学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅰ(計画) 問2
問題・正答・学習用解説
問題
日本の歴史的な建築物(所在地)に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は(3)です。飛雲閣は、桃山文化の特色を伝える三層の楼閣建築であり、平安時代の寝殿造りではありません。池に面した配置や複雑な屋根、上層をずらす非対称な構成という前半の特徴は飛雲閣に対応しますが、時代と様式の説明が入れ替わっています。
寝殿造りは、平安時代の貴族住宅の形式として知られ、主となる寝殿と周囲の建物を廊等で結び、庭や池と関係付ける構成です。一方、楼閣は複数の層を重ねた建物を指します。飛雲閣は、上へ行くほど小さくなる層の中心をずらし、唐破風など異なる屋根の形を組み合わせています。唐破風は中央が盛り上がり左右へ曲線で流れる破風の形で、装飾的な表情を生みます。
歴史建築には庭や池が付く例が多いため、池の存在だけで寝殿造りと判断できません。また飛雲閣の創建や移築の由来には伝承や研究上の議論があるので、伝説を確定した建設記録のように扱わず、本問では「平安の寝殿造りではなく、桃山文化を伝える楼閣」という対応を押さえます。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。豊平館は明治期の洋風ホテルとして建てられた木造2階建ての建築です。正面入口の上には半円形に張り出すバルコニーがあり、装飾的な柱で支えています。コリント式は柱頭に植物の葉などの装飾を持つ古典的な柱の形式です。洋風の外観だから石造とは限らず、日本の木工や漆喰等の技術を用いて西洋の形を表すこともできます。構造を示す「木造」と、見た目や構成を示す「洋風」を別の観点として理解します。
選択肢2
(2)適当です。臨春閣は江戸時代の数寄屋風書院造りで、大正期に横浜の三溪園へ移築されました。書院造りの座敷の構成に、茶の湯等の趣味や素材の扱いを取り込んだ建築です。欄間は鴨居の上部等に設ける開口や装飾の部分で、第三屋では雅楽の楽器を意匠に使います。縁は室の外周等の細長い床部分で、庭との間をつなぎます。移築した時代と元の建築の時代を混同せず、三つの棟の連なりと細部の趣向を結び付けます。
選択肢3
(3)不適当です。飛雲閣は三層を重ねた楼閣で、上層の中心をずらした非対称な構成や変化に富む屋根に特徴があります。桃山文化を伝える建築を、平安時代の寝殿造りとした部分が誤りです。非対称だから計画に秩序がないのではなく、池や庭から見た姿、層の大きさ、屋根の重なりを調整しています。寝殿造りは貴族住宅の配置・生活形式に関わる名称なので、池に面する三層建築をそのまま寝殿造りと呼ぶことはできません。
選択肢4
(4)適当です。投入堂は、山の崖のくぼみに長さの異なる柱で床を支えた懸造りの仏堂です。懸造りは、傾斜地や崖に床を張り出すため、谷側などへ長い支持材を立てる構成を指し、屋根から吊るすという意味ではありません。修験道は山岳での修行を重視する信仰で、険しい立地と建築の関係を理解する手がかりになります。平安時代後期の建築として位置付けられ、地形を平らに均すだけではない建て方の工夫が表れています。
周辺知識
日本建築の分類には、時代、構造、用途、屋根、室内の形式など、異なる軸があります。「木造」は材料・構造、「懸造り」は地形に対する支え方、「書院造り」は座敷や住まいの形式、「楼閣」は層を重ねた建物の形に関係します。そのため一つの建築に複数の説明が同時に当てはまります。
書院造りでは、床の間や付書院など座敷の設えが発達し、接客や儀礼の秩序が室内に表れます。数寄屋風の建築は、そうした構成に茶の湯の趣向や軽やかな材料の扱いを取り込むため、格調のある座敷と繊細な装飾が共存します。一方、明治の洋風建築では、西洋の柱やバルコニーの形を日本の職人技術で実現する例があります。
歴史を覚えるときは、平面と断面を簡単に想像すると有効です。寝殿と周囲の棟が庭を囲む形、階が上へ重なる楼閣、崖に柱を立てて水平な床をつくる懸造りでは、空間の成立の仕方が違います。固有名詞の対だけでなく、その形が何のために生まれたかを合わせて考えましょう。