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学科Ⅲ(法規)

一級建築士 令和6年度 学科Ⅲ(法規) 問11

問題・正答・学習用解説

問題

建築物の構造計算に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。ただし、高さが4mを超える建築物とする。

選択肢

  1. (1)
    鉄筋コンクリート造の建築物において、保有水平耐力計算によって安全性を確かめる場合、構造耐力上主要な部分である柱の帯筋比は、0.2%以上としなくてもよい。
  2. (2)
    鉄筋コンクリート造の建築物において、保有水平耐力計算によって安全性を確かめる場合、耐力壁の厚さは、12cm以上としなくてもよい。
  3. (3)
    鉄骨造の建築物において、限界耐力計算によって安全性を確かめる場合、高力ボルト、ボルト又はリベットの相互間の中心距離は、その径の2.5倍以上としなくてもよい。
  4. (4)
    鉄筋コンクリート造の建築物において、限界耐力計算によって安全性を確かめる場合、柱の出すみ部分の異形鉄筋の末端は、かぎ状に折り曲げて、コンクリートから抜け出ないように定着しなくてもよい。

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

正解は2です。構造の安全を確かめる方法には、部材の寸法や鉄筋の配置を具体的に定める『仕様規定』と、力や変形を計算して安全を確認する方法があります。詳しい構造計算を行う場合には、一部の仕様規定を適用しない扱いがありますが、すべての寸法規定がなくなるわけではありません。
鉄筋コンクリート造の耐力壁は、地震や風などの力を受ける役割を持つ壁です。保有水平耐力計算を行う場合でも、耐力壁の厚さを12cm以上とする規定は残ります。保有水平耐力計算は、大きな地震を受けたときに建物が最終的にどの程度の水平力へ耐えられるかを確かめるものですが、この計算をするだけで厚さ12cmの条件を省けることにはなりません。
選択肢2は、計算をしたから『12cm以上としなくてもよい』と述べた点が誤りです。一方、柱の帯筋比など、省略可能な規定もあります。計算方法の名前だけで判断せず、その方法について省略が認められた条項に、問題の規定が含まれているかを個別に確認する必要があります。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)正しい記述です。帯筋は、柱の縦方向の主筋を囲むように配置する鉄筋で、主筋のはらみ出しやコンクリートの崩れを抑えます。帯筋比は、その横向きの鉄筋量の割合です。保有水平耐力計算によって安全性を確かめる場合、帯筋比0.2%以上という当該仕様規定は適用除外になります。ただし、帯筋を不要とする意味ではありません。柱がせん断力で壊れることなどを防ぎ、必要な耐力や変形能力を確保できるように設計します。

選択肢2

(2)誤りです。鉄筋コンクリート造の耐力壁の厚さ12cm以上という規定は、保有水平耐力計算を行っても残ります。計算で地震時の耐力を示したことだけを理由に、例えば厚さ10cmの耐力壁へ変更することはできません。厚さ、配筋間隔、開口部の補強などは同じ耐力壁の規定に並んでいても、計算方法に応じた適用除外の範囲が同一とは限りません。『耐力壁の規定全部』とまとめず、厚さを定める部分が除外されるかを確認します。

選択肢3

(3)正しい記述です。ボルト等の中心間距離は、接合部の穴が近づきすぎて鋼材が裂けることなどを防ぐための寸法です。通常の仕様では径の2.5倍以上としますが、限界耐力計算によって安全性を確かめる場合、この中心間距離の仕様規定は適用除外になります。例えば径20mmなら通常50mm以上という関係ですが、その数値を一律に守る方法以外で安全性を確認できる扱いです。穴の周囲が破断しないことなど、接合部の安全そのものを省けるわけではありません。

選択肢4

(4)正しい記述です。定着とは、鉄筋に働く力がコンクリートへ伝わり、鉄筋が抜け出さないようにすることです。柱の出すみ部分は外へ張り出した角の部分で、通常は異形鉄筋でも末端の折曲げを求める箇所です。しかし、限界耐力計算の場合、その折曲げを定める仕様規定は適用除外になります。末端を折り曲げない方法を採るとしても、鉄筋が必要な力を伝えられることは設計で確保しなければならず、定着という機能自体が不要になるわけではありません。

周辺知識

構造の仕様規定は、実績や安全上の考え方から定めた、寸法・材料・接合方法などの具体的なルールです。例えば、鉄筋を何cm間隔で入れるか、壁を何cm以上にするかという形で表されます。仕様を守ることで一定の安全を確保しやすくなりますが、すべての建物に同じ作り方しか認めないと、合理的な設計が難しくなる場合もあります。そこで、所定の詳しい計算を行う場合は、一定の仕様規定を適用除外にしています。
保有水平耐力計算と限界耐力計算では、確認する内容や残る仕様規定の範囲が違います。保有水平耐力計算は大地震に対する最終的な耐力を確かめ、限界耐力計算は損傷や倒壊に関わる状態について、建物の応答と安全を確かめる方法です。どちらも単純に『計算が詳しいから規定が全部不要』という制度ではありません。
また、計算で省略できる寸法のルールと、長く安全に使うための耐久性などのルールを分けることも大切です。本問では、計算方法、対象部材、具体的な仕様の三つを対応させます。柱の帯筋比が除外されることから、耐力壁の厚さも除外されるはずだと類推しないようにしましょう。