学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問15
問題・正答・学習用解説
問題
排水設備等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は(2)です。排水槽の底は、吸込みピットに向かって 以上 以下の勾配とします。 以上はこの範囲より急なので不適当です。吸込みピットを設けること自体は正しい一方、底部勾配の数値を取り違えています。
排水槽は、地下など自然の勾配だけでは外へ排水できない場所で、水を一時的に集めてポンプでくみ上げるための槽です。底が平らでくぼみや淀みがあると水や汚泥が残り、臭いや清掃上の問題になります。そこで底を吸込みピットへ向けて傾け、水を集めてくみ上げやすくします。
勾配 は、水平方向へ10進む間に高さが1変わることです。1m当たりなら10cmの高低差です。 は約6.7cm、 は20cmなので、本肢が指定範囲よりかなり急であることが分かります。分母が大きいほど勾配は緩くなる点も確認します。排水管の径ごとの勾配とは別に、排水槽の底の清掃・集水を考えた基準として覚えます。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。厨房排水は油や有機物を多く含みますが、それに応じた処理を行えば排水再利用の原水にできます。手洗いや洗面の比較的汚れの少ない排水だけに限定されるわけではありません。ただし原水の汚れが多いほど、油の分離や水質浄化などの処理が重要になります。再利用するという名称だけで、そのまま便器洗浄等に送ってよいわけではありません。どんな水を集めるか、どの程度処理するか、何の用途に使うかを一組にして計画します。
選択肢2
(2)不適当です。底勾配は吸込みピットに向かって 以上 以下で、 以上ではありません。、、 なので、数として比べれば範囲外と確認できます。吸込みピットは底の水を集中させる部分で、周囲からそこへ向けて適切な傾斜を付けます。勾配が大きいほど必ず良いという問題ではなく、保守点検を含む所定の構造条件を満たす必要があります。「以上」と「以下」の両端を確認します。
選択肢3
(3)適当です。排水槽は水や汚泥がたまるため、定期的な清掃と点検が必要です。有効内径60cmの防臭密閉型マンホールを2か所設ける計画は、その作業のための適切な構成です。防臭密閉型は、通常時に槽内の臭いなどが室内へ漏れるのを抑えます。一方で、清掃時には必要な作業口として開けられる必要があります。蓋があるだけで十分とせず、人や清掃器具が扱える大きさと、複数の作業経路を確保することが大切です。槽内作業には別途適切な安全管理も必要です。
選択肢4
(4)適当です。雨水を便器洗浄に使えば上水道の使用量は減りますが、使用後の水は下水道へ流れるので、その処理の負担は生じます。上水道メーターだけでは雨水由来の排水量を把握できないため、その地域で下水道料金の対象となる場合には、雨水の使用量を量水器で測ります。水の購入費と、使った後の水を処理する費用は別の仕組みです。水道から買わない水だから下水道へ流しても必ず無償、と考えないようにします。設問が料金対象の地域という条件を付けている点も確認します。
周辺知識
排水槽と受水槽は、水をためる点は同じでも目的が違います。受水槽は給水する前の水をため、排水槽は使った後の水を一時的にためて、ポンプで下水道などへ送ります。排水槽では汚泥や臭いの管理が重要で、底の形、吸込み位置、清掃口、通気などを一体で考えます。
勾配を数値で理解するには、水平距離に勾配を掛けて高低差を出します。水平距離3mなら、 は 、 は 、 なら0.6mです。分数の分母が小さいほど急な勾配になることが、実寸で確認できます。排水管と槽底では必要な勾配の考え方が異なるため、数値だけを混ぜて覚えないようにします。
水の再利用では、原水の種類、処理後の水質、利用先、排水先という流れを追います。厨房のように汚れが多い原水は処理の負担が増え、雨水のように購入量に表れない水は、使用量を別に計測する必要がある場合があります。節水という一つの効果だけでなく、維持管理と排水処理まで含めた水の流れを考えることが重要です。