学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅲ(法規) 問28
問題・正答・学習用解説
問題
以下の条件に該当する建築物の新築に係る設計に際して、建築基準法その他の法令の規定の適用に関する設計者の判断として、次の記述のうち、誤っているものはどれか。【条件】・用途:物品販売業を営む店舗・規模:地上4階建て(避難階は1階)、高さ15m、延べ面積2,000m²・構造:木造(主要構造部に木材を用いたもの)・所有者となる建築主:民間事業者・設計者:「構造設計一級建築士」及び「設備設計一級建築士」いずれの資格も有していない一級建築士選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は4です。定期報告は、建物が完成後も安全な状態で使われているかを、定期的に専門家が調べ、その結果を特定行政庁へ報告する制度です。建物は、経年劣化、用途や内装の変更、防火戸の周りへの物の放置などによって、完成時とは違う危険が生じる場合があります。
本問の民間事業者が所有する4階建て・2,000m²の店舗は、定期調査報告の対象です。その報告時期は、建物の用途、構造、規模などに応じ、おおむね6か月から3年までの間隔の中で特定行政庁が定めます。設計者が建築主へ、一律に5年間隔でよいと説明するのは誤りです。
大切なのは、全国すべての建物が同じ周期というわけではないことと、5年という長い間隔をこの制度の通常の周期として採用できないことです。また、建築物そのものの調査と、建築設備や昇降機等の検査では、定期報告の時期や資格者の区分が違います。所有者に伝える際は、該当する建物と設備の対象範囲、それぞれの報告時期を確認する必要があります。構造や防火の設計が適法でも、完成後の管理の説明まで正しいとは限りません。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)正しい判断です。本問の木造4階建ては、所定の構造計算によって安全性を確かめる規模です。許容応力度等計算の方法では、部材に生じる力が限度以内か、階の変形が大きすぎないか、屋根材等が風で壊れないかに加え、各階の硬さや平面上のねじれやすさなどを確認します。列挙された剛性率は階ごとの変形しにくさの偏り、偏心率は重さの中心と抵抗する中心のずれに関わる指標です。柱やはり一本の強さだけでなく、建物全体のバランスも調べます。
選択肢2
(2)正しい判断です。通常火災終了時間80分は、通常の火災が終わるまで建物を支える等の性能を確保するための時間です。特定避難時間70分は、避難に必要な性能を確保する時間です。両方の条件がかかるため、柱・はりを長いほうの80分間の性能を持つ準耐火構造とすれば、時間の面で両者を満たします。70分と80分を平均して75分にすることはできません。二つの安全上の目的が重なった場合は、それぞれを満たす必要があります。
選択肢3
(3)正しい判断です。本問の規模・構造では、構造設計一級建築士の関与が必要なので、その資格を持たない設計者は、構造関係規定への適合確認を求めます。一方、設備設計一級建築士の関与を要する規模は、原則として3階以上かつ延べ面積5,000m²超です。本問は2,000m²でこの面積条件を満たしません。構造の専門資格者を必要とする建物が、必ず設備の専門資格者も必要とするわけではなく、それぞれの対象条件を独立して確認します。
選択肢4
(4)誤った判断です。建築物の定期調査報告の時期は、原則としておおむね6か月から3年までの間隔で、用途・構造・規模等に応じ特定行政庁が定めます。5年間隔でよいと伝えると、必要な時期を過ぎて調査・報告しない状態につながります。民間所有の本問の店舗では、所有者等が資格者に調査させ、結果を行政へ報告する制度です。設計時の確認済証や完成時の検査済証があっても、その後の定期報告が不要になるわけではありません。
周辺知識
総合問題は、同じ建物に複数の法律・規定を当てはめる問題です。本問では、木造4階という構造の条件、店舗という用途、2,000m²という規模、民間所有という所有者の条件、設計者が持つ資格が、それぞれ別の判断に使われます。まず条件を書き分け、構造計算、防火性能、資格者の関与、使用後の定期報告へ対応させると整理できます。
木造だから高い建物を一律に建てられないということではありません。火災中に必要な時間の性能を確保する構造方法などによって、法の要求を満たす設計が認められます。ただし、構造計算で地震に安全なことと、火災に対して必要な性能があることは別です。両方の安全を確認しなければなりません。
定期報告は、建物の安全を『完成時の一回の審査』で終わらせない仕組みです。例えば外壁が劣化して落下する、避難通路へ物が置かれる、防火設備が故障するなどの変化は、完成後に起こります。所有者・管理者が継続して管理できるよう、対象となる調査や検査、周期、必要な資格者を設計者から正確に伝えることも重要です。法律ごとの数値を一つの表に混ぜず、目的ごとに区別しましょう。