や更新をしやすくするには、共用部からアクセスできる位置や経路を確保することが望まれます。各階で管を交換しやすい特殊な継手を採用しても、点検のたびに専有部へ入る必要がある配置の不都合まで解消するわけではありません。
専有部は個々の住戸など居住者が専ら使う部分、共用部は共同廊下など住民が共同で使う部分です。パイプシャフトは、上下階をつなぐ配管などをまとめて収める縦の空間です。共用排水管が複数の住戸に関わるのに、ある一戸の室内からしか確認できなければ、その居住者の在宅や同意、家具の移動等の調整が必要になります。漏水時の迅速な対応や将来の交換工事にも影響します。
特殊継手は、管を接続・交換する作業をしやすくする技術です。これに加え、点検口、作業空間、搬出入経路を用意して初めて、維持管理しやすい計画になります。本肢は、接合方法の改善だけを理由に点検経路を専有部へ依存させており、長期利用の計画として不適当です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。さや管は、実際に水などを流す管の外側に設ける保護用の管です。その中に樹脂管を通すと、条件が整えば内部の管を引き替えやすくなります。ヘッダーは一本の供給を複数の器具へ分ける分岐の集まりです。これを洗面室の床下等の点検できる場所にまとめると、接続部の確認や更新を行いやすくなります。ただし曲がりが多過ぎる配管や狭い点検口では作業が難しいため、工法名だけでなく引替え可能な経路と空間を確保します。

選択肢2

(2)適当です。BCPは、災害等で通常の業務ができなくなったとき、重要な仕事を継続し、早く復旧するための計画です。サテライトオフィスは、本拠点とは別の場所に設ける業務拠点で、本社が使えないときの代替場所になり得ます。拠点を分散することは、一か所の被災が事業全体を止める危険を減らす方法です。ただし同じ災害で同時に使えなくならない立地や、通信、データ、従業員の移動等も検討し、場所を用意するだけで終えないことが大切です。

選択肢3

(3)不適当です。管を各階で更新できる継手の工夫と、管へ到達して点検・作業できるかは別の問題です。専有部からしか共用排水管を点検できないと、住民の都合や私生活への配慮が必要になり、管理や緊急対応が難しくなります。共用部からの点検経路や作業空間を確保することが望ましい計画です。共用の設備だから必ず全区間が共用廊下に露出すべきという意味ではなく、建築の配置と設備の交換方法を一緒に成立させる必要があります。

選択肢4

(4)適当です。確認済証は、工事前の計画が法令に適合するかを確認したもの、検査済証は完了検査を経たことを示すものです。確認済証だけでは、その図面どおりに完成したかまで分かりません。そこで確認時の図書等を使う図上調査と、実物を確認する現地調査を組み合わせて、建築当時の法令への適合状況を調べます。検査済証がないから直ちに全て違反とも、確認済証があるから現況まで適法とも決め付けない扱いです。

周辺知識

建物の長期利用には、壊れにくさだけでなく、壊れた部分を見つけ、直し、交換できることが必要です。構造体が使える期間と、設備や内装が使える期間は同じではありません。配管を壁や床の奥へ完全に閉じ込めると、小さな不具合でも大きく壊して修理することになり、費用や利用者の負担が増えます。
維持管理は、点検、清掃、補修などによって機能を保つこと、更新は古くなった設備等を新しいものへ取り替えることです。点検口から見るだけなら足りる空間でも、管を切断して取り出し、新しい管を入れるには不足する場合があります。設計時には作業者の姿勢や工具、部材の搬出入まで想像します。
また災害後の事業継続では、建物が倒れないことと仕事が続けられることを分けます。電力、通信、取引先、職員の通勤などが止まれば、構造体が無事でも業務は止まり得ます。建物の図書を保存し、現状を把握し、設備を更新しやすくしておくことは、平常時の維持管理と災害時の復旧の両方に役立ちます。