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学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和6年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問4

問題・正答・学習用解説

問題

熱伝導率・熱貫流率に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    断熱材に用いられるグラスウールの熱伝導率は、一般に、板ガラスの110\displaystyle \dfrac{1}{10}以下、アルミニウムの11,000\displaystyle \dfrac{1}{1,000}以下である。
  2. (2)
    同種の発泡系の断熱材で空隙率が同じ場合の熱伝導率は、一般に、断熱材内部の気泡寸法が大きいものほど大きくなる。
  3. (3)
    屋外の風速が大きくなると、一般に、外壁の熱貫流率は大きくなる。
  4. (4)
    外壁の熱貫流率は、外壁を構成する材料の種類や材厚が同じ条件の場合、一般に、躯体の屋外側で断熱するよりも、室内側で断熱するほうが大きくなる。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

正解は(4)です。壁を構成する材料の種類と厚さ、内外の表面条件が同じで、一次元の定常的な熱の流れを考える場合、材料の並び順を変えても熱抵抗の合計は変わりません。したがって、断熱材を内側へ置いただけで熱貫流率が大きくなるとはいえません。
熱抵抗は、熱の通りにくさを表します。材料層の抵抗は、厚さを熱伝導率で割った値です。壁全体では、コンクリートや断熱材など各層の抵抗に、室内外の表面抵抗を加えます。例えば抵抗が1、4、2の三つの層は、1+4+2でも4+1+2でも合計7です。熱貫流率はその合計の逆数なので同じになります。
ただし、内断熱と外断熱が建物として全く同じ性能という意味ではありません。外断熱では躯体を室内側の蓄熱に使いやすく、熱橋や内部結露などの扱いにも違いが生じます。本問は材料と厚さが同じ壁の熱貫流率についての比較です。壁の基本的な熱の通しやすさと、時間変化、部位のつながりによる性能の違いを区別して判断します。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。グラスウールは細いガラス繊維の間に動きにくい空気を多く含み、その空気が熱を通しにくくします。ガラスという同じ名称を含んでいても、空気を含まない板ガラスの塊とは熱の伝わり方が違います。一般的な熱伝導率の目安はグラスウールが0.03〜0.05程度 W/(m⋅K)\displaystyle \mathrm{W/(m\cdot K)}、板ガラスが1前後、アルミニウムが数百程度なので、本肢の110\displaystyle \frac{1}{10}以下、11,000\displaystyle \frac{1}{1{,}000}以下という大小に対応します。繊維そのものより、空気を細かく保持する構造が断熱の働きを生みます。

選択肢2

(2)適当です。発泡系断熱材は、小さな気泡を材料内へ閉じ込め、気体が大きく動けないようにして熱移動を抑えます。同じ種類で空隙の割合が同じでも、気泡が大きくなると内部での対流や放射による熱移動が増えやすく、熱伝導率は大きくなる傾向があります。空気を多く含めば、それが大きな空洞でも同じだけ断熱できるというわけではありません。気体の量に加え、その区切り方と動きにくさが重要です。細かい空気の部屋を多く作る意味を考えます。

選択肢3

(3)適当です。外壁から外気へ熱が移る際、表面付近の空気との熱交換にも抵抗があります。強い風はその近くの空気を入れ替え、対流で熱を運びやすくするので、屋外側の表面熱抵抗が小さくなります。壁全体の抵抗の一部が小さくなるため、その逆数である熱貫流率は大きくなります。材料そのものの熱伝導率が風で変わるという意味ではありません。材料の中の伝導と、材料表面から空気への熱交換を分けることがポイントです。

選択肢4

(4)不適当です。材料と厚さが同じなら、各層の熱抵抗の足し算は順番を変えても同じです。定常的に壁を貫く熱について、内断熱の方が必ず熱貫流率が大きいとはいえません。例えば同じ断熱材をコンクリートの外側から内側へ移しても、熱はどちらの場合も断熱材とコンクリートの両方を通ります。ただし柱や床との接続部分を通る熱橋、躯体の蓄熱、結露の起き方は変わり得ます。本肢が比較するU値の基本式と、建物全体の他の効果を混同しないようにします。

周辺知識

熱伝導率 λ\displaystyle \lambda は材料そのものの熱の通しやすさで、単位は W/(m⋅K)\displaystyle \mathrm{W/(m\cdot K)} です。熱貫流率 U\displaystyle U は複数の材料層と表面の熱交換を含めた部位全体の通しやすさで、単位は W/(m2⋅K)\displaystyle \mathrm{W/(m^2\cdot K)} です。厚さ d\displaystyle d の材料層の熱抵抗は R=dλ\displaystyle R=\frac{d}{\lambda}。厚くするほど抵抗は大きくなり、熱を通しにくくなります。
壁の基本式は、次のとおりです。
U=1Ri+∑dλ+RoU=\frac{1}{R_i+\sum\frac{d}{\lambda}+R_o}
Ri\displaystyle R_i と Ro\displaystyle R_o は室内側・室外側の表面熱抵抗です。断熱材を厚くする、熱伝導率の低い材料を使う、表面の熱交換を抑えると、分母が大きくなりU値は小さくなります。風が強くなる場合は屋外側抵抗が小さくなるため逆向きです。
式は各層を順に通る一次元の熱の流れを想定しています。現実には、断熱材を避けて柱や梁などを伝わる熱橋があり、外断熱はそれを連続して包みやすいなどの利点があります。「並び順で基本の熱抵抗は変わらない」と「断熱位置に設計上の違いがない」は同じ主張ではありません。何を固定した比較なのかを確かめます。