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学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和6年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問13

問題・正答・学習用解説

問題

事務所ビルの空気調和設備・換気設備の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    事務室の窓回りの温熱環境に配慮し、窓下部より室内空気を吸い込み、窓上部から天井内に排気する、エアフローウィンドウを採用した。
  2. (2)
    冷房負荷の計算において、事務室の内部発生熱負荷のうち、OA機器による負荷を15 W/m2\displaystyle m^{2}とした。
  3. (3)
    事務室の冷房負荷は、年間を通して安定しているので、部分負荷を考慮せずに、ピーク負荷によって熱源設備を計画した。
  4. (4)
    地下に設けた自走式駐車場の換気設備は、経済性及び設置スペースを考慮して、誘引誘導方式を採用した。

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

正解は(3)です。事務室の冷房負荷は年間を通して一定ではありません。日射、外気温湿度、在室人数、照明やOA機器の使用状況などで変わるため、ピーク負荷だけでなく、部分負荷での効率と運転方法も考えて熱源を計画します。
ピーク負荷は、最も大きな冷房能力が必要になる時の負荷です。これに対応する能力は必要ですが、その最大状態が毎日一日中続くわけではありません。朝夕や中間期、休日などは能力の一部だけを使います。この最大能力より小さい状態が部分負荷です。大型機を一台だけ選び、低負荷でも不効率な運転や頻繁な起動停止を繰り返せば、年間のエネルギーを余分に使います。
複数台に分けて必要台数だけ運転する、負荷の変化へ効率よく追従できる機器を選ぶなどの検討が必要です。自動車も最高速度の性能だけでは普段の燃費を判断できないのと似ています。本肢は事務所の負荷を安定したものと決め付け、実際に長く運転する部分負荷の時間帯を無視しています。設備の最大能力と年間の使い方の両方を考えることが要点です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。エアフローウィンドウは、窓の内部などに空気を流し、ガラスやブラインドに蓄えられる日射熱の室内への影響を抑える窓の方式です。本肢は窓下部から室内空気を吸い込み、窓上部から天井内へ排気する構成で、窓ぎわの温熱環境を改善します。窓は外からの日射で暖まりやすく、室全体の空調が良好でも窓ぎわだけ暑い場合があります。その熱を空気の流れで取り去る仕組みです。窓の材料性能だけでなく、空気の経路を一体で計画します。

選択肢2

(2)適当です。パソコンなどのOA機器は、使った電力の多くを室内で熱として放出し、冷房が取り除く内部発生熱になります。床面積当たり15 W/m2\displaystyle \mathrm{W/m^2} は、一般的な事務室の計画値として妥当な設定です。例えば100平方メートルなら 15×100=1,500 W\displaystyle 15\times100=1{,}500\,\mathrm W の負荷を見込む計算になります。ただし全ての事務所で実際の発熱が必ず同じという意味ではありません。機器の種類、台数、同時使用状況を確認し、用途に合う値を設定します。

選択肢3

(3)不適当です。冷房負荷は、人・機器などの内部発熱だけでなく、外気温湿度や窓からの日射でも変わります。晴れた夏の日の昼と曇った春の朝では、必要な冷房量が違います。最大の負荷に足りる能力を確保した後、低い負荷のときに効率よく動くかも検討する必要があります。ピークだけで機器を大きくすると、実際に多い部分負荷の運転で無駄が出ることがあります。熱源の容量選定と、台数分割・制御・部分負荷効率の検討を一組として考えます。

選択肢4

(4)適当です。誘引誘導方式は、比較的少量の高速の噴流で周囲の空気も引き込み、駐車場全体の空気を排気側へ動かす方式です。大きなダクトを各所へ張り巡らせる量を減らし、設置空間や工事費の面で有利になる場合があります。自動車の排気ガスが滞留しないよう、空気の流れを作ることが目的です。噴流を出すだけで汚染物質が消えるわけではなく、最終的に屋外へ排出する経路と、空気が届きにくい場所がないかの確認が必要です。

周辺知識

冷房負荷は、室を目標状態に保つため取り除く熱の速さで、WやkWで表します。窓を通る日射、壁を伝わる熱、人の発熱、照明・機器、取り入れる外気などに分けて考えます。外気には水蒸気も含まれるので、温度を下げる顕熱負荷と除湿の潜熱負荷があります。
能力とエネルギーも区別します。能力10kWの冷房を同じ負荷で1時間使えば、取り除く熱量は10kWhです。最大能力を決めるにはピークが重要ですが、年間のエネルギーには、それぞれの負荷で何時間運転するかと、その時の効率が効きます。ピーク負荷だけから年間消費を判断できない理由です。
事務所では窓ぎわのペリメーター部分と、内部のインテリア部分でも負荷が違います。窓ぎわは日射や外気の影響が大きく、内部は人や機器の発熱が中心になります。エアフローウィンドウは窓ぎわの熱環境へ働く方法です。建物全体を一つの均一な部屋とせず、場所と時間で負荷が変わることを図や表にしてから、熱源の台数や空気の送り方を計画すると、設備方式の意味を理解できます。