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学科Ⅴ(施工)

一級建築士 令和6年度 学科Ⅴ(施工) 問14

問題・正答・学習用解説

問題

鉄骨工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    スタッド溶接において、施工に先立ち、適切な溶接条件を確認するため、スタッドの径の異なるごと、午前と午後それぞれ作業開始前に2本の試験スタッド溶接を行い、曲げ角度15度の打撃曲げ試験を行った。
  2. (2)
    スパン数の多い建築物は、柱梁接合部の溶接収縮により水平方向に柱の倒れ変形が生じるので、建築物の中央部等に調整スパンを設け、溶接完了後に調整スパンの梁を高力ボルトで取り付けた。
  3. (3)
    組立溶接については、溶接部に割れが生じないように、必要で十分な長さと4mm以上の脚長をもつビードを適切な間隔で配置した。
  4. (4)
    保有水平耐力計算を行わない鉄骨造において、柱脚を基礎に緊結するに当たり、露出形式柱脚としたので、鉄骨柱のベースプレートの厚さは、アンカーボルトの径の1.3倍以上とした。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

選択肢1が不適当です。作業開始前に行う試験スタッド溶接の打撃曲げ試験では、曲げ角度を30度として溶接条件を確認します。本肢の15度は、施工後の検査で用いる角度と混同しやすい値です。径ごと、午前・午後の作業開始前に2本試験するという条件ではなく、曲げ角度の部分が誤りです。
スタッドは鋼材の表面へ立てる棒状の接合材で、頭付きスタッドは鉄骨とコンクリートの間でずれる力を伝える用途などに使います。スタッド溶接では、その根元を母材へ溶接して固定します。電流、時間、母材の状態などが不適切だと、十分な接合が得られません。
そこで本施工の前に試験溶接を行い、打撃で所定角度まで曲げても溶接部に不具合がないかを確認します。これは、その日の条件で適切に溶接できるかを試す作業です。完成後の製品検査とは目的が違うため、同じ曲げ試験でも条件を混ぜません。「試験施工か、施工後の検査か」を最初に読み取ると、30度と15度を区別できます。試験で条件を確認した後も、本施工中の条件が変われば適切な確認が必要であり、一度試したら全て自動的に良好になるという意味ではありません。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:不適当です。施工前に行う試験スタッドの打撃曲げ角度は30度です。15度という値は施工後の曲げ検査との取り違えです。スタッド径が変わると必要な溶接条件も変わり、午前と午後でも装置や施工条件の状態を確かめるため、所定のタイミングで試験します。2本を試すという数と、曲げる角度という条件は別々に確認します。試験を実施したという記録だけでなく、目的に合う試験条件を満たしたかが重要です。先に本施工の溶接条件を確かめる工程として理解します。

選択肢2

選択肢2:適当です。溶接では加熱された部分が冷えると収縮します。柱と梁を多数の区画で連続して溶接すると、収縮が重なり、柱を横へ引いて倒れ変形を起こす場合があります。中央部などに調整スパンを設け、周囲の溶接後にその梁を高力ボルトで取り付けると、収縮による寸法変化を調整しやすくなります。スパンは柱間などの一区画の距離です。完成形の寸法だけを図面で合わせるのでなく、熱を使う加工で寸法が変わる過程を見込んだ組立て順序です。

選択肢3

選択肢3:適当です。組立溶接は、本溶接まで部材の位置を保つためなどに行う溶接です。ビードは溶接金属が連続して盛られた部分、脚長は隅肉溶接の断面を表す寸法です。必要な長さと4mm以上の脚長を確保し、適切な間隔に配置する本肢は適当です。短く細い溶接を少し付けただけでは、急冷や部材の拘束によって割れやすくなる場合があります。仮に位置を保つための工程でも、本溶接へ悪影響を残さない品質が必要です。小さい溶接だから管理不要ということにはなりません。

選択肢4

選択肢4:適当です。露出柱脚では、柱の下端に取り付けたベースプレートとアンカーボルトで、鉄骨柱の力を基礎へ伝えます。本問の保有水平耐力計算を行わない条件では、ベースプレート厚さをアンカーボルト径の1.3倍以上とする扱いです。例えば径20mmなら26mm以上がこの条件から必要になります。板が薄過ぎると、柱とボルトの間で大きく曲がり、想定した力の伝達になりません。ただし、この一つの寸法だけで柱脚全体の設計が完結するわけではなく、各部の必要条件も確認します。

周辺知識

鉄骨工事は、完成した部材の強さと、加工・組立ての途中の状態を一緒に考えます。溶接によって部材を一体化できますが、同時に熱による膨張、収縮、変形も生じます。出来上がりの位置を合わせるためには、溶接順序や調整する場所まで計画する必要があります。
試験施工と製品検査は、目的が異なります。試験施工は、この装置、材料、作業条件で適切な接合ができるかを、本施工前に確かめるものです。製品検査は、実際につくった接合部が要求を満たすかを調べるものです。スタッドの30度と15度は、この段階の違いと結び付けて覚えます。
力の伝達にも連続性が必要です。スタッドは鉄骨とコンクリートの間、梁の接合は梁と柱の間、柱脚は柱と基礎の間で力を渡します。部材本体が強くても、どこかの接合が弱ければそこが限界になります。仮の組立溶接にも品質が必要なのは、施工中の安定と本溶接の品質を守るためです。加工時の熱、接合の強さ、施工段階という三つの視点を持つと、各記述の理由がつながります。