学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅲ(法規) 問3
問題・正答・学習用解説
問題
次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は2です。建物を使いながら避難施設などを工事すると、階段が通れない、防火戸が働かないなど、普段と違う危険が生じます。そのため、一定の用途・規模の建物については、工事中の安全、防火、避難の措置を計画し、特定行政庁へ事前に届け出る制度があります。ただし、病院なら規模を問わずこの届出が必要になるわけではありません。
病院について対象となる一つの条件は、5階以上の階の病院用途部分の床面積の合計が1,500m²を超えることです。ほかに5階以上の階又は地階の用途部分が合計2,000m²を超える場合などの条件があります。本問は地上3階建てであり、5階以上の階も地階もありません。延べ面積3,000m²という建物全体の大きさだけで、これらの条件を満たすとは判断できません。
したがって、本問で当該計画の届出を必須とした記述は誤りです。これは工事中の安全対策が不要という意味ではありません。安全を確保する義務と、特定の制度による計画届出の対象になるかを区別して判断します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)正しい記述です。原動機とは、電動機など、機械を動かす力を発生させる装置です。原動機を使う観覧車は、多くの人を高い位置へ運ぶため、構造や運転に関わる安全確認が重要になります。政令はこのような遊戯施設を指定工作物として扱い、建築確認に関する規定を準用します。屋根や壁がないから確認が不要なのではありません。観覧車を築造するときも、工事前に計画が基準に適合することの確認を受け、確認済証の交付を受けます。
選択肢2
(2)誤りです。安全措置計画の届出対象は、用途だけでなく、どの階にどれだけの床面積があるかで決まります。病院の『5階以上の用途部分が1,500m²超』などの条件に対し、本問は地上3階建てです。全館の延べ面積3,000m²を、そのまま5階以上の面積に置き換えることはできません。入院患者への配慮や工事中の避難路の確保は必要ですが、その必要性から直ちにこの法律上の計画届出が義務になるわけではありません。
選択肢3
(3)正しい記述です。高さ60m超の建物では、風や地震による揺れ方が複雑になるため、所定の構造計算による安全性について国土交通大臣の認定を受けます。通常の一定規模の建物に行う構造計算適合性判定とは、法が用意した安全確認の手順が違います。このため、大臣認定に加えて同じ趣旨の適合性判定を重ねて受ける必要はありません。もちろん、構造を調べなくてよいという意味ではなく、より個別性の高い認定の手続で安全性を確かめます。
選択肢4
(4)正しい記述です。検査済証は、完成した工事が基準に適合していることを検査した結果として交付される書類です。本問の8階建て共同住宅で、増築に伴い避難施設等の工事もする場合、その工事に係る建物又は部分は、原則として検査済証の交付前に使用できません。途中の階段や不完全な防火戸を住民が使う危険を防ぐためです。一定条件下の仮使用の制度はありますが、選択肢が述べる『原則として』の使用制限は正しい内容です。
周辺知識
建築に関する手続は、何の段階を調べるかで分けると理解しやすくなります。確認は工事前に計画を調べる手続、完了検査は工事後に出来上がったものを調べる手続です。確認済証があっても、現場が図面どおりに完成したと確認されたことにはなりません。検査済証の交付前に使用を制限するのは、この二つの段階の隙間で人が危険にさらされることを防ぐためです。
一方、建物を使用しながら行う工事では、完成時に安全になることだけでは不十分です。例えば工事のために階段の一つを閉鎖するなら、その期間にどこを通って避難できるかを考える必要があります。安全措置計画の届出は、こうした一時的な危険が大きい用途・規模を対象にしています。
面積条件を読むときは『延べ面積』『特定の用途部分の面積』『5階以上の階の面積』『地階の面積』を区別しましょう。全体が大きくても、指定された階に面積がなければ、その要件には該当しません。また、確認、適合性判定、大臣認定などは名称が似ていても役割が異なります。手続の名称だけを暗記せず、対象と調べる内容を対応させることが大切です。