学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問2
問題・正答・学習用解説
問題
室内の温熱環境に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は(4)です。床暖房は、床を体温より高くしなくても快適さを得られます。通常は約25〜30℃程度など、体温より低い床表面温度で計画でき、体温を超える温度を一般的に推奨するのは不適当です。
暖房では、身体へ強い熱を加えることだけが目的ではありません。冬の冷たい床や壁へ身体の熱が逃げすぎるのを抑え、身体が作る熱との釣り合いを整えることが大切です。床を適度に暖めれば、冷たい床による足の冷えを減らし、床からの放射も含めて室内の熱環境を改善できます。手で一瞬触ったときに熱いと感じる温度へする必要はありません。
床は、素足で歩いたり座ったり、長時間触れる可能性のある面です。高くしすぎれば局所的な不快感や身体への負担が増えるため、室温・服装・使い方などと合わせて調整します。本問は、暖かいほど暖房として優れているという考え方を訂正する問題です。空気全体の快適さを示す指標と、窓や床による身体の一部の不快感は別に確認します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。片側に非常に冷たい窓があると、身体のその側から窓へ放射で熱が逃げ、反対側との不均一さによって不快に感じます。冷たい窓面による放射の不均一性は、10℃以内とすることが望ましいという基準の考え方です。ここでの10℃は、単純に室温計と窓の温度の差を何でも比較するのではなく、放射環境の方向差を評価したものです。窓の断熱性を高める、窓ぎわの環境を調整するなどの配慮は、室温全体を上げるだけでは解消しにくい局所的な冷えに対応します。
選択肢2
(2)適当です。SET*は、実際の温熱環境を、同じ生理的な熱のやり取りになる標準環境の温度へ換算する指標です。空気温度、湿度、風、放射に加え、衣服や活動量を考慮します。SET*25℃は、一般に快適・許容できる温冷感の範囲に相当します。ただし実際の空気温度が25℃なら必ずSET*も25℃という意味ではありません。日射の強い窓ぎわ、運動直後、厚着などでは同じ室温でも条件が変わります。複数の要素を一つの標準温度へ置き換えて比較する指標と理解します。
選択肢3
(3)適当です。直射日光のない室内のWBGTは、自然湿球温度 と黒球温度 を用い、 で求めます。湿球温度は水が蒸発して冷える性質を利用し、湿気が汗の蒸発を妨げる影響を反映します。黒球温度は周囲の放射熱の影響も受けます。気温だけでは、蒸し暑さや熱い設備から受ける熱を十分に表せません。屋外で直射日光がある場合には乾球温度も使う別の式になるので、測定環境を先に確認します。
選択肢4
(4)不適当です。床暖房は、床を体温より高くして直接身体を熱する必要はありません。適度に暖かい床が、身体から冷たい周囲へ逃げる熱を減らすことで快適にできます。表面温度を上げすぎると、足裏や床に触れる部分だけが暑くなり、長時間接触への配慮も必要になります。一般に約25〜30℃程度などを目安に、室内の条件や用途に合わせて計画します。全身として快適な熱の釣り合いと、触った瞬間に熱いと感じる感覚を混同した点を訂正します。
周辺知識
温熱環境の評価は、快適さを評価する目的と、強い暑さによる熱ストレスを評価する目的を区別します。SET*は複数の要素を標準環境の温度へ換算して温冷感を扱い、WBGTは湿気や放射の影響を含めた暑熱環境の評価に用います。両者が同じ数字でも、同じ意味の温度とは限りません。
屋内で自然湿球温度が24℃、黒球温度が30℃なら、WBGTは次のようになります。
式の係数は、湿気の影響を大きく反映する重みです。算術平均の27℃とは違います。この数値は気温そのものではなく、測定した温度から求める暑さの指標です。
また、部屋全体の指標が良くても、窓側だけ寒い、足元だけ熱いなどの局所的不快感が生じます。平均放射温度が同じでも、全ての壁がほどよい温度の場合と、一方が非常に熱く他方が冷たい場合では、身体への当たり方が違います。室内の温度を一つの平均値で把握した後に、上下温度差、風の当たり方、床表面温度、放射の方向差を確認するという順序が大切です。