学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問12
問題・正答・学習用解説
問題
空気調和設備・換気設備・排煙設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は(1)です。中央熱源空調方式でも、利用者が自分の周囲の風量や風向などを調整できる端末を設ければ、パーソナル空調を実現できます。熱を中央で作ることと、利用者ごとの調整ができるかどうかを混同しています。
中央熱源方式は、建物の一か所などに冷凍機やボイラーをまとめ、冷水・温水などを各所へ送る方式です。これは冷たさや暖かさをどこで作るかという分類です。一方、パーソナル空調は、個人の好みや活動量に合わせて手元などで環境を調整する考え方で、吹出し口や端末の制御に関わります。
例えば大きな厨房で一括して料理を作っても、各人が取り分ける量を調整できるのと同じように、熱源が共通でも末端の調整を個別にすることは可能です。もちろん全ての中央熱源方式が自動的に個人調整できるわけではなく、そのための機器や制御を計画する必要があります。本肢の問題は「中央だから個別対応できない」と不可能を断定した点です。方式名を、熱源・搬送・末端制御のどの段階の名前かに分けて理解します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)不適当です。中央熱源は、冷水や温水を建物全体でまとめて作る方式です。パーソナル空調は、机や座席などの近くで、個人が風量・風向・温度などを調整できる環境の考え方です。両者は分類の軸が違うため組み合わせられます。共通の冷水を使う端末でも、吹出し量などを個別に制御すれば利用者の違いへ対応できます。中央式か個別式かという熱源の分類だけで、利用者が調整できるかを決めないことが重要です。末端機器と制御の構成を確認します。
選択肢2
(2)適当です。ガラリは、外壁の空気の出入口に設ける羽根状の部材です。外気取入れ口では雨滴などを室内側へ吸い込みにくくするため、排気口より通過風速を遅くするのが一般的です。風量を 、通過面積を 、平均風速を とすると なので、同じ風量で風速を下げるには面積を大きくします。例えば必要な速度を半分にするなら、他の条件が同じとき面積は2倍です。外気を入れる口と外へ捨てる口では、雨の吸込みという条件が違います。
選択肢3
(3)適当です。冬は暖かい室内空気が冷たい外気より軽く、建物の上部から外へ出て、下部から外気が入る煙突効果が生じます。超高層ビルでは上下の高さが大きいため、温度差による内外の圧力差も大きくなりやすく、機械の給気・排気だけで決めたバランスを乱します。低層の入口で冷風が強い、扉が開きにくいなどの問題にも関係します。空調機が計画風量で運転していても、建物全体の温度差による自然の流れを無視できないことを示しています。
選択肢4
(4)適当です。防煙垂れ壁は天井から下がる壁で、上部の煙の広がりを抑えますが、下部では空間がつながっています。一方を機械排煙にすると、他方の自然排煙口から外気を吸い込んでしまうなど、期待した煙の流れを妨げるおそれがあります。そのためこのような隣接区画を、垂れ壁だけで区切って自然排煙と機械排煙に分ける計画は一般にできません。排煙設備は各区画だけでなく、つながる空間の圧力差と給気経路を合わせて考える必要があります。
周辺知識
空調設備は、熱を作る熱源、熱を水や空気で運ぶ搬送、室内へ届ける末端、状態を測って調整する制御という段階で構成されます。中央熱源という言葉は主に最初の段階を表し、パーソナル空調は最後の末端と制御に関係します。違う段階の分類を排他的な二択として覚えないことが大切です。
空気の経路では、風量が同じなら通過面積を大きくすると風速が下がります。速度を下げることは雨滴の吸込みや騒音を抑える一方、開口部の面積を多く必要とします。設備は性能だけでなく、外壁や機械室に必要な空間まで建築計画と調整します。
冬の超高層では、煙突効果による圧力分布が建物全体へ生じます。排煙でも、ある空間を機械で吸えば隣の空間から空気が引かれます。どちらも、一つのファンや一つの区画だけで結果を決められない例です。給気口から室を通って排気口へ至る線を描き、途中に扉や垂れ壁がある場合、その部分が圧力や流路へどう影響するかを確かめると、方式の可否を理解できます。