学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅲ(法規) 問26
問題・正答・学習用解説
問題
床面積の合計が2,000m²のホテルを新築しようとする場合における次の記述のうち、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は3です。バリアフリー法は、高齢者や障害のある人などが建物へ入り、目的の場所まで移動して利用できるようにする法律です。本問のホテルは床面積の合計2,000m²なので、特別特定建築物として、建築物移動等円滑化基準への適合義務を受けます。『円滑化』は、段差や狭さなどの障害を減らして、移動や利用をしやすくするという意味です。
一方、法律には、建築や維持保全の計画を作り、所管行政庁の認定を受ける制度もあります。これは所定の誘導的な基準を満たす計画について認定を受ける制度で、建築主等が申請『することができる』ものです。すべての対象建築物について必ず認定を申請しなければならないわけではありません。
したがって、計画認定の申請を義務とした選択肢3が誤りです。建築物として最低限守るべき基準への適合義務と、より利用しやすい計画として認定を受ける任意の制度を混同しないことが重要です。認定を申し込まない場合でも、本問のホテルで客室や経路などの義務基準を省略できることにはなりません。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)正しい記述です。出題時点の基準では、客室総数の1%以上を車椅子使用者用客室として設けます。120室の1%はです。客室を0.2室だけ設けることはできず、『以上』を満たすには整数の2室へ切り上げます。1室ではで約0.83%となり、1%に届きません。車椅子使用者用客室は、入口や室内、便所・浴室等で利用に必要な空間や構造を備えるため、通常の部屋を数だけ指定すればよいわけではありません。
選択肢2
(2)正しい記述です。車椅子使用者用駐車施設は、車から建物の利用居室までの移動距離ができるだけ短くなる場所に設けます。利用居室とは、客室、受付、飲食のための室など、人が利用する目的の場所です。駐車区画の幅が十分でも、入口まで大きく遠回りしなければならない配置では負担が増えます。幅や段差といった寸法の基準だけでなく、駐車から室内利用までを連続した移動として捉え、経路の長さも配慮する必要があります。
選択肢3
(3)誤りです。特定建築物の建築等・維持保全の計画認定は、申請できる任意の制度です。所管行政庁へ必ず認定を申請するという義務ではありません。本問の2,000m²のホテルに移動等円滑化基準への適合義務があることと、この任意の認定制度は別です。『対象建物だから基準を守る必要がある』ことから、『認定を受けなければ建てられない』と結論を広げないようにします。法律の『できる』と『しなければならない』の違いを確認します。
選択肢4
(4)正しい記述です。移動等円滑化経路となるエレベーターの乗降ロビーは、幅と奥行きがそれぞれ150cm以上必要です。車椅子で到着した人が向きを変え、戸の前へ進み、かごから出て方向を調整するための空間です。面積だけが2.25m²あればよいという条件ではありません。例えば幅100cm、奥行き225cmでは面積が同じでも幅が不足します。車椅子の動作に必要な形を確保するため、二方向それぞれの寸法を確認します。
周辺知識
バリアフリーは、建物の一部にスロープを付ければ完了するものではありません。道路や駐車場から入口へ進み、廊下やエレベーターを使って目的の部屋へ入り、便所などを利用するまでの一連の行動を考えます。途中に一段の段差や通れない戸があるだけでも、その先の設備を利用できなくなることがあります。このため、法律は移動等円滑化経路という、連続した経路として基準を定めています。
寸法の理由を想像すると覚えやすくなります。駐車区画の横には乗り降りや車椅子の操作をする空間が必要で、エレベーターロビーには方向を変える空間が必要です。客室ではベッドの近くへ寄る、浴室や便所へ入るといった動作も必要です。同じ床面積でも、細長い形や家具の配置によって使いにくくなるため、幅や奥行きなどの条件が設けられます。
法律上の義務基準と、認定のための誘導的な基準も分けて整理しましょう。義務の対象は建物の用途や規模などで決まり、認定は建築主等が申請する別の仕組みです。また、自治体の条例で対象規模や基準が加わる場合がありますが、本問では示された法令条件で判断します。数字の丸めは必要量を下回らないよう、1.2室を2室とするように考えます。