学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅲ(法規) 問29
問題・正答・学習用解説
問題
以下の条件に該当する建築物の新築に係る設計に際して、建築基準法その他の法令の規定の適用に関する設計者の判断として、次の記述のうち、誤っているものはどれか。【条件】・立地:第一種住居地域容積率の最高限度300%・用途:1階の一部飲食店1階の一部及び2〜4階物品販売業を営む店舗(各階に売場を有する)・規模:地上4階建て(避難階は1階のみ)延べ面積4,000m²(各階の床面積は1,000m²)敷地面積1,300m²選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は3です。本問は、床面積の合計が1,500m²を超え、3階以上の階に売場がある物品販売店舗です。このような店舗では、多数の客が建物に不慣れな状態で利用するため、各階の売場等から避難階へ通じる二つ以上の直通階段を設け、これらを避難階段又は特別避難階段とする必要があります。
直通階段は、途中で別の階段へ乗り換えることなく避難階等へ通じる階段です。避難階段は、火災時にも経路を使えるよう、階段室の壁や出入口の戸等に防火上の構造を備えた階段です。本問は三つの直通階段を設けていますが、必要な最低数である二つだけを避難階段にすれば、残る一つを普通の階段にできるわけではありません。売場から1階へ通じる三つとも、当該規定に適合する階段とする必要があります。
普通の階段が煙の通り道になれば、他に二つの安全な階段があっても、客が危険な階段を選んだり、煙が上階へ広がったりするおそれがあります。選択肢3は階段の数を増やしたことと、その各階段に必要な構造を混同しています。数の最低条件と構造の条件を分け、追加した階段も対象になることを確認します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)正しい判断です。第一種住居地域では、店舗や飲食店などの用途部分について3,000m²の制限があります。本問は建物全体4,000m²が店舗・飲食店の用途なので、通常の用途制限の範囲を超えます。そのため、住居環境を害するおそれがないものとして特定行政庁の許可を受けることを検討します。容積率300%以内に収まるかという規模の問題とは別です。床面積に余裕があっても、用途制限で認められない大きさの店舗を自由に建てられるわけではありません。
選択肢2
(2)正しい判断です。敷地1,300m²に容積率300%なら通常の上限は3,900m²で、計画4,000m²との差は100m²です。省エネ性能向上計画の認定を受けると、省エネ措置のため通常より増える所定の床面積を、限度の範囲で容積率計算から除ける場合があります。そこで誘導基準への適合などを確認して認定を受ける判断は妥当です。太陽光発電設備があるだけで自動的に全ての超過が許されるのではなく、認定と不算入の対象・限度を満たすことが前提です。
選択肢3
(3)誤った判断です。3階以上に売場がある本問の店舗では、売場等へ通じる直通階段を二つ以上設け、避難階段又は特別避難階段とします。三つ設けた場合も、対象となる三つ全てに必要な構造を備えます。最低必要な二つだけを守り、追加の一つを普通階段としてよいわけではありません。階段が火災に弱かったり煙を上階へ広げたりする危険は、『余分に設けた階段』であっても生じるためです。階段の数量と構造を別々に確認します。
選択肢4
(4)正しい判断です。建物の一部が耐火等の構造を求める特殊建築物の用途となる場合、他の部分との間に所定の区画を求める規定がありますが、告示に定める警報設備等による例外もあります。本問の店舗と飲食店の区画について、火災の発生を感知して各階へ知らせる所定の自動火災報知設備を設ける方法は、その例外による対応です。単なる手動のベルや一室だけの警報とは違い、火災を早期に建物内へ伝えて避難の開始を助ける機能が必要です。
周辺知識
商業施設の避難では、利用者が普段の建物の構造をよく知らないこと、大勢が同時に動くこと、売場の商品が燃える可能性があることを考えます。そのため、逃げる階段を複数用意するだけでなく、階段を火や煙から守ること、火災を早期に知らせることなどを組み合わせます。ある安全対策を追加したから、別の規定が自動的に緩くなるわけではありません。
用途制限と容積率も別の制度です。用途制限は、その地域にどの使い道の建物をどの程度置けるかを調整します。容積率は、敷地に対する総床面積の規模を調整します。本問では第一種住居地域の店舗等の面積上限と、敷地1,300m²に対する容積率300%の上限を、それぞれ確認する必要があります。片方の許可・認定を受けても、他方の条件まで当然に解消するものではありません。
特例は、その規定が守る性能を別の方法で確保できる場合などに使います。省エネ措置のための床面積不算入は、省エネ設備の導入を妨げないためのものです。警報設備による区画の例外は、早期の避難開始などを確保するものです。制度名の『認定』『例外』だけで判断せず、何をどの範囲で緩和するかを具体的に確認しましょう。