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学科Ⅲ(法規)

一級建築士 令和6年度 学科Ⅲ(法規) 問20

問題・正答・学習用解説

問題

次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    建築工事等における根切り及び山留めについては、その工事の施工中必要に応じて点検を行い、山留めを補強し、排水を適当に行う等これを安全な状態に維持するための措置を講ずるとともに、矢板等の抜取りに際しては、周辺の地盤の沈下による危害を防止するための措置を講じなければならない。
  2. (2)
    模様替の工事中に使用されている共同住宅について、特定行政庁により、避難上著しく支障があると認められた場合には、使用制限が命ぜられることがある。
  3. (3)
    建築基準法第3条第2項の規定により排煙設備の規定の適用を受けない建築物について、2以上の工事に分けて増築を含む工事を行う場合、特定行政庁による工事に係る全体計画の認定を受けていれば、いずれの工事の完了後であっても、現行基準に適合するように排煙設備を設置するための改修を行う必要はない。
  4. (4)
    建築基準法令の規定に違反することが明らかな増築の工事中の建築物については、緊急の必要があって所定の手続によることができない場合に限り、建築監視員により、これらの手続によらないで、当該工事の請負人等に対して、当該工事の施工の停止が命ぜられることがある。

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

正解は3です。既存不適格の建物は、建てた後に法令が変わるなどして、現在の基準に合わなくなった建物です。増築等を行う際には、既存部分も含めて現行基準への対応が必要になる場合があります。しかし、建物を使い続けながら改修するなどの事情があると、すべてを一度の工事で直すことが難しいこともあります。
そこで、全体計画認定では、増築等を含む工事を二つ以上に分けて行い、計画的に適合させることを認めます。重要な条件は、全ての工事が終わった時点で建物と敷地が建築基準法令に適合すること、途中の各工事の完了後も危険性等を増大させないことです。
本問の排煙設備も、認定を受けたから永久に改修不要になるのではありません。例えば、先に増築部分を施工し、その後に既存部分の排煙設備を整える計画であれば、最後の工事の完了時までには計画どおり適合させる必要があります。選択肢3は『いずれの工事の完了後でも改修不要』とした点が誤りです。認定は改善の順序と期間を調整する仕組みであり、改善そのものを免除する制度ではありません。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)正しい記述です。根切りは基礎や地下室のために地盤を掘る作業、山留めは掘った周囲の土が崩れないように支える設備です。工事中は地盤や水の状態が変わるので、点検、補強、排水によって安全な状態を保ちます。矢板は土を支えるために打ち込む板状の部材で、抜く際にも土が動いたり隙間ができたりし、周囲が沈下するおそれがあります。このため、設置中だけでなく撤去時も、隣接地や建物への危害を防ぐ措置が必要です。

選択肢2

(2)正しい記述です。共同住宅を使いながら模様替する場合、階段の閉鎖や防火設備の取り外しなどで、住民が逃げられなくなる危険があります。特定行政庁が避難上著しく支障があると認めると、使用制限などを命じることがあります。完成したときに適法になる予定であっても、工事中に人が安全に利用できるとは限りません。居住者がいる既存建物では、工事の段階ごとに避難経路が確保されているかを確認する必要があります。

選択肢3

(3)誤りです。全体計画認定は、複数の工事を順に進め、最後には法令に適合させることを前提とします。排煙設備の不適合を、途中段階で一定期間残すことが認められても、最後まで直さなくてよいという意味ではありません。また、途中の段階でも危険性を増大させない条件があります。『認定があるから現行基準への対応を全部免除』と捉えるのではなく、『いつ、どの部分を改修して最終的に適合させるかを認める制度』と理解すると判断できます。

選択肢4

(4)正しい記述です。建築監視員は、違反建築に対して法律で定められた権限を行使する職員です。明らかな違反工事が進み、緊急のため通常の手続を取る時間がない場合には、所定の手続によらず施工の停止を命じることがあります。違反状態や危険が拡大する前に工事を止めるための例外です。いつでも自由に手続を省けるという規定ではなく、違反が明らかで、緊急の必要があり、通常の手続によれないという条件を満たす場合に限られます。

周辺知識

建物の安全は、完成時だけでなく、施工中と使用中にも確保する必要があります。工事前の図面が適法でも、掘削中に隣の地盤を崩したり、改修中に住民の階段を塞いだりすれば、人や周囲の建物へ危害を及ぼします。このため法律は、掘削・山留めの安全管理、工事中の使用制限、違反工事の停止など、異なる場面に応じた措置を用意しています。
既存不適格と違反も区別しましょう。既存不適格は、当初は適法でも後の法改正等で現在の基準に合わなくなった状態です。違反は、適用される法令に反した状態です。古い建物が現行基準と違うというだけで、直ちに違反建築物と決めつけることはできません。ただし、既存不適格であっても増築等の際に現行基準への適合が必要になる場合があります。
全体計画認定は、この改修を現実的な段階に分けるための制度です。工事を分ける合理的な事情、最終的な適合、途中の危険を増やさないことが重要になります。改善を先送りできることと、改善をしなくてよいことは違います。問題文で『すべて』『いずれも』『必要はない』などの強い表現があれば、制度の到達点や条件を消していないかを確認しましょう。