学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅲ(法規) 問5
問題・正答・学習用解説
問題
イ〜ニの記述について、建築基準法上、正しいもののみの組合せは、次のうちどれか。イ.劇場における昇降機機械室用階段の蹴上げ及び踏面の寸法は、それぞれ23cm及び15cmとすることができる。ロ.高等学校における職員室には、採光のための窓その他の開口部を設けなければならない。ハ.住宅の居室で地階に設けるものは、所定の基準によりからぼりに面する一定の開口部を設け、かつ、居室内の湿度を調節する設備を設けなければならない。ニ.準工業地域内の有料老人ホームの入所者の使用する寝室(天窓を有しないもの)で、外側に幅1mの縁側(ぬれ縁を除く。)を有する開口部(道に面しないもの)の採光補正係数は、水平距離が6mであり、かつ、採光関係比率が0.24である場合においては、0.7とする。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は2で、正しい記述はイとニです。イの階段は、劇場の観客が使う階段ではなく、昇降機機械室へ行くための専用階段です。この種の階段には通常の蹴上げ・踏面寸法の規定が適用されないため、蹴上げ23cm、踏面15cmとすることができます。蹴上げは一段の高さ、踏面は足を載せる部分の奥行きです。
ニは、窓の見かけの面積を、実際の明るさに応じて評価する採光補正係数の計算です。準工業地域では、採光関係比率に8を掛けて1を引くので、次のように計算します。
ただし、道に面しない窓でも、水平距離が5m以上なら、この算定値が1未満の場合は1とします。本問の6mはその条件を満たします。さらに幅90cm以上の縁側がある窓は0.7倍するので、次のように計算します。
ロの職員室は教室と同じ採光窓の義務を受ける部屋ではありません。ハの地下居室の衛生対策は、所定の開口部、換気設備、湿度調節設備という選択可能な方法を、すべて同時に必要とした点が誤りです。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)イは正しいものの、ロが誤りなので、この組合せは選びません。劇場にある階段でも、観客用と機械室専用では利用の仕方が違い、階段寸法の扱いも違います。また、高等学校にある部屋すべてに教室と同じ採光窓の規定がかかるわけではありません。職員室は執務をする居室ですが、法が採光窓を義務付ける学校の教室には当たりません。建物全体の用途名だけで判断せず、階段や部屋を誰が何のために使うかを読むことが大切です。
選択肢2
(2)イとニはいずれも正しいため、この組合せが正解です。イは機械室専用階段の適用除外を使えます。ニは、まず準工業地域の式で0.92を計算し、水平距離6mが5m以上なので1へ補正し、その後で幅1mの縁側による0.7倍を適用します。0.92に直接0.7を掛けた0.644ではありません。距離による下限の扱いと、縁側が光を弱めることによる低減は別の段階です。順番を守ると0.7という結果になります。
選択肢3
(3)ロとハはいずれも誤りです。職員室には、学校の教室としての採光窓の義務はありません。一方、地下の住宅の居室では、所定のからぼりに面する開口部、基準に適合する換気設備、湿度調節設備のいずれかで空気や湿気に対処する方法があります。『からぼりと湿度調節設備を必ず両方設ける』という規定ではありません。ただし、土に接する壁や床から水が浸透しないようにする構造の条件も別にあり、湿気への対策だけで全基準を満たすわけではありません。
選択肢4
(4)ニは正しいですが、ハが誤りなので、この組合せにはなりません。からぼりとは、地下室の外側の土を掘り下げ、窓の前などに外気に通じる空間を設けたものです。地下室の衛生確保には、この空間に面する所定の開口部を用いる方法のほか、所定の換気設備や湿度調節設備を用いる方法があります。法文の『いずれか』を『かつ』に置き換えると、選択できる方法を全部義務付ける誤った内容になります。
周辺知識
採光、換気、防水は、住み心地に関係していても目的が違います。採光は外の自然光を室内へ取り入れること、換気は汚れた空気を入れ替えること、防水は外から水が浸入することを防ぐことです。窓が一つあれば全部十分とは限らず、部屋の用途や位置に応じて別々に確認します。職員室が採光窓の義務対象でないことから、換気などの居室の基準まで不要と考えてはいけません。
採光補正係数は、窓の大きさに加えて、空がどれだけ見えやすいかを評価するための数値です。同じ面積の窓でも、すぐ外に高い建物が迫る場合と、外に広い空間がある場合では入ってくる光が違います。地域区分による式、外側の空間の幅、天窓や縁側の条件を順に反映して、採光に有効な面積を求めます。
例えば、本問の係数0.7で面積2m²の窓なら、採光に有効な面積はです。この値を寝室に必要な採光面積と比較します。係数を求めただけでは部屋全体が適合するかは決まらないこと、複数の窓があるときは各窓の有効面積を合計することも理解しておきましょう。