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学科Ⅲ(法規)

一級建築士 令和6年度 学科Ⅲ(法規) 問23

問題・正答・学習用解説

問題

建築士事務所の開設者と、当該建築士事務所に属する建築士(以下「所属建築士」という。)との関係に関する次の記述のうち、建築士法上、誤っているものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    建築士事務所の開設者は、所属建築士の監督及びその業務遂行の適正の確保に関する技術的事項を自ら総括しなければならない。
  2. (2)
    建築士事務所の開設者は、設計等を委託しようとする者の求めに応じて閲覧させる書類として、所属建築士の氏名及び業務の実績を記載したものを当該建築士事務所に備え置かなければならない。
  3. (3)
    建築士事務所の開設者は、当該建築士事務所を管理する専任の所属建築士を置かなければならない。
  4. (4)
    建築士事務所の開設者は、設計受託契約を建築主と締結しようとするときは、あらかじめ、当該建築主に対し、所属建築士から、設計受託契約の内容について、これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならない。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

正解は1です。建築士事務所の開設者は、その事務所を設けて業務を営む側です。一方、管理建築士は、事務所の技術的な運営をまとめる専門家です。開設者が必ず建築士とは限らず、会社などが開設者になることもあるため、法律は事務所ごとに専任の管理建築士を置く仕組みを設けています。
所属建築士の監督や業務が適正に行われることの確保など、技術的事項を総括するのは管理建築士です。例えば、難しい構造の建物を設計する仕事を受ける際に、事務所の人数や専門性で対応できるか、誰を担当させるか、必要な期間はどれくらいかを技術面から整理します。
選択肢1は、これらを開設者が『自ら』総括しなければならないとした点が誤りです。開設者が所定の資格・要件を満たして管理建築士を兼ねる場合はありますが、両者が常に同じという制度ではありません。別の者である場合、管理建築士は開設者へ必要な意見を述べ、開設者はその意見を尊重します。事業の運営責任と、専門技術を総括する役割を区別することが要点です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)誤りです。所属建築士等の監督や適正な業務遂行を確保する技術的事項を総括するのは、管理建築士です。開設者本人が必ずその業務を直接行うという規定ではありません。例えば、建築士資格を持たない会社代表が事務所を開設しても、必要な要件を備えた専任の管理建築士を置いて技術的な管理を行います。開設者と管理建築士が同一人物の事務所もありますが、役割が一致する場合があることと、法律上いつも同じ役割であることは別です。

選択肢2

(2)正しい記述です。設計等を依頼しようとする人が事務所を選べるよう、所属建築士の氏名や業務実績などを記載した書類を備え、求めに応じて閲覧させます。依頼者は専門家の能力や経験を外から判断しにくいため、誰が所属し、どのような業務をしてきたかという情報が役立ちます。これは契約が成立した後だけの義務ではありません。これから依頼先を検討する人への情報提供であり、営業上の説明だけに頼らず比較できるようにする制度です。

選択肢3

(3)正しい記述です。開設者は、事務所を管理する専任の所属建築士を置かなければなりません。この管理建築士は、所定の実務経験と管理建築士講習の修了などの要件を備えた者です。名前だけを登録して実際の業務を把握しない状態では、事務所の技術的管理を果たせません。受けられる業務量、担当者の配置、所属者の監督などを責任を持って総括できるよう、事務所ごとの専任を求めています。開設者が建築士でも、この管理体制の確保は必要です。

選択肢4

(4)正しい記述です。設計契約を結ぶ前に、開設者は所属建築士など所定の建築士から、契約内容の重要事項を記載した書面を交付して説明させます。建築主が、設計の内容、担当者、報酬などを理解した上で依頼を決められるようにするためです。契約後に書類だけ渡せばよいわけではなく、契約前の説明であることが重要です。また、建築士でない営業担当者が独自に説明するだけでは、この法定の重要事項説明を代替できません。

周辺知識

専門業務を扱う事務所では、仕事を受注する経営面と、仕事を適切に遂行できるか判断する技術面を両立させる必要があります。受注額が大きくても、担当できる人数や能力が不足していれば、確認の時間がなくなり、設計や監理の質が下がるおそれがあります。管理建築士が受託可能な業務量や期間、担当者の配置を総括するのは、このような問題を防ぐためです。
開設者と管理建築士が異なる場合、技術上の必要性を経営側へ伝える仕組みも必要です。管理建築士は必要な意見を述べ、開設者はそれを尊重します。例えば、複雑な設備の設計に外部の専門家が必要であるという意見は、単なる好みではなく、業務の適正を確保するための判断です。
依頼者への情報提供には、契約前に事務所の実績等を閲覧できること、個別の契約前に重要事項の説明を受けることがあります。前者は事務所を選ぶため、後者は具体的な仕事の内容を理解して契約するためです。どちらも専門知識の差によって依頼者が不利にならないようにする役割があります。誰の義務か、誰が実際に行うか、いつ行うかを分けて読むと整理できます。