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学科Ⅲ(法規)

一級建築士 令和6年度 学科Ⅲ(法規) 問13

問題・正答・学習用解説

問題

建築物の構造計算に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    建築物の実況によらないで、柱の垂直荷重による圧縮力を計算する場合、教室で柱の支える床の数が2のときは、床の積載荷重として採用する数値を1,995N/m²とすることができる。
  2. (2)
    木材の繊維方向における、長期に生ずる力に対する引張りの許容応力度は、原則として、木材の種類及び品質に応じて国土交通大臣が定める引張りに対する基準強度の\(\frac{1.1}{3}\)の数値である。
  3. (3)
    ステンレス鋼の高力ボルトの引張りに対する材料強度は、鋼材等の種類及び品質に応じて国土交通大臣が定める基準強度と同じ数値である。
  4. (4)
    鋼材の突合せ溶接における、溶接継目ののど断面に対する、短期に生ずる力に対するせん断の許容応力度は、溶接される鋼材の種類及び品質に応じて国土交通大臣が定める溶接部の基準強度の\(\frac{1}{1.5\sqrt{3}}\)の数値である。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

正解は4です。許容応力度は、材料の一定の断面積に対して、設計上どこまでの力を受け持たせてよいかを示す値です。突合せ溶接は、鋼材の端同士を向かい合わせて溶かし合わせる接合方法です。その溶接部がずれるように力を受けるときのせん断について、本問は長期用と短期用の許容応力度を取り違えています。
溶接部の基準強度をFとすると、長期のせん断許容応力度は F1.53\displaystyle \frac{F}{1.5\sqrt{3}} です。これに対して、短期の値は長期の1.5倍なので、F3\displaystyle \frac{F}{\sqrt{3}} となります。選択肢4の係数には1.5が分母に残っており、長期の値を短期の値として述べています。
長期は建物の重さなど、継続して作用する力を考える区分です。短期は地震や暴風など、一時的に生じる力を含む区分です。この区別により、同じ材料・同じ接合部でも設計に採用する限度が変わります。また、引張りとせん断でも値が違うので、材料、力の種類、長期・短期の順に条件を整理して表や式を選ぶ必要があります。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)正しい記述です。教室について柱の圧縮力を計算するための積載荷重は、通常2,100N/m2\displaystyle \mathrm{N}/\mathrm{m}^{2}です。柱が支える床が複数ある場合、すべての床が同時に最大限混雑するとは限らないことを考慮し、所定の低減係数を使えます。2床を支えるときの係数は0.95なので、2,100×0.95=1,995 N/m2\displaystyle 2{,}100\times0.95=1{,}995\,\mathrm{N}/\mathrm{m}^{2}です。ただし、これは柱の垂直荷重による圧縮力を求めるための扱いです。床そのものを設計する荷重まで同じように減らすことはできません。

選択肢2

(2)正しい記述です。木材の繊維方向は、木の幹が伸びる方向に沿った方向です。その方向へ引っ張る力に対する長期の許容応力度は、原則として基準強度の1.13\displaystyle \frac{1.1}{3}です。例えば基準強度が30N/mm2\displaystyle \mathrm{N}/\mathrm{mm}^{2}なら、長期許容応力度は11N/mm2\displaystyle \mathrm{N}/\mathrm{mm}^{2}となります。木材は力を長く受けると変形が進む性質などがあるため、基準強度をそのまま長期の設計値には使いません。また、繊維を横切る方向の力とは性能が違うので、方向の条件も読み落とさないようにします。

選択肢3

(3)正しい記述です。ここで尋ねているのは、ステンレス鋼の高力ボルトの引張りに対する『材料強度』です。法が定めるこの値は、種類・品質に応じた基準強度と同じ数値になります。許容応力度は設計上の力を抑える限度、材料強度は所定の耐力計算に使う強度という違いがあります。『強度』という言葉を見て、長期許容応力度で使う低減係数を機械的に掛けてはいけません。何の計算用の値かを先に確認します。

選択肢4

(4)誤りです。突合せ溶接ののど断面は、溶接部の強さを評価するときに用いる有効な断面です。この断面に対する短期のせん断許容応力度は、溶接部の基準強度Fを用いて F3\displaystyle \frac{F}{\sqrt{3}} です。選択肢の F1.53\displaystyle \frac{F}{1.5\sqrt{3}} は長期の値で、短期ではその1.5倍となります。分母に1.5があると値が小さくなるため、式の文字だけでなく、短期値が長期値の何倍かという大小関係からも取り違えを確認できます。

周辺知識

構造計算の数字は、荷重、応力度、強度を分けると理解しやすくなります。荷重は、建物や人、家具などから作用する力です。応力度は、その力を材料の断面積当たりに直した値で、同じ力でも細い部材ほど大きくなります。強度は、材料がどの程度の応力度に耐えられるかを示す性質です。許容応力度は、その強度や力の継続時間などを考慮して定める設計上の限度です。
例えば同じ教室でも、床を設計する場合、床を支えるはりや柱を設計する場合、地震力を計算する場合では、法定の積載荷重が同じとは限りません。一つの床には局所的に多くの人が集まる可能性があり、複数の階をまとめて支える柱とは荷重のかかり方の考え方が違うためです。
また、力には圧縮、引張り、せん断などの種類があります。圧縮は押し縮める力、引張りは引き伸ばす力、せん断は断面をずらすように作用する力です。材料の種類だけで表の値を選ぶと、別の力の種類や長期・短期の欄を使ってしまいます。本問では、突合せ溶接、せん断、短期という三条件をそろえることが、正しい式へたどり着く手順です。