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学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和6年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問3

問題・正答・学習用解説

問題

外気温度5 ℃、無風の条件の下で、図のような上下に開口部を有する断面の建築物A、B、Cがある。室内温度がいずれも18 ℃に保たれ、上下各々の開口面積がそれぞれ3 m2\displaystyle m^{2}、2 m2\displaystyle m^{2}、1 m2\displaystyle m^{2}、開口部の中心間の距離がそれぞれ3 m、6 m、9 mであるとき、建築物A、B、Cの換気量QA\displaystyle Q_{A}、QB\displaystyle Q_{B}、QC\displaystyle Q_{C}の大小関係として、最も適当なものは、次のうちどれか。ただし、いずれの開口部も流量係数は一定とし、中性帯は開口部の中心間の中央に位置するものとする。なお、2\displaystyle \sqrt{2}は1.4、3\displaystyle \sqrt{3}は1.7として計算する。問3の図1

選択肢

  1. (1)
    QA\displaystyle Q_{A} = QB\displaystyle Q_{B} = QC\displaystyle Q_{C}
  2. (2)
    QA\displaystyle Q_{A} > QB\displaystyle Q_{B} > QC\displaystyle Q_{C}
  3. (3)
    QB\displaystyle Q_{B} > QA\displaystyle Q_{A} = QC\displaystyle Q_{C}
  4. (4)
    QC\displaystyle Q_{C} > QB\displaystyle Q_{B} > QA\displaystyle Q_{A}

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

正解は(2)の QA>QB>QC\displaystyle Q_A>Q_B>Q_C です。温度差換気の量は、他の条件が同じなら開口面積に比例し、上下の開口の高さの差の平方根に比例します。今回は外気5℃、室内18℃、流量係数、中性帯の位置の条件が共通なので、比較に必要なのは開口面積 A\displaystyle A と開口中心間距離 H\displaystyle H で、Q∝AH\displaystyle Q\propto A\sqrt H です。
A、B、Cの順に、開口面積と高さの平方根を掛けた値を計算します。Aは次のとおりです。
33≃3×1.7=5.1\begin{aligned}3\sqrt{3}&\simeq3\times1.7\\&=5.1\end{aligned}
Bは、平方根を分けて計算します。
26=223≃2×1.4×1.7=4.76\begin{aligned}2\sqrt{6}&=2\sqrt{2}\sqrt{3}\\&\simeq2\times1.4\times1.7\\&=4.76\end{aligned}
Cは次のとおりです。
19=31\sqrt{9}=3
これは共通の係数を省いた比較用の数値であり、そのまま実際の毎秒換気量を表す数値ではありません。大小は5.1>4.76>3なので、A>B>Cとなります。
高さが増えると内外の圧力差が増しますが、流速は圧力差の平方根で増えるため、高さを3倍にしても流速は3倍ではなく 3\displaystyle \sqrt{3} 倍です。Cは最も高い一方、開口面積が最小で、この小ささが効いて換気量は最小になります。高さと開口面積の効果を同じ比例関係で扱わないことがポイントです。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)不適当です。開口面積と開口間距離をそのまま掛けると、A3×3=9\displaystyle 3\times3=9、B2×6=12\displaystyle 2\times6=12、C1×9=9\displaystyle 1\times9=9となりますが、この積で換気量を比較する式ではありません。高さは平方根で効きます。正しく AH\displaystyle A\sqrt H を計算すると、A5.1、B4.76、C3となり、同じではありません。全ての室の温度差が13℃だから同じ換気量ともいえません。温度差は共通条件であっても、空気が通る面積と圧力差を生む高さが違うためです。

選択肢2

(2)適当です。Aは 33≃5.1\displaystyle 3\sqrt{3}\simeq5.1、Bは 26≃4.76\displaystyle 2\sqrt{6}\simeq4.76、Cは 9=3\displaystyle \sqrt{9}=3 です。Bの 6\displaystyle \sqrt{6} は 23\displaystyle \sqrt{2}\sqrt{3} と分解すると、問題で指定された1.4と1.7を使えます。比較だけなら、Aを基準にBは (23)2≃0.93\displaystyle (\frac{2}{3})\sqrt{2}\simeq0.93、Cは (13)3≃0.57\displaystyle (\frac{1}{3})\sqrt{3}\simeq0.57 としても同じ順になります。AとBは近いので、面積だけの印象ではなく計算で確かめ、A>B>Cを選びます。

選択肢3

(3)不適当です。Bの開口間距離はAの2倍ですが、開口面積はAの3分の2です。したがって換気量の比は QBQA=232≃0.93\displaystyle \frac{Q_B}{Q_A}=\frac{2}{3}\sqrt{2}\simeq0.93 で、BはAを少し下回ります。またCは高さがAの3倍でも開口面積は3分の1なので、QCQA=33≃0.57\displaystyle \frac{Q_C}{Q_A}=\frac{\sqrt{3}}{3}\simeq0.57 です。AとCは同じになりません。高さの効果を面積と同じ一次の比例として掛け合わせると、このような誤った関係を考えてしまいます。

選択肢4

(4)不適当です。C>B>Aは、開口間距離9m、6m、3mだけを大きい順に並べたものです。しかし空気が通る面積は逆に1、2、3平方メートルです。換気量は高さの平方根と面積の積で決まるので、高さが大きい効果より開口が小さい効果が強く、Cは最小になります。例えば長い煙突でも入口が非常に細ければ大量の空気を流しにくいのと同じです。一つの条件だけの順位を、そのまま結果の順位に置き換えないようにします。

周辺知識

温度差換気では、暖かい室内空気が軽いため上側から出て、冷たい外気が下側から入ります。上下の開口の間隔が大きいほど、内外の密度差が積み重なる距離が大きくなり、空気を動かす圧力差が増えます。一方、開口を通る流量は、流れる速さと開口面積の積です。この二つの関係から、高さは平方根、面積はそのまま比例で効くことが導かれます。
開口の流量は概念的に Q=CdA2Δpρ\displaystyle Q=C_dA\sqrt{\frac{2\Delta p}{\rho}} です。Cd\displaystyle C_d は流れにくさを表す流量係数、Δp\displaystyle \Delta p は圧力差、ρ\displaystyle \rho は空気密度です。今回の比較では、上下開口の条件がそろい中性帯も中央なので、共通の項をまとめて省けます。中性帯から各開口までの高さを H2\displaystyle \frac{H}{2} としても、共通の 12\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}} が全てに掛かるだけなので順位は同じです。
実際の自然換気量は、風や扉の状態、開口の網や羽根などにも影響されます。本問が「無風」「流量係数一定」と指定するのは、それらをそろえて面積と高さの効果だけを比較するためです。問題の仮定を、計算から省略してよい要素を教える情報として読みます。