学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問1
問題・正答・学習用解説
問題
環境工学における用語に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は(2)です。空気温度と平均放射温度を、その熱の伝わり方に応じて重み付けした値は「作用温度」です。「自然室温」は、冷暖房を行わない状態で、その部屋の熱の出入りの釣り合いによって成り立つ室温を指します。似た温度の名称でも、何を評価しているかが違います。
作用温度は、人が空気との対流と周囲の面との放射によって受ける熱の影響を、一つの温度にまとめる指標です。冬に室温計が20℃でも、冷たい窓のそばでは寒く感じることがあります。身体から窓へ放射で逃げる熱が増えるためで、空気温度だけでは説明できません。作用温度はこの周囲の面の影響も考えます。
自然室温は、例えばエアコンを止めた教室の温度です。外気、日射、人や機器の発熱、壁や床に蓄えられた熱、換気などの結果として決まります。外気温と常に同じになるわけでもありません。本肢の後半にある、発汗の影響が小さい環境の温熱指標という説明も作用温度に対応します。「自然」という名前から体感温度の意味を想像せず、定義を言い換えて判断します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。クリモグラフは、例えば横軸に気温、縦軸に相対湿度を置き、1月から12月の代表値を順に点で示した図です。気温と降水量など、別の二要素を組み合わせる場合もあります。時間を横軸にした普通の折れ線グラフとは違い、二つの気候要素が一緒にどう変化するかを見ます。年間の点の移動から、夏に高温多湿となる地域、気温の年変化が大きい地域などを比較できます。ある一日の天気を予報する図ではなく、季節を通じた気候の特徴を理解する図です。
選択肢2
(2)不適当です。記述されているのは作用温度で、自然室温ではありません。作用温度では、皮膚と空気の熱交換を空気温度、周囲の壁や窓との放射の熱交換を平均放射温度で表し、それぞれの影響に重みを付けて合わせます。風が弱く両者の影響が近いときは、単純平均に近い値で考えることもできます。自然室温は冷暖房していない部屋の温度です。窓ぎわが寒いという体感を表す指標と、空調を止めた状態の室温という運転条件を区別します。
選択肢3
(3)適当です。輝度は、面をある向きから見たときに目へ向かう光の強さに関係します。面を斜めから見ると、実面積より小さい見かけの面積になるので、定義では見る方向への投影面積を用います。同じ照度で照らされた紙でも、白い紙は多くの光を反射して明るく、黒い紙は暗く見えます。この違いも輝度で扱えます。自ら発光する面だけでなく、反射面や透過面にも定義できる量です。面に届く光の量である照度と、そこから目へ来る光に関わる輝度を分けます。
選択肢4
(4)適当です。耳は、物理的な音圧が同じでも全ての周波数を同じ大きさには感じません。A特性は、この感度の違いを周波数ごとに補正する特性で、40phonの等ラウドネス曲線に対応する考え方を基にしています。低い周波数などを小さく重み付けし、補正した音圧レベルを騒音レベルとして扱います。phonは、異なる周波数の音を同じ大きさに感じる関係を表す尺度です。A特性での値が同じでも、音の種類や時間変化による不快さまで完全に同じになるわけではありません。
周辺知識
環境の指標は、実際に測る量と、複数の測定量をまとめた評価量を分けると理解しやすくなります。空気温度は温度計で測りますが、作用温度は空気と周囲の面との熱交換をまとめた値です。音圧レベルは音の圧力変動の大きさを扱い、A特性を使う騒音レベルは周波数による耳の感じ方を考慮します。いずれも、元の物理量と目的に合わせた補正を区別します。
作用温度は、概念的には次の式で表せます。
は空気温度、 は平均放射温度、 と は対流と放射の熱交換の影響を表す係数です。両者が等しければ となりますが、常に単純平均とするわけではありません。
自然室温を予測する際には、日射を受ける窓、断熱、建物の蓄熱、換気、内部発熱などを考えます。例えば日中に日射で暖まった厚い床は、日が沈んでも熱を放出し、冷暖房をしていない室温の変化を遅らせます。同じ「温度」という単語でも、空気の状態、周囲から受ける熱、空調を行わない結果の温度のどれを意味するかを、具体的な場面で説明できるようにします。