学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅰ(計画) 問5
問題・正答・学習用解説
問題
断熱計画、気密計画等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は(2)です。基礎断熱工法では、基礎の外周等で断熱・気密の境界をつくり、床下を外気から切り離した側に含めます。そこへ外気が通るねこ土台を設けて床下換気を確保する、という説明は、この境界を破ってしまうため不適当です。
ねこ土台は、基礎と土台の間に隙間を設けるための部材や納まりです。床で断熱し、その下を屋外に近い空間として換気する床断熱工法では、床下へ外気を通す方法が使われます。一方、基礎断熱で同じ通気の隙間を残すと、せっかく断熱材で囲った内側に冬の冷たい空気が入り、熱が逃げやすくなります。基礎天端と土台の間も、気密パッキン等で空気の通り道を塞ぐことが基本です。
ただし、床下を閉じれば湿気の管理が不要になるわけではありません。地面からの水蒸気、施工直後のコンクリートの水分、漏水などを考慮し、床下の乾燥や空気の循環を計画します。「湿気対策として空気を動かすこと」と「外周から無制限に外気を入れること」を分け、断熱境界の位置に合った方法を選ぶのが要点です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。繊維系断熱材の外側に透湿防水シートを置き、その外に通気層をつくると、壁内へ入った水蒸気を外へ逃がす経路を確保できます。透湿防水は、水蒸気を通しやすい一方、雨水など液体の水の浸入を抑える性質です。胴縁は外装材を支える下地材で、空気の通る隙間づくりにも使います。ただしこれだけで全ての結露を防げるわけではなく、室内側の防湿・気密、雨水の処理、通気層の入口と出口の連続性も必要です。
選択肢2
(2)不適当です。基礎断熱では、床下を断熱・気密の境界の内側として扱うため、外周の基礎と土台の間から外気を入れない納まりにします。床下へ外気を通すねこ土台の説明は、床断熱の場合と混同しています。外壁と基礎の断熱材がつながっていても、隙間から空気が出入りすれば熱は運ばれます。断熱材が熱の伝わりを抑えることと、気密層が空気の移動を抑えることを区別し、その両方の連続性を確認します。
選択肢3
(3)適当です。冬の既存窓は外気に近く冷たいため、室内の湿った空気が触れると結露しやすくなります。内窓の気密性を高めると、その空気が二つの窓の間へ入り続けることを抑え、既存窓の室内側表面の結露を減らす効果があります。外窓自体が必ず暖かくなるからではありません。窓間に湿気を閉じ込めた場合などはなお結露し得ます。内窓を少し開けたまま暖房するなど、水蒸気が入り続ける使い方にも注意が必要です。
選択肢4
(4)適当です。気候風土適応住宅は、地域の気候や伝統に応じた特徴を持ち、そのため一般の外皮基準への適合が難しいもののうち、定められた基準に適合する住宅です。外皮は屋根、壁、窓、床等の室内外を隔てる部分を指します。伝統的な土壁や開口の構成を、単に断熱材の厚さだけで評価しにくい場合などを扱う制度です。古風な外観なら自動的に該当するのではなく、所定の要件に合うことが必要であるという本肢の説明は適切です。
周辺知識
断熱と結露を理解するには、熱、空気、水蒸気の三つを別々に追うと整理できます。断熱材は温度差による熱の移動を抑え、気密層は隙間を通る空気の移動を抑え、防湿層は水蒸気が壁内へ入り込むことを抑えます。材料によって複数の役割を兼ねる場合もありますが、同じ言葉ではありません。
結露は、水蒸気を含む空気が冷え、その温度で気体として保てる限界に達したときに水滴が生じる現象です。冬の冷たいコップが室内で濡れるのと似ています。表面温度を上げる方法と、そこへ届く水蒸気を減らす方法の両方が対策になります。内窓の気密を高める効果は、特に後者との関係で理解できます。
建物の断面図では、断熱・気密の境界を一筆書きするように追ってみましょう。屋根、外壁、床又は基礎をたどったとき、途中の隙間から外気が内側へ入らないかを考えます。床断熱と基礎断熱では、この線を床に引くか基礎へ下げるかが違います。同じ換気部材をどちらにも機械的に使えない理由は、この境界の違いにあります。