学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅲ(法規) 問21
問題・正答・学習用解説
問題
建築士が行う「工事監理」に関する次の記述のうち、建築士法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は4です。工事監理は、建築士が工事を設計図書と照合し、そのとおりに実施されているかを確かめる業務です。工事現場の作業員の配置や工程を管理する施工者側の『施工管理』とは役割が違います。建築主から依頼を受けた建築士は、計画どおりの建物が造られているかを専門家として確認します。
図面や仕様書と違う工事を見つけた場合は、まず直ちに施工者へその違いを指摘し、設計図書どおりに実施するよう求めます。それでも施工者が従わない場合、建築士法が定める報告先は『建築主』です。建築主は工事を発注して建物を造らせる側であり、施工者との契約に基づく対応を判断する立場にあります。
例えば、図面で指定された材料と違うものが使われ、是正を求めても直されないなら、その事実を建築主へ伝える必要があります。選択肢4は報告先を『特定行政庁』とした点が誤りです。違反に関する行政の権限の話と、工事監理者が依頼者である建築主へ果たす報告義務を混同しないことが要点です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)正しい記述です。延べ面積300m²超の新築に係る工事監理の契約では、担当する建築士や監理の状況を報告する方法など、法定の事項を記載した書面を契約当事者が相互に交付します。誰が、どの範囲を、どのように確認し、依頼者へどう伝えるかを契約時に明確にするためです。単に料金だけ合意しても、監理の内容が曖昧なら紛争や見落としにつながります。300m²を『超える』という規模条件と、当事者双方が交付することを確認します。
選択肢2
(2)正しい記述です。工事監理の報酬については、国土交通大臣が定める基準に準拠した委託代金で契約するよう努める義務があります。十分な監理を行うために必要な業務量や経費を考慮し、適切な報酬を設定する趣旨です。ただし、基準から計算した金額だけでしか契約できないという一律の強制価格ではありません。『努めなければならない』という努力義務と、『その価格で契約しなければならない』という直接の義務を区別して読みます。
選択肢3
(3)正しい記述です。委託者から請求されたときに免許証又は免許証明書を提示することで、依頼先が資格を持つ建築士であることを確認できます。また、工事監理を終えたときは、直ちにその結果を工事監理報告書によって建築主へ報告します。監理を実施したという口頭の一言だけでは、何を確認し、どのような結果だったかが残りません。業務開始前後の本人・資格の確認と、終了時の結果の文書報告は、それぞれ依頼者を保護するための義務です。
選択肢4
(4)誤りです。施工者が設計図書どおりの工事をするよう求められても従わない場合、報告先は建築主です。工事監理者は、違いを見つけた時点で直ちに施工者へ指摘し、是正を求め、その結果を踏まえて建築主へ伝えるという流れで対応します。特定行政庁は法令違反への行政上の措置を扱いますが、この条文の報告先ではありません。問題文の『従わないとき』以降を、契約上の発注者へ知らせる義務として捉えると、相手の取り違えに気付けます。
周辺知識
建築工事に関わる三者を整理しましょう。建築主は、建物の新築等を発注する側です。工事施工者は、材料や作業員を手配して実際に工事を行う側です。工事監理者は、工事が設計図書どおりかを確かめる側です。同じ現場に関わっていても、責任の内容が違います。工事監理者が施工者の代わりにすべての作業を指揮する制度ではありません。
設計図書には、形や寸法を表す図面だけでなく、材料の品質や施工方法を示す仕様書も含まれます。図面の線どおりの位置に柱があっても、材料や接合方法が違えば、設計図書どおりの工事とはいえません。監理では、建物の安全や性能に関わる事項を、適切な時期と方法で確認して記録します。
契約の書面、免許証の提示、終了時の報告は、専門知識を持たない建築主が業務の内容と結果を把握するために重要です。特に問題が起きたときは、誰へ何を伝えるかを曖昧にしないことが必要です。施工者への是正要求と、従わない場合の建築主への報告を分けることで、建築主が状況を知らないまま工事が進むことを防ぎます。