学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅲ(法規) 問27
問題・正答・学習用解説
問題
次の記述のうち、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は1です。建築物の省エネ基準は、空調、換気、照明、給湯などで使うエネルギーを抑えるための性能を求めるものです。令和6年度の出題時点では、非住宅部分が300m²以上となる所定の新築や、非住宅部分の増築面積が300m²以上となる増築には、原則として省エネ基準への適合義務があります。
本問は、特定建築物について、非住宅部分の増築面積が300m²以上という条件です。したがって、建築主は対象となる非住宅部分を省エネ基準に適合させなければなりません。選択肢1は、これを『適合するよう努めなければならない』という努力義務へ弱めた点が誤りです。努力して検討したというだけでは、義務への適合を満たしません。
一方、大量に住宅を供給する事業者を対象に、より高い省エネ性能へ向上させる住宅トップランナー制度では、所定の基準に適合させる努力義務が定められています。個々の建築行為についての最低限の適合義務と、供給する住宅全体の性能向上を促す制度は別です。対象の用途・規模と、どの制度の基準を問うているかを先に区別します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)誤りです。令和6年度の規定では、所定の非住宅部分の増築が300m²以上なら、省エネ基準への適合は努力義務ではなく義務です。例えば非住宅の増築部分が300m²ちょうどでも、『以上』に該当します。建築主が検討したが適合しなかった、というだけでは足りません。住宅トップランナー制度の努力義務と、個別の特定建築行為に対する適合義務を混同した記述です。令和7年以降の対象拡大を、この過去問の規模条件へ遡って当てはめないようにします。
選択肢2
(2)正しい記述です。分譲型一戸建て規格住宅を年間150戸以上新築して分譲する事業者は、住宅トップランナー制度の対象です。分譲型は、事業者が住宅を建てて購入者へ売る形を指します。多数の住宅を同じ仕様などで供給する事業者の性能を引き上げると、多くの住宅の省エネに効果が及ぶため、より高い基準への適合を促します。本問の150戸という戸数と、基準への適合が努力義務であることはいずれも正しい内容です。
選択肢3
(3)正しい記述です。分譲型規格共同住宅等では、年間1,000戸以上を新築して分譲する事業者が対象となり、所定の高い省エネ性能の基準へ適合させる努力義務があります。共同住宅は一棟に複数戸が入るため、ここで数えるのは棟数ではなく住宅の戸数です。例えば100戸の共同住宅を10棟供給すれば1,000戸になります。一戸建て分譲の150戸と、共同住宅等の1,000戸を、供給形態の違いに対応させて整理します。
選択肢4
(4)正しい記述です。建築物エネルギー消費性能向上計画の認定は、新築だけでなく、既存建物の空調設備等の改修についても申請できます。空調設備等を高効率なものへ改めれば、建物の形を大きく変えなくても、使うエネルギーを減らせる場合があるためです。認定を受けられるかは計画が所定の基準に適合することなどによりますが、設備の改修だから申請対象外とはなりません。『申請することができる』という任意の手続である点も読み取ります。
周辺知識
省エネの性能は、建物の外側と内部の設備を組み合わせて考えます。断熱性能が高い壁や窓は、冬の暖かさが外へ逃げたり、夏の熱が中へ入ったりすることを抑えます。効率のよい空調、照明、給湯設備は、必要な機能を少ないエネルギーで実現します。設備だけを高効率にしても、外へ熱が逃げやすい建物では、空調に多くのエネルギーが必要になることがあります。
法制度には、一定の建築行為で最低限守る適合基準、より高い性能へ向上させるための基準、優れた計画の認定など、異なる役割があります。『省エネに関する法律の話』とひとまとめにすると、義務と努力義務、必須の手続と任意の認定を取り違えます。対象が個別の建物か、年間多数の住宅を供給する事業者かも確認しましょう。
また、省エネ法は対象や基準が段階的に改正されています。本問は令和6年度時点の非住宅300m²以上の適合義務と、分譲一戸建て150戸・分譲共同住宅等1,000戸という事業者区分を扱います。現在の新築住宅の制度をそのまま過去問へ置き換えず、出題時点の制度を説明できるようにしておくことが重要です。