資格ナビ一級建築士の演習へ

学科Ⅲ(法規)

一級建築士 令和6年度 学科Ⅲ(法規) 問30

問題・正答・学習用解説

問題

次の記述のうち、関係法令上、誤っているものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    「建築基準法」に基づき、工業地域内において、1日当たりの処理能力が6t以下の廃プラスチック類を破砕する産業廃棄物処理施設の用途に供する建築物は、特定行政庁の許可を受けずに新築することができる。
  2. (2)
    「景観法」に基づき、景観計画区域内において、建築物の外観を変更することとなる模様替をしようとする者は、原則として、あらかじめ、行為の種類、場所、設計又は施行方法等について、景観行政団体の長に届け出なければならない。
  3. (3)
    「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」に基づき、特別警戒区域内において、予定建築物が分譲住宅である開発行為をしようとする者は、原則として、あらかじめ、都道府県知事の許可を受けなければならない。
  4. (4)
    「宅地造成及び特定盛土等規制法」に基づき、特定盛土等規制区域内において、盛土で高さ3mの崖を生ずる工事をしようとする者は、原則として、当該工事に着手する日の30日前までに、都道府県知事に届け出なければならない。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

正解は4です。盛土規制法は、盛った土などが崩れて人や建物へ被害を及ぼすことを防ぐため、規制区域と工事の規模に応じて届出又は許可を求める法律です。特定盛土等規制区域では、一定規模の工事に着手30日前の届出を求めますが、より大きな工事は、届出だけではなく事前の許可が必要です。
盛土によって高さ2mを超える崖を生じる工事は、この区域の許可対象となる規模です。本問は盛土で高さ3mの崖を生じるので、2m超の条件を満たします。したがって、原則として知事の許可を受けなければならず、30日前までに届け出ればよいとする選択肢4は誤りです。
『30日前』という期限自体は届出制度にある数値ですが、まず本問がその届出だけでよい規模なのかを確認しなければなりません。例えば同じ3mでも、盛土なのか切土なのか、崖ができるのか、どの規制区域なのかにより基準が違います。手続の期限を暗記する前に、区域、工事の種類、高さ・面積から許可対象かを判定するのが正しい順序です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)正しい記述です。産業廃棄物処理施設は、通常、都市計画で位置が決まっていること等を求める建築基準法の制限がありますが、工業地域・工業専用地域には所定規模の例外があります。廃プラスチック類の破砕施設は1日6t以下がその範囲です。本問は工業地域で6t以下なので、この位置の制限に関する特定行政庁の許可なしで新築できます。廃プラスチックを燃やす焼却施設とは処理方法と基準値が違い、廃棄物処理法等の別の手続まで不要という意味でもありません。

選択肢2

(2)正しい記述です。景観計画区域では、建物の外観を変える模様替などが、原則として事前届出の対象になります。外観はまちの見え方に影響するため、工事前に行為の種類、場所、設計・施工方法等を把握し、景観計画との関係を確認するためです。提出先は景観行政団体の長です。室内だけの模様替と、屋根や外壁の見え方が変わる工事を区別します。また、建築確認が不要な規模の工事でも、景観法の届出が別に必要となる場合があります。

選択肢3

(3)正しい記述です。土砂災害特別警戒区域では、土砂の力で建物が壊れ、人命に著しい危害が生じるおそれがあります。そこで、分譲住宅の建築を目的とする開発行為などは、原則として知事の許可を必要とする特定開発行為です。開発して販売する側とは別の人が後に居住するため、危険な場所へ住宅が増える前に安全対策を確認します。自分が住むための住宅と、販売を目的とする分譲住宅の扱いを同じものと考えないことが大切です。

選択肢4

(4)誤りです。特定盛土等規制区域で、盛土により高さ2m超の崖を生じる工事は許可対象です。本問は3mなので該当し、届出だけで着手することはできません。特定盛土等規制区域には届出対象と許可対象の両方があるため、区域名を見て一律に30日前届出と決めないようにします。崖の高さが大きいと、崩れた土の量や到達する範囲などの危険が増すため、より確実な事前審査を行う許可の仕組みを適用します。

周辺知識

建物や土地の工事には、建築基準法以外にも複数の法律が関係します。建築基準法は建物の安全やまちの土地利用、景観法は良好な景観、土砂災害防止法は危険な区域で人が被害を受けることの防止、盛土規制法は盛土等による災害の防止を扱います。目的が異なるため、一つの法律の許可が不要でも、別の法律の手続が必要な場合があります。
土砂災害特別警戒区域と特定盛土等規制区域は、名称が似ていても同じ区域ではありません。前者では、自然の斜面崩壊や土石流等で住宅等が被害を受けるおそれに対応します。後者では、人が行う盛土等によって周囲へ危害が生じることを規制します。場所の危険を受ける側の建築と、危険を生み得る土地工事の違いを考えると整理できます。
盛土は土を盛り上げること、切土は地面を削ることです。同じ高さでも地盤の安定性や崩れ方が違うため、法定の規模基準も異なります。さらに、崖の有無や面積による条件もあります。本問では『特定盛土等規制区域』『盛土』『崖3m』の三条件から許可対象と決まるので、届出の30日前という数値に引きずられないことが重要です。