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学科Ⅰ(計画)

一級建築士 令和6年度 学科Ⅰ(計画) 問4

問題・正答・学習用解説

問題

人間の行動や心理の特性に配慮した計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    認知症高齢者グループホームにおいて、「環境移行」によるADLの低下や心理的混乱を避けるため、1 ユニットの定員を9 人とし、小規模で家庭的な環境となるようにした。
  2. (2)
    総合病院において、患者や見舞い客等が病室に設置された備品・什器を混乱なく、色や形状等で直感的に分かりやすく使えるよう、ウェイファインディング・デザインを採用した。
  3. (3)
    住宅地において、防犯性を高めるため、オスカー・ニューマンによる「まもりやすい空間」の理論に基づき、パブリックからプライベートまでの段階的な空間構成を採用した。
  4. (4)
    商業施設において、ソシオフーガルな関係での利用ができるよう、互いの視線が合わずに座れるベンチを休憩スペースに設置した。

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

正解は(2)です。ウェイファインディングは、自分の位置を理解し、目的地へ向かう経路を見つけて移動することです。そのためのデザインは、案内表示、見通し、分かれ道、目印、階や診療科ごとの分かりやすい構成などを扱います。備品や什器の操作方法を直感的に分からせるという本肢の説明とは、主な対象が異なります。
例えば病院で「検査室へ行きたい」ときに、現在地と進む方向、階段やエレベーターの位置が分かることはウェイファインディングです。一方、病室で「どのボタンを押すとベッドが動くか」「この取っ手をどう操作するか」が分かることは、器具の操作性や分かりやすさの問題です。どちらにも色や形は使えますが、色を使ったというだけで同じ概念になるわけではありません。
建築計画の用語は、採用した材料や見た目ではなく、どの行動を支えるかで判断します。本肢を適切にするには、患者や見舞い客が目的の病室や部門へ迷わず到達できるように計画した、と直します。操作の説明を道順の発見と混同した点が誤りです。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。環境移行は、住み慣れた場所から別の生活環境へ移ることです。部屋の位置や人間関係が急に変わると、不安や混乱が生じ、これまでできた動作もしにくくなることがあります。ADLは食事、着替え、移動等の日常生活動作です。9人という小さな生活単位で家庭的な環境をつくる計画は、なじみの関係や行動の手がかりを得やすくします。人数を減らせば症状が必ず改善するという意味ではなく、環境の変化による負担を軽減する配慮です。

選択肢2

(2)不適当です。ウェイファインディングは目的地へたどり着くための経路発見を支えます。病室内の備品のボタンや取っ手を、形や色で直感的に操作しやすくするデザインを、そのままウェイファインディングとは呼びません。例えば案内図の青色をたどって検査部門へ行くなら経路の理解、青いボタンで機器を操作するなら器具の使い方の理解です。同じ「色」を利用していても、そのデザインが支える行動の違いで用語を判定します。

選択肢3

(3)適当です。ニューマンの「まもりやすい空間」は、住民が周囲へ関心を持ち、自然に見守りや管理に関われる住宅環境を考える理論です。誰でも通れる道路から、住民が共用する場所、各住戸の私的な場所へ段階をつくると、誰が使い誰が気に掛ける空間かが分かりやすくなります。単に高い塀で囲むことだけを目指すものではありません。見通しや日常の人の目、領域の認識を組み合わせ、防犯性を高める考え方として適切です。

選択肢4

(4)適当です。ソシオフーガルは、人同士の交流を起こしにくくするような配置を指します。視線が正面から合わずに座れるベンチは、一人で休みたい人や見知らぬ人同士が適度な距離を保つのに向きます。反対に、向かい合うなど会話が生じやすい配置はソシオペタルです。交流が少ない配置が常に悪いわけではなく、休憩、読書、会話など目的に応じて選びます。休憩スペースで他者を過度に意識せず過ごせるようにする本肢の意図は対応しています。

周辺知識

人の行動は、能力や性格だけで決まるのではなく、周囲の環境から受ける情報にも左右されます。初めての病院で似た廊下が続けば、普段は迷わない人も不安になります。大きな窓から見える庭や、分かれ道の案内などは、現在地を確かめる手がかりになります。ウェイファインディングは、看板を増やすだけでなく、空間そのものを理解しやすくすることです。
また、交流を増やすことが全ての場所で最善とは限りません。向かい合う椅子は会話に適しますが、静かに一人で休みたい人には負担になる場合があります。背を向けたり視線をずらしたりする席と、話せる席を選べるようにすることも有効です。人がどの程度他者と関わりたいかに対応する余地を設けます。
高齢者施設では、過度に複雑な動線を避け、居間や台所など生活の意味が分かる場を整えることが、本人の残された力を発揮する助けになります。行動・心理の用語を覚える際は、「道を探す」「道具を使う」「人と話す」「安心して暮らす」のような具体的な行動へ置き換えて理解しましょう。