学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問6
問題・正答・学習用解説
問題
日照・日射・採光に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は(1)です。大気透過率は、直達日射が大気を通過する際にどの程度弱められるかを表す値です。天空光まで含めて透過の程度を表すとした点が誤りです。
太陽から来る日射の一部は、大気中の分子、水蒸気、ちりなどによって吸収されたり散乱されたりします。散乱せずに太陽の方向から直接届くのが直達日射で、散乱されて空のさまざまな方向から届くのが天空日射です。大気透過率は、直接の光の束がどれだけ残るかを考える際に使います。天空光は、そのまま真っすぐ透過してきた光ではないので、同じ説明に含めることはできません。
晴れて澄んだ空と、かすんだ空では太陽の直接の光の強さが違います。また太陽が低いと、光が大気中を進む距離が長くなり、弱められやすくなります。そのため日射計算では、大気の透過の性質と太陽高度を組み合わせて直達成分を求めます。本問は「日光」という日常語で全てを一つにせず、太陽から直接来る成分と、空全体から来る成分を分けることを問うています。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)不適当です。大気透過率が扱うのは、主として大気による直達日射の減衰です。直射日光は太陽の方向から直接来ますが、天空光は大気で散乱され、空の多くの方向から届きます。本肢は二つをまとめて透過率の対象としています。例えば太陽が雲で隠れても外が真っ暗にならないのは、直接の光以外に天空からの光があるためです。直達と天空を分ければ、太陽の向きに強く依存する成分と、窓から見える空の範囲による成分を別々に計算できるようになります。
選択肢2
(2)適当です。夏至には太陽が高く上がり、南中時の南向きの垂直な壁には光が斜めに当たります。一方、東向きの壁は朝の低い太陽を正面に近い向きで受けます。北緯35度の快晴の夏至では、1日を通じた直達日射の積算量は東向き鉛直面の方が南向きより大きくなります。南向きなら季節を問わず日射が最大、とはいえません。「終日」は正午の一瞬でなく、朝から夕方までを足し合わせる条件です。壁の向き、太陽の高さ、受ける時間帯の三つを考えます。
選択肢3
(3)適当です。照度は、同じ量の光でも測定面へ正面から当たるほど大きくなり、斜めに当たるほど小さくなります。測定するのは南向きの鉛直面なので、南側の側窓は正面に見え、天窓は上方の斜め方向に見えます。窓の立体角が同じ、つまり見える窓の広がりが同じでも、測定面への入射角が違うため、天窓だけの室では鉛直面照度が低くなります。机のような水平面の照度なら別の関係です。何向きの面の明るさを測っているかを最初に確認します。
選択肢4
(4)適当です。春分・秋分には太陽の赤緯がほぼ0で、太陽はおおむね真東から昇り真西へ沈みます。この日の水平面上の鉛直棒の影の先端は、東西方向のほぼ直線をたどります。朝夕で影の長さや向きは変わりますが、先端の位置を連続して印すとほぼ一つの直線になります。夏至や冬至の曲線的な軌跡との違いです。影の先端の移動は太陽の見かけの運動を地面へ投影したものであり、棒の根元を中心に同じ半径の円を描くわけではありません。
周辺知識
日照は、太陽の直接の光が当たることを指し、日射は熱としての太陽放射、採光は室内へ光を取り入れて明るさを確保することを指します。互いに関係しますが同じ評価ではありません。直射日光が入らない北側の窓でも天空光で採光でき、明るい窓でも日射熱を抑える工夫が必要な場合があります。
直達日射が面に入る量は、法線面直達日射量に入射角の余弦を掛けて考えます。入射角は、面に垂直な法線と光線の角度です。正面から光を受けると最大で、面に沿う向きでは小さくなります。同じ原理で、窓が測定点から同じ立体角で見えても、測定する面の向きが違えば照度は変わります。
立体角は、ある点から見た対象の広がりを三次元で表す量です。窓が大きいほど、また一般に近いほど大きく見えます。しかし見える大きさだけでは十分でなく、受ける面に対する向きも必要です。採光問題では「窓の方位」だけでなく「測定面の向き」を確認し、日射問題では一瞬の量か1日を積算した量かを確かめます。条件の一語が、使う比較を変えます。