学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅲ(法規) 問6
問題・正答・学習用解説
問題
防火区画、防火壁及び防火床に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は3です。広い木造建築物では、一か所の火災が建物全体へ燃え広がると、多くの人が逃げにくくなります。そこで、耐火建築物・準耐火建築物以外の一定規模の建物は、防火壁又は防火床によって一定面積以内ごとに区切り、火災を限られた範囲にとどめます。本問の木造小学校は延べ面積1,000m²超なので、原則として合計1,000m²以内ごとの区画が必要です。
誤りは、その防火壁又は防火床を『準耐火構造』でよいとした点です。ここでは耐火構造とすることが必要です。さらに、火災で周囲の部分が倒壊しても、防火壁・防火床がそれに引きずられて倒れないなど、区画として機能を保つための条件も定められています。単に壁や床の表面が燃えにくいだけでは足りません。
例えば1,800m²を900m²ずつに分けても、その仕切りが火災の途中で倒れてしまえば、面積を分けた意味が失われます。面積1,000m²という数値と、仕切りに必要な耐火構造という性能をセットで確認することが、この選択肢の判断につながります。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)正しい記述です。一定の面積区画では、自動式のスプリンクラー設備を設けた部分を床面積算定上2分の1として扱う緩和があります。全体が対象なら、実面積3,000m²を算定上1,500m²として扱えます。しかし、補助散水栓は人が操作して放水する手動の設備であり、自動で火災を感知して散水する部分ではありません。この緩和の対象面積に手動式の補助散水栓による部分を含めることはできず、同じ水による消火でも作動の仕方を区別します。
選択肢2
(2)正しい記述です。防火壁や防火床は、火や煙が別の区画へ移ることを防ぐ仕切りです。配管を通す穴を開けたままでは、その周囲の隙間が火や煙の通り道になります。このため、給水管や配電管等と壁・床の間の隙間は、モルタルなどの不燃材料で埋めます。モルタルはセメントと砂などを練った材料です。壁本体が耐火構造でも、貫通部の隙間まで自動的に安全になるわけではなく、弱点となる開口を個別に処理する必要があります。
選択肢3
(3)誤りです。1,000m²以内ごとに区画するという面積の部分は正しいですが、防火壁・防火床に求められるのは耐火構造です。準耐火構造へ読み替えることはできません。耐火建築物や準耐火建築物ではない広い建物を区切る仕切りだからこそ、周囲で火災が拡大しても区画を維持する性能が必要になります。『木造の建物だから仕切りも準耐火程度でよい』という推測ではなく、防火壁・防火床自体に定められた構造を確認します。
選択肢4
(4)正しい記述です。階段や吹抜けのように上下の階をつなぐ空間は、煙が上へ広がる通り道になります。このような縦につながる部分を区切ることを竪穴区画といいます。本問は地階に居室があり、地下1階から地上2階まで階段でつながるため、その区画に用いる防火設備には遮煙性能が必要です。遮煙性能は煙の通過を抑える性能です。地上3階以上がないことだけを理由に、地階から広がる煙への対策を省略することはできません。
周辺知識
建物の火災対策は、火を消す、火を広げない、煙を広げない、人が逃げる時間を確保するという複数の役割を組み合わせます。スプリンクラーは初期の火災に自動で水を放つ設備、防火壁・防火床は火災の範囲を区切る構造、防火戸等は出入口を閉じて区画を完成させる設備です。一つがあるから他がすべて不要になるわけではなく、法が定めた範囲でだけ緩和を利用できます。
面積区画は、同じ階などで火災が広がりすぎないように区切る仕組みです。竪穴区画は、階段などを通じて煙や火が上階へ急速に広がることを抑える仕組みです。見た目はどちらも壁と戸で囲む形でも、対象となる危険が異なります。特に煙は炎より先に広がり、視界や呼吸を妨げるため、火炎を通さない性能と煙を通しにくい性能を区別する必要があります。
区画は、本体だけでなく、戸、配管、ダクトなども含めて連続していることが大切です。丈夫な壁でも、天井裏や配管周りに通り抜ける隙間があれば効果が落ちます。数値を覚える際は、その数値が区画の面積、構造の性能、設備の作動方式のどれを表すかを確認しましょう。