学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅲ(法規) 問16
問題・正答・学習用解説
問題
図のような敷地において、建築基準法上、新築することができる建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積の最大のものは、次のうちどれか。ただし、図に記載されているものを除き、地域、地区等及び特定行政庁の指定、許可等は考慮しないものとする。
選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は1の640m²です。最初に敷地面積を確定します。南側の幅2mの道は、建築基準法42条2項による道路です。通常なら中心線から両側へ2mずつ確保しますが、反対側が川の場合は川側へ広げられないため、川の側の境界線から敷地側へ4mの線を道路境界とみなします。現状の幅が2mなので、敷地側で2mの後退が必要です。
敷地の奥行きは次のとおりです。
商業地域側も準住居地域側も、次のように計算します。
次に前面道路幅員による容積率を計算します。幅の広い西側8mの道路を用い、商業地域は次のとおりです。
準住居地域は次のとおりです。
指定容積率の5.0、4.0とそれぞれ比較すると、いずれも道路による4.8、3.2のほうが小さいので、こちらを使います。
したがって最大の延べ面積は、次のように計算します。
道路後退で使えなくなる敷地部分を除くことと、二つの地域ごとに指定容積率と道路制限を比較することの両方が必要です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)640m²が正解です。川に接する2項道路のため敷地を2m後退させると、二つの用途地域に属する有効な敷地はそれぞれ80m²です。西側8m道路による容積率は商業地域4.8、準住居地域3.2で、いずれも指定容積率より厳しくなります。各地域の上限を床面積に直して384m²と256m²を足すと640m²です。複数の地域にまたがる敷地では、一方の地域の容積率を敷地全体へ適用せず、地域ごとの面積に応じて合計します。
選択肢2
(2)720m²にはなりません。この値は、南側の道路を通常の中心線から両側へ広げるものとして、敷地の後退を1mとした場合に、各地域90m²へ4.8と3.2を掛けると生じます。しかし本問は道路の向こう側が川です。川側の境界から4mを確保するため、現況2mに加えて敷地側に2m必要です。後退を1m少なく見積もると、全体で20m²余分な土地を容積率計算の敷地に含め、床面積を大きく計算してしまいます。
選択肢3
(3)800m²にはなりません。この値は、道路後退前の面積を商業地域100m²、準住居地域100m²のままとし、と計算すると得られます。道路幅による容積率を正しく選べても、敷地面積が誤っているため結果は適合しません。2項道路の後退部分は、まだ舗装していなくても容積率計算の敷地には含めません。土地の所有面積と、建築基準法の規模計算で利用できる敷地面積を区別します。
選択肢4
(4)810m²にはなりません。例えば1mだけ後退した各90m²に、指定容積率5.0と4.0をそのまま掛けると、次のように計算します。
しかし本問では後退は2m必要であり、容積率も道路幅員による4.8と3.2へ制限されます。敷地面積と適用容積率の二つを大きく見積もった値です。図に指定容積率が書かれていても、前面道路が12m未満の場合は、道路から決まる限度との比較を忘れないようにします。
周辺知識
容積率は、敷地面積に対して建物の床面積をどれだけ確保できるかを表す比率です。例えば容積率400%は4.0を意味し、敷地100m²なら計算対象の延べ面積は400m²までです。建物の各階が同じ大きさなら、100m²の床を4層分というイメージですが、実際の形や階数は高さ制限なども併せて決まります。
前面道路幅員による容積率制限は、道路が細い場所に過大な床面積を集中させないための仕組みです。交通や周辺環境への負担に配慮し、指定容積率が高くても、道路幅に応じて建物の規模を抑える場合があります。本問は商業地域500%、準住居地域400%の指定でも、8m道路によって480%、320%となります。
2項道路の後退は、狭い道を将来必要な幅へ近づけるための扱いです。通常の中心振分けと、片側が川・崖地等の場合の扱いを図で確認しましょう。川側に必要な土地を確保できないため、反対側へ負担が寄るのが本問です。敷地を確定し、地域ごとの容積率を選び、最後に床面積を足す順序を守ると、図が複雑でも計算を分解できます。